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小話
断片 ルクガイ ルークサイド
短髪ルーク

律動にあわせてギシギシとベッドの激しく軋む音。
そして背をしならせながら、口から漏れる熱い息の合間の小さな喘ぎ声。
入り口は拒絶するようにきつく絞めつけるのに、中は迎えるように暖かく絡みついてくる。
それらすべてが一つになって快楽を駆け上がらせる。
ギリギリと歯を食いしばって耐えようと試みるが、限界が近い。
先端から零れた液で濡れそぼっているガイの性器を乱雑に握りこんで扱きあげる。
「や、めっ!…ルーク!」
切羽詰った声で名を呼ばれた事で、ガイの中に埋め込んだモノの体積が増す。
隙間なく咥え込んでいるガイもそれがわかったらしく、は、は、と息を吐く合間に悲痛さを滲ませながら
「ぬ…け。ああっ、ルー、ク、中はやめっ…っ!!」
懇願してきたが、それを叶える間もなくガイの奥深い所で熱を吐き出す。
一瞬で駆け抜けた白い閃光に、痙攣しながら、数回にわたって精液を中に出すと、一気に倦怠感が身体を襲う。
濡れた自分の手でガイも達したのがわかって、安堵すると、そのままガイの上にどっさりと倒れこむ。
汗で濡れた胸がぴったりと隙間なくはりつく。
どくどくとガイの心臓が早鐘を打っていて、でも俺も同じようにどくどくと心臓が胸を突き破る勢いで。
本当に一つになったみたいだ……
そんな風にうっとりとする俺の耳に息が上がりながらも不機嫌な様子のガイの声が届く。
「おい、ルーク。中は、やめろって、いったよな」
んな事言ったってムリだろう。だってガイの中は気持ちいい。
「ったく。後始末する身になれ。それに重い。ほら、どけ」
息が整ってきたのが、矢継ぎ早にガイの口からあまり聞きたくない種類の言葉が飛び出してくる。
「じゃ、俺、手伝う」
しぶしぶ張り付いていた身体をわずかに起こして、ガイの顔をみてそう言ったけど、眉根を寄せて
「お前の手伝いはいらない」
とピシャリと拒絶されてしまった。
その冷たい態度に、みるみる俺の性器は硬度を失い少しガイが身体をずらしたせいで、中から引きぬかれた。
なんとも男の性は正直なんだろう。
そして僅かに遅れて、ごぼっと音を立てて溢れでてきた精液と、紅く色づいているガイの内部とのコントラストに目を奪われ、また熱が下半身に集まってくる。
なんとも俺の身体は正直なんだろう。
それが原因だ、とガイが冷たく告げると、確かに手伝うといってそのままやってしまった事は両手両足の指の数でも足りないくらいだ。
う、と言葉に詰まる。自業自得という言葉が頭を駆け巡る。
がっくりうなだれる俺に、ガイは何か言いたそうに目を細めながら、それでも表情は依然厳しいままだ。
「先にシャワー使う」
そう告げると、俺の方を振り返りもしないで浴室の扉の先に消えた。


******


幼少ルーク


「だから、ガイがこないと着替えない。早く呼べ」
扉の向こうのメイドにそう命令する。耳をすますと、廊下をばたばた走ってくる音が聞こえる。
「はやく、ルーク様が」メイドの切羽詰った声に応える声はないが、ガイが来ているのがわかる。
扉を開けてひょっこりのぞいた金の髪に、ほっと安堵の息を吐く。
後ろ手で扉を閉めると、騒動は聞いているだろうに、いつものように陽気にガイが声をかけてくる。
「おはよう、ねぼすけルーク」
「ガイ……その…」
「ん?どうした?またおねしょか」
からかう声に、こくんと首を縦に振ると、まさかというように青の目を見開く。
「でも、なんか、ちがって、て」
その言葉にガイが俺の握り締めていたシーツをそっと剥がして、濡れたパジャマに手を差し入れる。
「ガ、ガイッ」
この年で、と呆れられるのか、笑われるのか、と覚悟していたのだが、まさか濡れて汚れた下着に触れられるとは予想だにしなかったので
びっくりして声が上擦る。
クンと鼻で濡れた自分の手を嗅ぐガイの顔などまともに見られるはずもない。
そもそも、本当は明け方にみた不埒な夢のせいで、ガイの顔は今日一番みたくなかったのだ。
でも、でも、この年でこんな事になってしまって、頼る相手はガイしかいなかったのだ。
シーツをぎゅっと握りしめる俺の頭に、グローブをした方の手がおかれる。
「大丈夫だよ、ルーク。悪かったな心配させちまって」
なんでガイが謝るのかわからない。
顔をあげる事も出来ない俺に、ガイは言葉を続ける。
おとなになったんだ、とか、誰にでもある事、だとか、この手の教育は後回しだったからな、とか。
その言葉に、呆れも嘲笑の欠片もない事に胸の奥深くで安堵する。
「着替えさせてやるよ、ほら、来いよ。先に身体を洗ったほうがいいな。気持ち悪いだろう」
シーツを握り締めていた手に優しく手が重なってくる。
「ほら、おいで」
その言葉は夢のなかでも聞いた。
ガイが何故か裸でベットにいて、おいで、って誘ってきて……
ぶるぶるっとそれを振り払うように頭を左右に振る。
「だ、大丈夫だって。お、大人になったんだろ。身体くらい一人で洗える!!」
顔をみないように、視線は下ろしたままでベッドから駆け下り、浴室に続く扉に向かって走る。
「じゃ、着替えくらい手伝わせろよ」
そんなガイの声を背にうけて、「…わーかったって」と普段とかわらない調子で返せたことに、扉を閉めてからほっと息を吐いた。



********

幼少ルーク 2


ラムダスが連れてきた医者は人体模型を数種類と、分厚い本をもって、くどくどと説明をする。
普段なら右から左にぬけるような説明も、今回ばかりは神妙に耳を傾ける。
夢精とやらを俺はしてしまった事とか、どうやってセックスをするのかだとか、もっといえば
「妊娠しない」ためのセックスを教えてくれた。
あと一人でやる方法とかも。
それからラムダスの公爵家子息心得が始まった。
回りくどい言い回しに辟易しながらも、要はナタリアと俺が婚約しているという事で、おおっぴらな遊びは控えるように。とか。
その妊娠しない最たる方法は、病気をもらいがちなので、オススメしないとか。
中にはけして出すな、とか。妊娠を縦に金銭を要求されても相手にするな、ラムダスにまず相談しろとか。
メイドに手を出すことは、ナタリアのプライドをいたく傷つけることとなるので絶対やめるようにとか。
遊び相手ならばラムダスが用意するとか。
長々の勉強会にぐったりと疲れていたので、ラムダスの心得途中でふわあっとあくびがこみ上げてくる。
「もー、いいだろ。わかったって。昼からはガイと庭で剣稽古する約束してんだよ」
「坊っちゃま、よい機会です。剣の稽古ならば白光騎士の者が坊っちゃまのお相手に相応しいと存じます。わざわざ下働きの少年を相手にする事など」
「ガイの件は母上から了承をもらってるだろ、口出しすんなって!」
母上、という切り札をかざせばラムダスの口は閉じられる。
「じゃ、終わりっと」
椅子から立ち上がって駆け出す俺に、ラムダスが聞こえがしなため息をついたが、聞こえない振りをした。
木刀もって中庭に出ると、ガイがペールの傍らで、背を丸くしてしゃがんでいた。
「おーい、やるぞー」
その背に思い切り飛びかかると「うわっ」と声をあげ、それでも手を花壇について俺を受け止める。
「ラムダスさんの話、終わったのか?」
初夏の中庭の陽光で、汗でシャツに模様をつくっている。
疑わしげな視線と共に尋ねられれば、うん、と答えて首根っこに腕を回して
「だーかーらー、早くやろーぜー」
と前後に揺らす。
「お、おい、俺を転ばす気か!」
慌てふためくガイを俺が笑う。隣のペールも微笑んでみせる。
そんな輝く時は陽光が落ちれば終わる。
ぽつん、と一人広い部屋でベッドに潜る。
今日は朝から色んな事があって、精神的疲労とでもいうのか、すごく眠い。
シーツは陽光の名残がする。すうっと鼻で嗅ぐと、昼間の中庭のことが思い出される。
ガイの背にぴったり張り付いて、外にいたせいかシャツもベストもあったかくなってて、首に回した腕がわずかに濡れたのはガイの汗のせいで。
それを不快とも思わなかった。汗かいて金の髪が僅かに色濃くなってて。額からつーっと頬まで伝う雫を何故か凝視したり。
今日はおかしい。あんな夢みたからだ。
あんな風にガイが裸で、このベッドの上で、俺を誘って。でも声はとても静かで穏やかで。なのにとても蠱惑的で。
脳裏に夢の一シーンが浮かんだだけで、身体に変化があらわれる。
ふと医者の言葉が蘇る。
「海綿体への働きかけは、視覚による刺激が一番効果が高いとされ、経験を重ねるにあたりー」
んだよ、海綿体だのなんだの。んなの、わかるかってーの。
わかる事は。
そっと握りこんで、言われた通りに刺激を与える。
高まっていく呼気と共に、つむった瞼の裏に描く人物の名が口から漏れる。
「…ガイ、ガ…イ」
名を呼べば、刺激は数倍に跳ね上がる。忙しくなっていく手の動きと共に、名を呼ぶ声は切羽詰まっていく。
初めての刺激に呆気無く果てた俺は、はあはあと上がる息を整えながら汚れた手をみる。
ガイ、どんな顔して俺の嗅いだんだろ……
精通も初めても自慰も脳裏に浮かんだのはガイだった。



**********

長髪ルーク 屋敷時代


ベッドに押し倒されたガイは青い目を数度瞬かせた。
プロレスか?とこの場で問わなかったのは、きっと俺がこれまでになく真剣な顔しているからだろう。
でも何をされるのかはわかってない。
手順を思い出せ、冷静になれ、何度も何度もシミレーションしたはずだ。
まずはブーツ。これをいつまでも履かせていると、肝心の下半身がかなりみっともないことになる。
脱がして後方へ放り投げる。
「ルーク、どうしたんだ?」
ようやく尋ねる気になったらしい。
だから俺は答える。声が震えないように。いつものように。いつもの「ルーク」のように。
「退屈なんだよ、ガイ」
それは知っているとばかりに、こっちの真意をさぐるように、じっと青い目を俺に向けてくる。
「だからさ」
膝でガイの太ももあたりを押さえるように、腕はシーツに繋ぎ止めるように。
「やらねえ?」
途端に、青い目が細められて険しくなる。
「からかうつもりなら、」
「別にからかってねえよ。メイドには手を出すな、そのくせ外には出るな、こんなんじゃ俺どうすんの。自己処理だけうまくなるだけだろ」
知るか、と言いたげなガイに、いつものルークで押し通す。
退屈病にかかっているルーク。面白いことなら何でもやってしまうルーク。倫理もなにも蹴飛ばしてしまうルーク。我儘で自分勝手なルーク。
そうしないと、こんなにもガイを欲している事など悟られてしまう。拒絶されたら絶望に染まって立ち直れなくなる程に、ガイを欲している事を知られてしまう。
「ガイならさ、気心知れてるし、それにお前もどーせ男とやらなきゃずっと童貞じゃん。そしてなにより」
声が震えないように、さとられないように、笑って見せる。いつものように口の端をあげて。
「お前なら妊娠の心配もねえし」
ガイの表情が一瞬で強ばるのがわかった。妊娠なんて生々しい言葉がショックだったんだろうか、それとも俺が本気でセックスしようとしている事への恐怖なんだろうか。
ごめん、ガイ。
でも、欲しいんだよ。あの時からずっとずっとずっとガイを抱く夢しか見たことがない。
一度でいいから。
抵抗すらしないガイのシャツのボタンをはずしていく。指先がみっともないくらいに震えている事に気づかれてないだろうか。
でも口は精一杯の虚勢を張り続ける。
「男の乳首も性感帯の一つらしいぜ。試してみるか?」
外気にふれて、きゅっと立ち上がった綺麗な淡い色をした乳首を摘まみ上げる。
「っ!!」
びくっと身体を僅かに浮き上がらせる。
「やっぱ気持ちイイの?」
揶揄するように言うと、ガイはふいっと顔をそむけてきつく唇を結ぶ。
「んだよ、言ってくれなきゃわかんねーだろ。気持イイのか、悪いのか……あ、なんかだんだん凝ってきたぞ」
指の腹で擦るように、引っ張って、押し潰して、刺激を与え続けたせいだ。
さっきまでの可憐な色とは違って、赤くなっている。色すらも変わるんだ。そして白い肌の上にのったその赤はあまりにも刺激が強すぎた。
誘われるように、口を寄せて、衝動のままにきつく吸い上げる。
途端、ガイが腰を浮かせて「や、や、めっ、ルー、ク、やめっ、アアッ」切羽詰った声の最後の、初めて聞く喘ぐ声にプツリと何かがぶちきれた。

手順も考えていた。何度も何度もシミュレートした。
ゆっくり時間をかけて馴染ませてからじゃないとダメだって事なんて知っていた。
でも結局何一つ計画通りには出来なかった。いや、「ルーク」らしく振舞う事だけは最後まで貫いた。
下半身の惨状で、顔色は蒼白で、ぐったりと身体を投げ出し、弱々しい息しか吐けずにいるガイに
「すげえ気持ちよかった。またやろうぜ、な、ガイ」
いたわる言葉ひとつかけずに、自分の欲を押し通した。


***********


赤毛二人帰還 ルーク


律動にあわせてギシギシとベッドの激しく軋む音。
そして背をしならせながら、その音をかき消すくらいの喘ぐ声。
入り口はきゅっと絞めつけて、抜くときは搾り出すように暖かく絡みついてくる。
「んっ、あっ、ルーク、いっ、…アアッ!…ンッ」
シーツを掻きむしっていた手が、俺の首に回される。その意図するところをわかっているから、上体を折ってガイの口に顔を寄せる。
せわしなく喘いで乾いた口を、俺の舌が満遍なく濡らしていく。たどたどしくガイの舌が絡んできて二人の唾液も絡んで一つになっていく。
深く口付けながら、浅い律動を繰り返していたが、もうとっくに限界を迎えている。
もっとガイとくちづけたいと思いながらも、名残惜しげにゆっくりと口を話すと、僅かに眉尻をさげて
「ごめん、もう、俺、イキそう」
情けないが素直に今の現状を伝えると、ガイは微笑んでくれた。
「おれ、も」
くちづけのせいで、濡れた赤い口が、たどたどしく言葉を紡ぐ。首に回していたガイの手がまたぱたりとシーツの上に落ちる。
ガイの掌に自分のを重ねて、指をぎゅっと絡め合わせる。ガイも握り返してくる。
それを合図に、強く激しく突き上げる。
思うままに揺さぶられながらも、ガイはつないだ手は離さない。
深くつながった部分からは淫靡な水音がこぼれ、ベッドが壊れるんじゃないかというくらいに軋んでいる。
そして
「はっああっ、アアッ、ルー…ンンッ、ルー、クっ!」
大好きな大好きなガイが俺の名を呼びながら、蒼い瞳を熱っぽく潤ませながら、俺を見上げてくれる。
そこには余所余所しさも、苛立ちも何もなくて安堵する。そして俺を受け入れてくれる事が何よりも嬉しい。
「なか…に、ほしっ……」
意識が飛んでしまいそうな喜びと刺激に、呆気無く俺はガイの最奥に熱を吐き出した。
ずるっとそのままガイの上にのしかかる格好になる。手はつないだまま。
汗と、ガイの精液で濡れた胸や腹がぴったりとはりつく。
気持ちいい。
どくどくと、胸と突き破るような勢いの互いの心臓。
はあはあと熱くせわしない息。
今、俺達は隙間なく一つになっているんだ。身体も心も。
そう考えると、いまイッたばかりなのに、もう硬くなり始めてきた。
ガイの頬に、俺の頬をすりあわせながら
「なあ、ガイー。もういっかい、やりたい」
つないだ手が、僅かに身じろいだ気配が伝わる。
「ガイー、俺、ガイが足りねえー。もっとガイが欲しいんだよー」
今度は目をみておねだりをする。
これに弱いことを本能的に知っていたが、ベッドの上でも有効だったのを知ったのはつい最近だ。
なんて惜しいことをしてたんだ、今までの俺。
臆病になっていたから、すんげえ遠回りしてしまった。
「も、もう、三回やって」
「ガイも俺も若いんだし、大丈夫だって。早いなら回数で攻めないと飽きられるって言ってたし」
「その戯言吹き込んだのは誰だ、いや、言うな、相手はわかってる」
「なー、ガイー。ずっとガイと一つになってたいんだよー」
触れるだけのくちづけを落として、もう一度目をみておねだりをする。
つないだ手をぎゅっときつく握り返してきて
「手伝えよ」
とぼそっと口にする。
その意図するところがわかって、握り返しながらガイの顔そこらに感謝のキスを落とす。

もう手は透けない。だからずっと握ってあげる。
もうどこにもいかない。だからずっとそばにいる。
だから俺たち、ずっとずっと一つになっていよう。




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あきゅろす。
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