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創作短編『それぞれのゆく年くる年』
今年も君とA
「なぁ鈴子さ、餅何個食った?」

「え、このお正月で? ん〜…4個かな」

「おっしゃ!」

と大気はガッツポーズして、

「俺5個だからリードだな」

「あれ? 待って…私やっぱ6つだ。おしるこに入ってた分数え忘れてた」

「えー、結構食ってんじゃん! 負けたー!!」

大気は頭を抱えて大袈裟に叫び、「この冬休みの間にもっと食うぞ!」などと変に張り切っている。

鈴子はあはは…と苦笑いしながら、自分の家のポストを開けて中を確認した。

新聞と一緒に年賀状が入っていて、父や母宛てのものとまとめて輪ゴムで束ねてある。

パラッと確認し、

「あ、るみからも来てる。私も書いて出さなきゃなー」

「へー。今でも年賀状って出すんだな。俺には来ねぇけど」

「うん、友達からもらうと嬉しいもんだよー。でも私はいっつももらってから返してる、あはは…」

と苦笑いした後、

「大気さ、今日予定何かあるの?」

「今日? うん、母ちゃんが福袋買いに行くから付き合えって」

「そ、そっか。それはお供しなきゃね。――じゃあ、明日は空いてたりする?」

「そうだな。別に何もないけど」

「なら明日一緒にどこか行こうよ。せっかくだから初詣でも行かない?」

「そうだな。じゃあ9時半くらいに、先に支度した方が迎えに行くって事でいいよな?」

「うん、いつも通りで」

「分かった。じゃあ明日な鈴子!」

「うんっ」

大気が自宅に戻り、鈴子も自分の家に帰る事にする。

――2人は付き合っている訳ではなかったが幼少期からずっと仲が良く、2人で遊びに行く事も多々あった。

鈴子は大気に淡い想いを抱いているが、それを彼に伝えてどうこうしたいという考えは今はなかった。

そもそも大気が恋愛に対してどれほど関心を持っているかも未知数なので、想いを伝える事で取り返しがつかなくなってしまったらと思うと怖くなる。

お餅の数を競う対象にすらならなくなってしまったらと考えると、現状維持が賢明に思えた。

今は明日が楽しみだ。

鈴子はルンルン♪と鼻歌まじりに家の中へ入って行った。



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あきゅろす。
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