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小説
【恋も華咲く八百八町】 にょた銀 パラレル   @−T


いつの頃から
この町に住み着いたのか 

万事屋などと胡散臭い稼業を生業としているのは 
坂田銀時という女だ。





何をやっているかと思えばパチンコをしたり土手で昼寝したり、かと思えば面倒見が良いらしく子供二人を雇い町の厄介事に首を突っ込んでは、あれこれ騒動を起こしたりと 



それでも彼女の人当たりの良さからなのか、みんな 彼女の周りに集まって来る





そんな万事屋の女主人である銀時に『縁談』が来た





相手は江戸でも一流企業とされる社長。 

金アリ、地位アリ 
しかも年若く男前ときては断る理由も見つからない。



万事屋の子供達はもう結婚までの段取りをシュミレーションしているくらいだ。


年がら年中貧乏で家賃はおろか、毎日食べる米もままならない。 
ただそれも大食いの怪力娘がいるせいだが…

そんな金持ちからの縁談 願ったり叶ったりで 
何でそんな男が銀時に縁談を持ちかけたのか、子供達はそんな事お構い無しだ。 



一人、蚊帳の外に出された気分の銀時は相手の釣り書を見てまたフゥと溜め息をついた。






そうやって溜め息のひとつも付いて黙っていれば銀色の髪があちこち向いて色白の顔ばせを囲み、物憂げに開けられた瞳は赤みの強い色を見せ見つめられれば誘い込まれそうに惹き付けられる。 

整った鼻筋の下に薄い粘膜の色を通して見せる赤い口唇は両端がキュッと上がり小さめな唇に愛らしさのアクセントを添える。 





しかしその口から出てくる言葉は自分の事をオレと呼び、荒い言葉遣いは女らしさの微塵もない。 

あれだけ端麗な姿形から想像していた男達はその女子力ゼロの言動にギャップを感じるが代えってそれが親しみやすさを増し、町を歩けばあちこちから声をかけられ金も無いのに団子屋前の縁台に座れば団子が出てくる。

まぁ、それもあんまりツケが溜まると出がらしたお茶も出てこないが… 






そしてそんな事をしていると近寄ってくる黒い集団がいる。 



武装警察真選組なんて自分たちは言っているが、ようはチンピラ警官だ。 

いつも見回りと称してかぶき町をウロウロしている。




その中の鬼の副長こと土方十四郎はいつも銀時にちょっかい出しては口論となり、どっちも引かない性格なのかいつもヒートアップし過ぎて見物人が出るほどだ。


そんなんだが夜に居酒屋で会ったりすると酒を酌み交わし、散々つまみを食べて仕舞いには奢って貰って タダ酒飲めて良い気分になって帰ろうとすれば女がひとりで帰るなんて無用心なんて言って送ってもらったりして 

付かず離れず 

傍から見れば互いにいい大人なんだからと思うが…。















今日も午後からの見回りで土方が途中見つけたのは、公園で昼寝をしている沖田だ。 

さっそく沖田をどやしに行った。 






「総悟、良い度胸じゃねえか、見回り中に昼寝かぁ」

「何いってんでぇ、土方さん。オラぁこうして市民の安全をそっと見守ってるんですぜぇ」

「なに御託並べやがって さっさと起きろや!」







「そういゃあ土方さん知ってやすか、万事屋のアネさんの所に縁談の話しが来てるってチャイナが言ってやしたぜ」 

アイマスクを外したその顔には下心がありありだ。 





「はぁ、どこのイカれた野郎がそんな話し持っていったんだ。酔狂にもほどがある」

俄かには信じがたい言葉を言った沖田に切り返した。


「何でも相手の野郎がアネさんを見初めてどうしてもって…」

「なんだそりゃ、どこの エロじじぃなんだ!」

「イヤ、じじぃじゃあなくてどこぞの社長でイケメンらしいですぜ…」




そこまで聞いた土方はなんだか頭の中がグルグルしてきて、いま喋ってる沖田の声は耳に届いてなかった。




「まっ、万事屋のアネさんが嫁にでも行っちまえば土方さんもイラつくヤツがいなくなってサッパリするんじゃあねぇですかい」





最後に聞こえた言葉を頭の中で反芻して我に帰ったときには沖田の背中が遠くに見えた。 



確かに会うたびに言葉の 応酬となる 
でもそれは憎からず思う相手との遊びのようなものだ


現に一昨日居酒屋でばったり会ったときもお互い 
こう言えはああ言うで、傍から見れば口喧嘩に見えるかも知れないが、頭の回転が早いから話しに弾みがあって土方はそれが楽しくってしょうがない。 


次第に会うことを心待ちにしている自分に気が付いたのはだいぶ前のことだが アイツだってそうだろと 自分勝手に思っていたが 違ったのか。




















新八が買い物帰り、黒服の男が道の真ん中でつっ立ってるのを見つけ声をかけた


「土方さん?」


土方は声をかけられて顔を向ければそこには万事屋の従業員であるメガネが目の前にいた。 


こいつに聞けば何かわかるかも知れないと思って 
連れ立って歩きだした 

そして土方は世間話のついでのように新八に尋ねた 



「そういやあ、万事屋に縁談があるんだって?」

「そうなんですよ〜」



新八は土方の心情など全く察する事なく嬉しそうに話しを続けた 



「実はここだけの話し、今までも幾つもそういった話しが来てたんですよ〜」 

新八の言葉に土方の瞳孔は開いた 


「銀さん自分はさて置き 他人のために働く人じゃないですか。そういった所 世間の人はちゃんと見てくれていて、知り合いとか 自分の倅にとか…って。 でも今までは全部断ってたんですが今回は銀さんも乗り気みたいで、今度会うことになったんです」






真選組の頭脳と称される 土方の頭の中はまた混乱してきた。 

そんな話し初めて聞く。 
あんなだらしがなくて、粗野で男みたいな成をしているアイツにそんな話しが来ていただなんて迂濶だった。


アイツのイイところを知っているのは自分だけだと思っていた。 

でも世間の目はちゃんと見てたんだアイツのことを! 

危ねー 
こいつはうかうか何てしてらんない。 

今まではたまたま気乗りしなかっただけでまたいつ 今回のような事が起こるかわからない。 
いや、現にこうして起こってるじゃねえか!






そう、アイツには人望がある 
まさに『人に望まれる』 
どこに行ってもアイツと 一緒にいることを人は望む


アイツに関わった人間は アイツの魅力の虜になるんだ 


あのドS王子の沖田だって銀時には一目置いてる。 





お前の一番近い存在だと 思っていたのはオレの勝手な思い込みってことか 




そんならもっと早く… 




あーイライラする。  






屯所の自室に引きこもり タバコに火を点けてはまた消して 
灰皿は山盛りのタバコの吸殻で部屋の中は煙で真っ白になっていた








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あきゅろす。
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