桜舞う
・
「誰も本気にしていませんよ。何をするにしても早いにこしたことはないでしょう?柳さんが住み込みで詠さんの世話人を買って出てくれましたの。もちろんお父様の秘書のお仕事もあるのだからあまり手を煩わせないようになさいな｣
母親の言葉に住み込みとゆう言葉がﾘﾋﾟｰﾄする
違う。義孝さんは僕の為ではなくあの人の為に
あの人に会いたいから僕をダシに使ってーー
嫌な考えが浮かぶのを振り払うようにかぶりを振る
「い……今は大学の勉強だけで手がいっぱいで｣
「ついでに勉強も見てもらえ｣
何でもない風に言う父親が憎たらしい
「詠さん、よろしくお願いします｣
不意に父親の後ろに控えていただけなのに会話に入ってきた義孝ににこやかな微笑みを浮かべながらそんなことを言われては詠とて断れない
しかもその微笑みはどこか強張ったように不自然で不穏な空気すら漂う
不意に義孝と高岡の姿が目に浮かんで詠はぐっと唇を噛んだ
「……それでは義孝さんの休みまでなくなってしまいます。なんだかそれでは申し訳が……」
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