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桜舞う



昔から思い切りのいい人や性格のキツい人が羨ましかった

詠はどちらかといえば大人しく引っ込み思案でうじうじと悩む傾向にある

詠がずっとうじうじと悩む原因となった十月が別れ際に叫んだ機会は意外にも早くにやってきた

気も漫ろなシャンパンやお世辞が飛び交う夕食会を終えて部屋に戻ろうとした詠にそっと母親が義孝を部屋に案内してあげてと頼んできたからだ

十月の言葉が頭をよぎり、使用人にさせればとすげなく断ると母親はどこか安心しているようだった

「真に受けたわけじゃないんだけどね、お前と柳さんがって噂を聞いてね。お父さんが見張ろうじゃないかって………断ってくれてよかったわ」

「そ………そう」

本当に安心したらしい母親に内心の動揺を悟られないよう部屋に戻ると詠は落ち着かない気分にさせられた

噂って一体誰が?それに母親のあの顔。普通じゃない。義孝さんと僕じゃ普通の関係じゃないって解っているけど、あんな侮蔑を浮かべたような顔をされるなんて

ただ、好きなだけなのに

そう。好きなだけ

でも義孝さんのことを信じられる?



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