創作小説 『スパイシー☆キャンディ』
1
夕陽のやわらかい光が射し込む部屋で、武とななは抱き合っていた。
武はななに覆い被さるようにしてキスを交わすと、そのまま自分のベッドに彼女を押し倒した。
横たえたななに再び唇を重ねたあと、彼女の太股を撫で、スカートの中に手を潜らせて行く…。
――が、その手がふいに止まった。
「ん…どーしたの? タケシ」
潤んだ瞳で見上げると、武は何故か妙な顔をしていた。
そしてななから離れ、ベッドから下りると、
「ちょっ…悪ぃ、トイレ行って来とく。すぐ戻るからさ」
ばつが悪そうにななに向かって片手を上げて謝りながら、そそくさと部屋を出て行く。
「バカ」
ななはベッドの上に起き上がり、ジト目でボヤいた。
ムードがぶち壊しだ。
待っているように言われたが、ななは部屋を出てソロソロと忍び足で廊下を歩いて行った…。
――武の部屋の隣には、もうひとつ部屋がある。
ドアノブをそっと回してみると、カチャリと音がしてドアが内側に向かって開いた…。
(やっぱりそうだ)
睨んだ通り、武の姉の部屋だった。
キレイに整頓された部屋はどこか地味で殺風景だった。
ななは堂々と入って行き、キョロキョロと物色する。
「まーイメージ通りの部屋か。予想はしてたけどつまんない部屋だなー」
失礼な事を言いながら、デスク脇の引き出しを開けて勝手に中を確かめて行く。
「んー…特に何もないなぁ」
興味を惹かれるものも見当たらず、あきらめて去ろうかと思った時――
「っ…?」
最後に開けた引き出しの中に、気になる物が入っていた。
裏返されて入っていた物を手に取って、表を向けてみる。
それは小さな写真立てだった。
若かりし日の武の姉と思われる女学生が、ぎこちない笑みを浮かべてピースサインをこちらに向けている。
「うまくピース出来てないじゃん」
関節の所で曲げた指は、中途半端なブイサインを作っている。
伸ばし切っていない指を見ると、しっかりブイサインを作る前にシャッターを切られてしまったのかも知れない。
ぎこちなくはにかむ姉の隣には、学ラン姿の快活そうな少年が本当に嬉しそうな笑顔で写っていた。
姉のかぎ爪のような妙なピースサインの隣に寄せるようにして、少年の少し大きな手がキレイなピースを作っている。
(これって学生の頃のヤツ? 恋人なのかな、この2人。てか、こんなポーズ決まってない変な写真を大事そうにケースに入れとくかなぁ、フツー…)
じっと固まって写真を眺めていると――
「あ、居やがった!」
武に見つかった。
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