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創作小説 『陽だまりヶ丘のひまわり』
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「さっきの方達、とても礼儀正しい方々よね。龍寺さんはあの方々と一緒に暮らしているの?」

「まぁ…いつの間にかそうなったな」

「楽しそう。寮生活みたいなものよね。でも、あんな物騒な所で暮らしていては、ご家族に心配されないのかしら?」

「そんなもんいねぇから好き放題してるのさ」

「そう…ごめんなさい」

「何謝ってんだ」

「あの…私には父も母も、そして妹が1人居ますの。きっと今頃心配してる…電話を入れたかったけど、今更遅いわ。――あ、この通り!」

見覚えのある通りに出て、沙雪はパァッと明るい表情になった。

「もうすぐです、私の家。あの角を曲がってすぐですわ!」

しばらく行くと、沙雪の家が見えて来た。

龍寺はそれを見て唖然としている。

「ここです、龍寺さん! ――あっ!」

見ると、龍寺の腕に蚊が止まっていた。

「じっとしてて下さい…えいっ!」

ペチン!☆

思い切り龍寺の腕を平手で叩いてしまった。

それから手の平を確認して、

「逃げられちゃった…」

「…いきなり何すんだ」

怒気を含んだ声に、沙雪は慌てた。

「あっごめんなさい、龍ちゃん!」

「何だと?」

「あらっ」

言っておいて自分でも戸惑ってしまう。

「ご、ごめんなさいっ。私つい、可愛いものをそう呼んでしまう癖が――」

ふいに揺れが収まり、沙雪はキョトンとした。

「着いたぞ。にしてもお前…ホントにここが自分ちなんか?」

「ええ。ありがとうございました、送って下さって。…よいしょ」

沙雪は立派な門構えの、屋敷と呼んでも良いような和風家屋の前に降り立った。

クルリと振り返る。

「本当にありがとう。…あの、もう会う事、ないですよね…?」

「あぁ。じゃあな」

内側から助手席のドアを閉める龍寺の様子を、沙雪はじっと見ていた。

「気をつけて、帰って下さいね」

「お前じゃあるまいしな。じゃあ」

窓枠越しにやり取りする。

やがて、車は鈍い音を立てながらUターンし、走り去ってゆく。

沙雪はずっと突っ立ち、車の姿が闇に溶けてしまうまでじっと見送っていた…。



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あきゅろす。
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