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小話
現パロルクガイ その1
ガイはその少年を知っていた―――

入学式、ひときわ目立つ燃え立つような赤い髪がガイの目にやきついた。
ガイの金色の髪もこの国ではよく目立つ。
だが、その目立つ髪と共に同じ顔が2つ並べば殊更周囲の衆目を集める事となる。
ガイは一年の時、双子のどちらとも同じクラスにはならなかったが、名前と顔だけは入学して早々に覚えた。
何かと話題になる二人であったからだ。
目立つ赤髪、翠の瞳、双子。なのに性格は真反対。そして兄弟仲が悪い。
間違えて名を呼んだら怒鳴り返された、というクラスメートの言葉に「面倒くさい奴ら」という印象をガイは抱いた。
間違えられたくないなら髪を切ればいい。単純な事だ。
己の手段を講じもせずに、相手を糾弾する姿勢はガイの好むところではない。
ファブレの双子に対して、ガイの印象はけして良いものではなかった。

二年へと進級した時、ガイはそのファブレの双子の弟。ルークと同じクラスになった。
おまけに席はルークの後ろだ。
参ったな、と頬杖ついて吐息をつこうとしたとき、くるりと赤髪が翻る。
「ガイ、だよな。俺、ルーク、よろしくな」
人懐っこい笑顔を向けられ、ガイはきょとんと目を瞬かせる。
俺の名前知ってんだ、という驚きと、伝聞で受けたルークとの印象があまりに違っていたからだ。
「よろしく。双子なんだろ」
「あ、俺のこと知ってんだ」
それはこっちのセリフだ、と胸の中で返すと、曖昧に笑ってみせる。
「色々耳に入ってくるから」
「なになに、どんな噂?俺とアッシュが廊下で殴り合ったとか?」
「なんだそれ、初耳だ。んなに仲悪いのか?」
「前世で敵同士だったんじゃないかってくらいに仲悪いかな。ガイは?兄弟いるの?」
「姉が一人。年が離れているから喧嘩した事はないな」
「…へー、名前なんてーの?」
ルークの言葉にガイはわずかに違和感を覚える。普通、年を先に尋ねるのではないだろうか。もしかして俺の姉を知っているのだろうか。
「マリィベルって言うんだ」
「そっか。いい名前だな」
にかっと白い歯をみせて嬉しそうに笑うルークに、ガイは訝しげに眉を寄せる。
「俺の姉のことがそんなに気になるのかい?」
「ガイの姉さんならめっちゃ美人だろうから、そりゃ気になるよ」
さらりと邪気なくそう返されると、先程まで感じていた違和がわずかに薄くなる。
「で、そのお姉さんは一緒に暮らしてんの?」
「いや今は海外だ。俺だけがこっちに残ってる」
「なんだ、残念。ガイの家にあそびいったら会えるかと思ったのに」
あからさまに落胆するルークに、思わずガイも口元が綻ぶ。
「俺の姉さん、性格キッツイぞ」
「え、マジで?」
その時、教室の扉がひらいて、担任が入ってくる。
ちぇ、という顔をしてルークは前を向く。
その背を見詰めながら、人の噂はあてにならないもんだな、とガイは小さく笑う。
ルークは教壇にたつ担任に視線を送りながら、意識は別のところにとんでいた。

ルークはガイを知っていた―――
はるか昔から。この大地がオールドラントと呼ばれていた頃からずっと―――

その2

※この話を鵯さんが漫画にしてくれています
ガイとルークが現代に生まれ変わった話※pixiv



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