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小説
A


金曜日

夕方近く赴任先から帰国しこれから この課に配属になったと挨拶にやって来たのは、この前会った男だった。

名前は土方といい、顔馴染みと話しが弾んでいた。
周りの女の子達も盛り上がり、久しぶりにみんなで 飲み会となったらしい。


オレは良く知らない相手だし、行く気も無かったので知らん顔してたら 向こうからやって来て自己紹介をしあい是非一緒にと誘われた。 


イヤ、オレは今日は用が有るし
と曖昧な返事をして席を立とうとしたら
「あ、待てよ」と手を引かれた


手を、引かれた。
その手を… 




フラッシュバックのようにこないだの夢が脳裏に甦る。

手綱を引く手…

手…



ハッとしたが
オレの目の前には、真剣な顔をしてる男がいた。


土方は手を離し
「あー、いや こないだのワビもあるし…」

昨日のエレベータ前の事らしい


そんなことは どうでも 良いけど、

銀時はちょっと笑って 
行く事を了承した






近くの居酒屋に10人ほどで集まった。
そこは、年長者の長谷川さん御用達の店で刺身や焼き鳥なども美味しく 海外から帰ってきたばかりの土方には良さそうな店だ。


前に同じ課だった人達が
同僚の話しやウワサなど 話し それを土方は楽しそうに聞いていた。


席がばらけ、土方がオレの隣に来た。

「昨日は」と言いながら 
「あぁ、そんな事は…」

「オレの良く知ってる人に似ていて」

「え?」

「同じ銀髪で、同じ赤茶の瞳だ」

「珍しいねー、オレと同じなんて」

「でも、そいつの髪はもっと長かったが。坂田はオレの事知らないか?」 

「えー。わかんないなぁ」

「そうかぁ…。」

ちょっと寂しそうな顔になった。

でも、どうしてそんな顔になったか分からない。

男前にしては気さくで 
あれこれ話しをすれば 
年も近く、住んでる所も近かった。


飲み会も終わり、二次会にも誘われたたがオレはここで辞退して帰ることにした。
主役の土方もまだ片付けも残ってるとかで みんな
そこでバラけた。


おのずと土方と同じ方向に歩いて行くと



「なぁ、まだ大丈夫か?」 
「あぁ」

「ちょっと良かったら寄ってかないか」


そこはワンショットバーで赴任前によくここを利用していたらしい。


土方はジンライム、オレはカルーアミルクを注文した。



土方は一口、グラスに口を付けると
「オレ、昔から同じ夢を見るんだ」

「夢?」

「あぁ、坂田は見ないか?」

「そーねぇ」
言葉を濁していると 

「オレ…、夢の中で長い銀髪の男と一緒にいるんだ。そして…」

「そして?」 

今度は土方が言葉を濁した。
横を向いて 何となく顔が赤らんでいるような気もするが酔いが回ってるからだろうか。


「坂田は?」

「オレか。そうだなぁ〜 草原を歩いてる夢かな」

「草原?」

「そう、冬っぽい草原を…。馬の手綱を引いて歩いてんの」

「馬と」


へ〜 という顔をしてオレを見ている漆黒の瞳は
なんだか熱っぽかった







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あきゅろす。
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