創作短編『それぞれのゆく年くる年』
初日の出@
ピンポーン…
来客を知らせるチャイムの音に、稲垣 努(いながき つとむ)は目を覚ました。
辺りはまだ薄暗い――枕元の時計を見ると、まだ未明の午前5時40分辺りを指している。
「う〜ん…誰やぁー、こんな時間に…」
半分寝た状態でむっくりと起き上がると、布団から出て玄関へと向かう。
寝ぼけ眼でドアを開けると、そこには彼の教え子である三浦 律子(みつうら りつこ)が立っていた。
状況が把握出来ずに、稲垣は目をしぱしぱさせる。
「ん、三浦ぁ〜? 何やこんな時間に」
「おはよう稲ちゃん。あけましておめでとう。今年もよろしくな」
律子は笑顔で挨拶して来る。
「あ、おぉ。おめでとさん。こっちこそよろしくな――て、挨拶に来てくれたんか?」
「うんっ」
元気に頷く律子。
「そか、ありがとうな。――ほんなら、また学校でな」
とドアを閉めようとするが、何かが引っかかったのかなかなか閉まらない。
「はっ? ん?? な、何や――て、あぁっ!?」
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