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創作短編『それぞれのゆく年くる年』
初詣C
「あ、あのっ、先輩これって…?」

仁科はこぼさないように水を溜めたままるみの顔の前に更に差し出し、

「そんな小さな手では水が受けれないだろう。俺が汲んでやったからこれですすげ」

「は、はわゎ、えっと、あのでもっ…」

公衆の面前で仁科の手から水を与えられるという行為の恥ずかしさにるみは茹でダコのように真っ赤になったが、冷たい水を受けたまま待っていてくれる彼の優しさを無駄には出来ないと焦った。

そうこうしている内にも、彼の指の間から雫がポタポタと滴って来る。

るみは恥じを捨てて、彼の手の中の水をチュッと吸って口をすすいだ。

その後柄杓で水を汲むと、彼の手にかけて清める。

「ものすごく恥ずかしかったです…」

「何がそんなに恥ずかしいんだ? 鳥だってこうして餌を食うじゃないか」

「私は鳥じゃないですっ」

「鳥はそうして飼い慣らすんだ。知ってるか?」

「もういいですからっ、次行きましょ!」

これ以上ここに居ると更に恥じをかかされそうだったので、るみは仁科を強引に引っ張って本殿の方へ向かった。



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