[携帯モード] [URL送信]

創作小説 『陽だまりヶ丘のひまわり』

「私、自分の事情けないって今日改めて感じたのよ。1人じゃ何も出来なくって…だから社会勉強の為に働きに出たいの!」

「その社会勉強とやらの為に嫁に行き遅れたらどうするんじゃ!」

「まだ21よ!」

「もう21じゃ! あっと言う間に25を過ぎるぞ。卒業したらすぐに身分の確かな男と結婚! 三十路前に子供を生む。ワシの言う事をおとなしく聞いておれば良いわ!!」

――ふいに沙雪の脳裏に、父の敷いたレールに沿って歩む自分の未来が流れた。

(恋もしないまま誰かの妻になって、母親になるの?)

あっけなく終わる人生。

親への恩はあっても、これだけは譲れなかった。

「私、まだ恋もした事ないのよ! 人を愛する事も知らない女をこの方にもらってもらおうだなんて、却って失礼だわ!」

と、机の上の写真を示す。

「何だと、恋…?」

千之助が急に押し黙った。

何やら考え込んでしまう。

ここぞとばかりに沙雪は畳みかけた。

「このお話、破棄させていただきます!」

去ろうとすると、千之助が何やら呟いた。

「沙雪、ワシはの…」

「…何ですか?」

引き戸に手をかけたまま、怖々と返す。

「母さんとは見合い結婚だったんだ。恋心なんぞ、一緒になってからやっと湧いて来るものだぞ」

今度は沙雪が言葉をなくす。

(それは、そういう事だってそりゃあるかも知れないわね…)

隙を突いて、千之助が沙雪を再び座らせようとして来る。

「だからじゃ! おとなしくヒチサンの好青年と一緒になってしまえ! ヒチサンに悪い奴はおらんのだから!!」

「嫌ぁーっ!」

袖口を引っ張られて、激しく抵抗する。

それからもしばらく不毛なやり取りは続いた…。



[*前へ][次へ#]

3/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!