創作小説 『スパイシー☆キャンディ2』
1
書き入れ時のランチタイムが去って客足もまばらになったファミレスの、従業員休憩スペース――。
風本 武(かざもと たけし)は先輩の屋久島(やくしま)と一緒に社食を摂っていた。
鶏の唐揚げをパクつきながら屋久島がボヤいている。
「もうすぐ夏だなー。夏の賞与少しは出っかな」
「さぁ〜…どうスかね」
「かざもっちゃんはどーよ? 彼女と夏の予定は??」
「いやー…あちこち連れてってやりたいんスけど、俺車の免許ないんスよね……」
気まずそうに笑っていると、屋久島に指を――じゃなくて、箸の先でビシッ!とさされる。
「今から取っちゃえば!? 夏に向けてよ!」
箸の先を突き付けられてややのけ反りながら武は煮え切らない顔で、
「今からスか…? 間に合わすんなら一発で受からないと無理っスよ。んな自信ねーし……」
「大ー丈夫って!」
「まぁ食えよ、いいから、な?」などと言いつつ屋久島は自分の皿から唐揚げを1つつまんで武の皿に分けてやり、
「彼女ラブな気合いで乗り切れ!」
とガッツポーズし、ウインクまで飛ばしてくる。
武は胸焼けしそうな思いで引きつった笑いを浮かべ、
「んな無茶な…」
「俺ぁ、気になるあの娘をデートに誘うぜ。湘南の風に吹かれてドライブといくか」
「おっ、先輩彼女できたんスか?」
「おぅ。スナック“愛Rin”(アイリン)のユカリちゃんは俺のハニーさ」
「…」
どこまで本気で言っているのか分からない。
武は苦笑いしながらもらった唐揚げを一礼してつまみ、
「けど、そうスよね。やっぱ車はあった方がいいスよね…」
(夏には間に合わないかも知れないけど)などと心の中で弱音を吐きつつも、車を持って彼女のななを遊びに連れてってやるんだと想像するとワクワクしてくる。
武の中で決意が固まり始めていた。
(それに…)
武には、いつか車を持てたら叶えたい夢があった。
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