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東方想天界
Stage4 雲の中の竜宮

Side - Gouri Kanayago -

雲の中はジメジメとしていて気分が悪い。
あの子はよくこんな場所を住処に選んだものだ。

ふわふわな羽衣の彼女は元気でやっているだろうか?




雲の中の竜宮




Side - Iku Nagae -
「永江さーん。イー7とロ-5の件ってどうなりました?」

永江 衣玖(ながえ いく)は災害の警告を伝える竜宮の遣いである。

先日、上司である比那名居(ひなない)の総領様から「これから数日中に幻想郷を壊滅的な地震が襲うだろう、だからこの事を一刻も早く地上に伝えるようにしてくれ」と命令が下った。

「その案件なら既にまとめて沢田課長の方に出しましたよ」

「分かりました。今から外回りですか?」

「ええ、比那名居様から言われたので」

それに今、地上にはあの人が居る。
顔を出してお土産を持っていっても良いだろう。

そう考えた私は帽子の中に『天界銘菓 ももまんじう』(1ケース10個入り)を入れる。

「いってらっしゃい、気をつけてね」

同僚の声を背に聞きながら外に出る。
足元の雲はまだら模様。

変ですね。…まあ、放っておいてもいいでしょう。

私はいつも電気の反発を利用して浮いている。
服がフワフワするけれどもスタイルに自信が無い私にはこれ位がちょうど良い。

空気を読む程度の能力で、空気の流れと電位の推移を読む。
む、あそこですか。
ここ七日ほど一箇所だけにどす黒い雲が固まっていてそこを利用させてもらっていたけれど、今日は別の場所にあるようだ。


雲に潜るとひんやりとした空気と大気中にみなぎる電気、湿気を感じる。

あー、癒されますね。
どうしてか同僚たちにこの良さは分からないらしい、非常に残念な事だ。

充電完了まで2刻位ですか。

今はこうして雲にたゆたっていよう。
あの人を思いながら…。






Side - Gouri Kanayago -

…あれは、永江君か?

雲間を遊泳する桃色と藍色の羽衣が見える。
あらゆる意味で多彩な人材がいる竜宮でも、自分から好んで雲中ににいるのは彼女くらいなものだ。

「永江君?」

「ひゃい!?」

声をかけると彼女はビクッと飛び上がった。
…悪いことをしたな。

「か、金屋子監察御史?!」

「久しぶり、元気かい?」

わたわたとしながら彼女は私を探す。

「ど、何処ですか?」

「君から見て右下の方だよ」

瞬間、パッとスカートを押さえられる。
ミエテナイヨ、ホントダヨ。

「ど、ど、ど」

「ど?」

永江君の顔が真っ赤だ。

「どうして、此処に?」

「すこし確認しないといけないことがあってね」

そして、ふと思う。
ああ、ここで彼女に聞けばいいんだ。
竜宮の使いで地震関係の話は大抵永江君を通るから。

「最近、黎玄から地震の話はあったかい?」

ぴょこんと永江君の眉が上がって目が見開かれる。
ああ、あったのか。

「どこから、それを?」

「きっと、その地震は既に起こっているかもしれない」

「えっ…?」

ポカンとしている永江君に神社倒壊の件を伝える。

「まさか、そんな事が…」

明らかに困惑している、か。
もしかして…。

「黎玄が地の気を読み間違えたか?」

この幻想郷の地震を司っているのは名居守(ないのかみ)の眷属、比那名居一族だ。
今代の比那名居総領、比那名居 黎玄(ひなない りげん)は私とも浅からぬ仲だ。

まさかこんなミスを犯す男ではないと思うのだが…。

「…私には分かりませんが、竜神様と比那名居の総領に報告しなければならない事態でしょう」

「私も行こう。先ほど現場も見てきた」

「では、お願いします」

永江君はクルリと反転したが動かない。

「行かないのか?」

また、永江君の顔が赤くなる。

「さ、先を飛んでください」

…いろいろと察した。
うん、ここから竜宮に行くには真っ直ぐ上に飛ぶところがあるね。



竜宮の使いはドロワーズを履かない。

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