10万企画小説 無邪気ルーク×隠れビッチ淫乱ガイ 前編 ※ガイが淫乱設定です(あまり生かされていませんが) ※薄いですが、モブガイ描写を含みます ※エロがガイルクっぽいですが、ルクガイです 足は地面に縫い付けられたように動かなかった。 翠の双眸は、路地の狭い隙間に釘付けになっている。 はじめは酔っぱらいを介抱しているのだとルークは思った。 みっともねえな、と嫌悪をあらわにして顔をそむけようとした時、視界の端で何かをとらえた。 再びそちらに目をやる。 路地の壁に一人が手をおき、頭を垂れている。もう一人が背後からびたりと張り付いて、前後に動いている。 違和感を覚えたのは、下半身だ。二人とも何も履いてはいなかった。 月光だけの乏しい明かりのなか、目を凝らせば下半身だけが妙に白く浮き上がっている。 それがぴたりと密着したり、わずかに離れたり、を繰り返している。 何してんだ?と首を傾げ、より近くで見ようと一歩足を踏み出す。 だが、その歩みでルークは凍りついたように動けなくなる。 片方の臀部から見え隠れする赤黒いモノを目にして、ようやく二人が何をしているのか理解する。 セックスしてんだ、こいつら!こんな場所で!! かああっと一気に顔が熱くなる。立ち去らないと、と理性が叫んだが、少年らしく好奇心の方が遥かに勝ってしまう。 それでも強い刺激を直視は出来ず、視線を落とし、ちらりとそちらを見やる。 路地の二人は立ったまま後背位で繋がっていた。相手の腰をがっつり掴んで激しく腰を前後に動かすそれが生々しく、すぐさま視線を逸らした。 その時にルークの頭の隅で引っかかりを覚える。 あれ、いまの…、え。 慌てて視線を戻す。丁度その時に絶頂を迎えたのだろう。男が相手の背に覆いかぶさるように動きをとめ、むき出しの尻を痙攣させている。 ルークの口唇がわななく。心臓が痛い程に早鐘を打つ。握りこんだ手はじっとり汗をかいている。足がガクガクと震える。 まさか。ありえない。まさか、だって。 動きを止めていた男が、緩慢な動作で相手から離れる。 何やらゴソゴソと動き、それから足元で纏まっていたズボンを引き上げる。 ポッケから、おそらくは紙幣、を何枚か取り出して、乱雑に積まれている木箱の上に置く。 そしてその場を離れる気配に、やべっ、とルークは慌てて壁に身を寄せる。 だが男は路地の奥へと抜けたようで、すれ違う事はなかった。 男が去った後、衣擦れの音がルークの耳に届く。 あいつも、路地の奥に抜けてくれれば…、というルークは祈る。 だが、路地の入り口からひょいと出てきた彼は、月光をあびて金糸を光らせ、そして至極呑気に 「あれ、ルーク。どうした、こんな場所で。もしかして散歩か」 とのたまった。 「…あ…っ」 心臓を掴まれたように、びくっと跳ね上がったルークに、ガイはにこにこと目を細めて笑う。 「どうした、そんな顔して。…あ、もしかして見ちまったのか。お子様にはちょっと刺激が強すぎたな」 なんら慌てる事もなく、いつものガイらしい物言いに、ルークは戸惑い混乱する。 「今から宿に戻るなら、一緒に行こうか」 唾を飲み込み、からからに乾いた喉を湿らせる。 「……あ、あいつ、誰だよ」 「あいつって?」 きょとんとした顔で見返すガイに、ルークは何故か泣きたくなる。 「さっき、……そ、そこで、その、セッ……」 恥ずかしくて言い澱むルークをみて、ようやく合点がいったらしい。 「ああ、さっきの男か。さあ、誰なんだろうな」 「はあ?」 ルークは驚愕に目を見開く。道を聞かれたわけじゃないだろう、さっきセックスしてたじゃないか、と言いたいが、こんな往来で話す事でもない。 「……帰ってから話そう」 声が硬いのを自覚しながら、ルークはくるりと踵を返し歩き出す。 身長の差はそのまま手足の長さへと繋がる。ルークが先に歩き出しても、ガイならば足早にならずとも、歩みを進めればすぐに追いつき隣を歩く。 だが、ガイはそうはしなかった。適当な距離を保ったまま後ろをついていく。 先を行くルークの背を眺めながら、困ったように、だがどこか楽しげに口の端をあげ、月明かりの下ゆっくりと歩いていく。 宿へ戻る間、ルークの感情は困惑から、言いようのない怒りへと変化していった。 部屋に入り、扉をしめてからルークは先ほどの事を切り出す。 「お前、知らない男とあんな所で、あんな事してたのかよ!」 「そうだな」 いつものようにガイは剣をベッドのそばに立てかけながら、相槌を打つ。 見られた方が全く動揺もせずに、淡々としている。糾弾するルークの方が調子が狂い、帰る道すがら考えていた言葉が抜け落ちる。 「あっ、あ、ああいうのは、恋人とか。……その、えーと、だから好きあった者同士がやることだろ!!」 「うん、全くだ」 いきり立つルークとは逆に、ガイは平静な顔をしたまま袋から着替えを取り出している。 「何、他人事みたいな顔してんだ!お前の事話してんだぞ!!」 「ルークが真っ当な倫理観や貞操観念をもっていて、本当に嬉しいよ」 からかってんのか、とルークの眉が釣り上がる。 「だけど、俺は違う。そういう事だ」 ひやりとするくらいに、拒絶の色を濃くした声に、ルークは一瞬怯み言葉を失う。 だが、すぐに我に返り言い返す。 「違うって何がだよ!」 すると、ずいっとガイは顔を近づける。 「色々」 「だから、色々って何が!」 事情を話すまでは引き下がらない覚悟で、ルークはガイを睨み上げる。 その眼差しを無言で受け止めていたガイが、ふっと息を一つ吐き出すと、諭すように話し出す。 「一人で眠れない夜に、大人が何するかくらいお前も想像出来るだろ」 「でも…、名前も知らない奴と」 「そのほうが後腐れ無いしな」 「あんな場所で」 「宿とる金が勿体無くてな」 「でも男と」 「俺の体質知ってるだろ」 ガイに冷静に返され、ルークはどんどん勢いを失くしていく。 何かもっと言わなければいけない言葉があるはずなのに、散漫な思考はそれを形にできないでいる。 「ま、お前に見られるヘマはもうしないようにするよ。悪かったな、変な所みせちまって」 見る見る間に意気消沈したルークとは反対に、ガイは普段の調子でおどけたように返す。 これで話は終わりとばかりに着替えを手に取って立ち上がる。 「先にシャワー使わせてもらうな」 「え、あ、もう風呂使ったから」 「そっか。じゃあ」 浴室の扉の向こうにガイが消えると、ルークの足は力をなくし、そのままベッドに倒れこむ。 さきほどの光景が焼き付いて離れない。腕で両目を隠して、視界を黒く塗りつぶす。 なんだよ、あれ。なんでガイは。 もう少しガイが慌てふためけば、こうまで落ち着かない気持ちを抱えなかったはずだ。 俺一人が驚いて慌てて、怒って………ああいうのをさらっと流す事が大人なんだろうか。 ガイは淡々として悪びれもしなかった。 「ガイらしく」ないその態度に困惑する。 シャワーの音がルークの耳を打つ。 そういや、あいつ、出かける前に風呂入ったじゃん。なんで、また……あ、そっか。 ガイがシャワーを浴びる理由がわかり、またルークの心は沈んでくる。 こういうの…前にもあったよな。 夜中酒を飲みにいくと一人で出かけたガイが、戻ってきたら早々に浴室に消えた事は幾度となくある。 「そういう事」だったのか。 過去を探れば、ジェイドと共に飲みに行った時、ジェイド一人先に帰ってきた事がある。 不機嫌さを顕にしたジェイドに眉を潜めていると、少しばかり遅れてガイが戻ってきた。 「なんだガイ。一緒に飲んでたんだろ」 不機嫌オーラをまき散らしているジェイドには訊ねられなかった事をガイに言うと、いつものように眉尻をさげて苦く笑っていた。 「トイレから戻ったら旦那がもういなくてな」 「なんだよ、腹でも下してたのか」 二人の会話にジェイドが、冷ややかな嫌味を投げてくる。 「そうですね。トイレで下すような事をしてたんでしょう」 「おっと。旦那も結構言うんだな」 「あなたが言わせているんでしょう」 「そうだな。本当に悪かったよ」 素直にガイが謝ると、何か言いたそうに一度口を開いて、でも結局ジェイドはそれ以上言葉を重ねなかった。 その時も話が終われば、浴室に向かっていた。 あれからジェイドはガイを誘わなくなった。 屋敷に監禁されていたとき、白光騎士と人気のないところで話している場面に出くわした事があった。 「悪いけど、顔なじみとはやらない主義なんだよ」 あれも、ああいう事、だったのか。 今、思い返せば、えらく蓮っ葉な言い方だ。ガイのあれが日常的なものだった事がわかる。 俺がさっき初めて知ったガイの一面。だがそれは昨日、今日始まった事じゃなかった。 だから、俺が糾弾しようが、ガイにとっては今更何を言ってるんだ、になるんだ。 はあっとルークが深い溜息をつく。 明日からどんな態度をとればいいんだろう。 だが、ガイはきっと変わらない。いつもと何一つ変わらない。 ガイが抱える歪みはきっと根深い。それが世間と照らし合わせれば、異質だとガイはわかっているはずだ。 だが、矯正を放棄し、歪みを内包したままガイの一部として根付いている。 腕を押し当てた昏い視界のなか、ルークは瞼を閉じる。 眠たくはないのに、意識が遠くなる。 まだ、だめだ。色々考えない、と。 そう抗っても眠りには勝てずに、ゆっくりと沈んでいく。 眠りに引きずられて落ちていく寸前、男の下でいやらしく笑うガイが浮かんで、そして消えた。 後編 |