[携帯モード] [URL送信]

桜舞う

慌てて頷くと義孝はどこかホッとした顔で頷いてみせた

「よかった。荷物は寝室に運びますね?夕食は私が準備するので詠さんは……」

ボストンバッグを詠の手から奪うと義孝は困ったように詠を見る

「あ……、僕は、レポートがあるので夜まではそれをしてます」

ボストンバッグを指差しながら言うと義孝は満足そうに頷いて寝室や浴室、トイレを案内してくれた

忙しい男1人住まいなのにモデルルームのように隅々まで綺麗なので影がちらつく

リビングでレポートを広げてもキッチンに立つ義孝が気になってしょうがなかった

鼻歌を歌いながらトントンと包丁の小気味好い音が聞こえる

まるで新婚夫婦みたいだ

逞しい肩甲骨が動き精悍な頬に黒髪が流れた時、詠は自分が考えたことに顔がカーッと赤くなるのを感じた

慌てて視線をレポートに逸らして熱を覚ます

忙しく手を動かしていると不意に強い視線を感じた

顔を上げると義孝はやっぱり鼻歌を歌いながら野菜の水きりをしている

首を傾げながら詠が再びレポートに視線を落とすとふわりと味噌汁の匂いが漂ってきた



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!