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桜舞う



するりと首筋に十月の顔が落ちてチクリと痛みが走った

「………いたっ!十月、なにっ?」

慌てて十月の肩を押せば意外そうな顔をして十月は顔を離した

「詠、お前今俺が何したのか解らないのか?」

詠の両手首を掴んだまま十月は驚いたようにそう言う

「何って?なんか、痛かった。噛んだ?」

詠が顔を歪めると十月はどこか嬉しそうに落ち着きをなくした

「そっか、まだか………じゃあゆっくりだな……」

詠の手首を離してぶつぶつと言う十月に詠は唇を尖らせて首筋を指先で撫でた

まだ痛いような気がする

納得がいかないまでも曖昧に笑う十月に詠は疑問の矛をおさめた

今、詠が縋れるのは十月だけ

そんな意識が働いた

頭の中で色々な事がぐるぐると回る

十月の背中を眺めながら詠は眠れない夜を過ごした



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