桜舞う ・ 「なにがおこったの?十月、どうして?義孝さんに何があったの?僕、騙された?今、考えられることが耐えられない」 これ以上考えると壊れてしまう 静かな東屋で十月が息を飲んだ気配がした ぐっと表情を隠すように十月が俯く 不意に首筋に生温い感触を感じて、身を固くすると十月がさらりと詠の髪を撫でた まるで愛しむように 「俺がいるから大丈夫。詠は何も考えなくていい」 強くなった腕の抱擁に詠は不安を覚えて顔をあげた 十月は寂しそうに笑う 「今日は俺のところに泊まっていくといい。あいつ、絶対何か企んでる。それが解るまで俺んとこにいろ。な?」 額に手を当てて熱を孕んだような瞳で訴えかけてくる十月に詠は戸惑いを覚えたが結局は頷いた 十月の家は屋敷内にあるし長年庭師をしていて詠の親とも仲がいい 問題はないだろう 手を引かれながら詠は全てから目を逸らすように目を閉じた 絶望ってこんな感じ? 義孝はなにかに詠を利用しようとしたのだろう それが何故なのかどうゆう目的なのかは詠には解らない ああ、それでも それでも義孝さんに逢いたい [*前へ][次へ#] [戻る] |