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小説
そして僕を戒める雨が降る。


好きだ。
好きだよ。
そう思えば想うほど止まらなくて、脳に電流が走ったようにがむしゃらになる。
好きだ。
好きだよ。
この想いだけは誰にも負けない。
誰にも、そう、誰にも。
例え、どんなに自分が代用品でも。
好きだ。
好きだよ。


愛してるんだ。


「…ンっ…む…、…むぅ、に、…ニールっ…やめ…!ふ…ぅ…。」
刹那が抗議の声をあげようと口を開けると、ぬるりと舌が入り込んできた。
熱のせいで温度の上がった舌が、刹那の口腔で蠢く。
刹那の口の端からは、どちらのものとも言えない唾液が流れて、その顎を伝って服に染みを作った。
「…ふ…ぅ、…や…ァん…!」
ニールを制止させようにも、呼吸が上手くいかなくて言葉がでてこない。
ニールは噛み付くように刹那の唇を貪り、舌を吸い上げる。
「…ン…は、ぁ…!」
ニールは酸素不足で目をとろんとさせる刹那を確認すると、チュ、と音を立てて唇を離した。
ニールの唇と刹那の舌を銀糸が繋ぎ、ぷつりと切れた。

二人で荒くなった呼吸を整える。
部屋には、ニールの熱だけではない熱気が立ち込め、それがニールの気を盛り上げた。
「…刹那…。」
ギシ、とベッドを軋ませて、ぐったりする刹那と体制を入れ替える。
目を虚ろにさせた刹那は抵抗もあまりせず、ニールはその手首をベッドに押さえ付けた。
「刹那…っ。」
愛しいひとと唇を、深く深く重ねられたことが、ニールの刹那への想いを止まらなくさせる。
刹那の匂いを確かめるように、ニールは刹那の首筋に唇を寄せた。

その途端、刹那がはっきりと意識を取り戻し、完全に油断していたニールの身体を押し退けた。
明らかにニールより細く小さな身体のどこにそんな力があったのだろうか。
しかし力的には、病人といえどニールの方が上で、またすぐに刹那をベッドへと引き戻した。
「や…やめろッ…ニール!」
刹那が叱るように声を荒げるが、ニールは聞いている様子も見せず、刹那の顎をべろりと舐めた。
その行動に刹那はぞくりと背中が粟立つのを感じ、必死の抵抗を続ける。
「…に、ニールッ…いい加減に…!」
そう叫んだ刹那の唇を、再び荒々しいニールの唇が塞いだ。
舌で刹那の口内を蹂躙し、唇に噛み付く。
どこでこんなキスを覚えてきたのだろう、と刹那は霞む頭で考えた。
こんなニールは知らない。
自分の知っているニールは、子供で、無邪気で、自分が可愛がってきた“ニール・ディランディ”だ。
そしてもう一人の“ニール”も、やはりこんなキスはしなかった。
いつも彼は刹那を労るように、優しくキスをしてくれた。

こんなキスは、知らない。


―…カチャ


その音に刹那は上半身を軽く起こした。
何をするのかなんて、刹那には一目瞭然だった。
ニールは右手で刹那の手をひとまとめにおさえつけて、左手で器用にベルトのバックルを外した。
するりとベルトを抜くと、ニールはそれをベッドの下へと捨てて、刹那のズボンに手をかけた。
「ばっ…バカ…ニール!やめろ!やめろって…!」
「やめない。」
ニールの一言が、やけにはっきりと刹那の耳に響いた。
「刹那が、誰を好きだろうと構わないよ。でも、いまは俺だけ見ててよ…俺を通して、他の奴なんか見ないで…!」
ニールがそう言い終えるとほぼ同時に、刹那は下着と一緒にズボンを脱がされた。
「…っや…ぅ!」
20年近く、他人の目に曝されることのなかった刹那自身が、ニールの目の前に現れた。
刹那は恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、必死にもがいている。
「あれ、刹那…ちょっと勃ってるじゃん。…なんで?」
「やっ…だぁ…!…見るなっ…。」
刹那が身を捩ろうとしたが、ニールの体がのしかかってそれを阻んだ。

視姦を続けていたニールが、つ、と刹那自身に触れる。
「…っひゃ…!」
ぴくり、と刹那の身体が跳ねて、ずっと自分の顔を覆っていた手が顔から離れた。
「ちょっとさわっただけじゃん。…もう気持ちいいの…?」
ニールの熱の籠もった声が、刹那の耳元で響く。
いつのまにこんな悪い男になったのだろう、自分の声に含まれる色気を十分に理解している。
ぎゅ、と掴まれると、刹那はその快感に耐えきれず、ニールの肩にしがみついた。
快感によって精が滲みだす先端を、ニールは親指でぐり、と撫でた。
それが大層刹那の敏感な部分を刺激して、一際高い声があがった。
「…っあ…ァ!」
普段の刹那からは想像もできない姿に、ニールは恍惚と同時に興奮を感じた。
もっともっと、自分の手で刹那を変えてやりたくて。
今まで感じたことのない気持ちが、自分の中で蠢く。
支配欲と独占欲。
もう心の中は、刹那で埋まる。


―くちゅ

「…ッ!?」
電流が走るような快感に、刹那が首をあげて自分の下半身を見ると、へそのあたりにニールの髪が触れていた。
ニールが刹那の屹立したそれを、舐め始めたのだ。
「…っぁ…ふ…ぁあん…や、やぁ…に…ぃる、…やめ……っァ!!」
ニールの舌使いは巧みで、やはりそれは同じ男だからこそ為せる業なのだろうか。
どこが感じるのか、どこが気持ちいいのか、ちゃんとわかっていて、それで刹那のものに噛り付いてくる。
―くちゅ、ぴちゃ、じゅ
独特の水音に、刹那は羞恥が隠せず、ニールの髪を掴んで引き剥がそうとした。
「…い…ゃ、…ニール…ぅ…っ、…だめ…だ……ッ!」
しかしニールは簡単に引き下がるわけでもなく、叱るように歯を立てた。
その瞬間刹那は顎を仰け反らせて小さく声を発した。
そろそろ限界が近いのだろう。
ニールは敏感な先端の窪みを集中的に攻めた。
舌の先で抉るようにつつけば、大量の精が溢れてくる。

「…ッ…ぁん…!!……ゃ、ァ…にぃ…る…ん…やら、…あっ…あっ…い、いく…いっちゃう…から!」
口を離せ、という刹那の声もニールには届かず、ニールはじゅうっと刹那自身を吸い上げた。
「ゃ…あ!…いく、いく…いっちゃう…っあァ!!」
刹那の身体が跳ねると同時に、ニールの口の中に青臭いものが溢れた。
しかしニールは吐き出すことはせず、ゆっくりと飲み込んだ。
独特の苦味と匂いが喉をつく。
口の端に溢れた白いものを指で拭って、ニールは刹那に覆いかぶさった。
精を発したばかりでぐったりとする刹那の頬に触れて、もう一度、名前を呼ぶ。
「せつな…。」
愛しい刹那。
ずっとずっと好きだった刹那。
いま、自分が組み敷いているのは、その愛しい身体―。

ふと気付くと、刹那の瞳からは大量の涙が零れていた。
ボロボロととめどなく溢れる涙に、ニールは愕然とした。
そして自分の愚かさに気付いた。
自分は、なんということをしたのだろう。
刹那に、愛しい存在に、なをとひどいことをしたのだろう。
これではまるで強姦だ。

刹那は涙を流しながら、身体をカタカタと震わせていた。
「…せつ…な…。」
刹那の頬にそっと手を伸ばすと、触れるか触れないかの距離で刹那の身体がびくりと震えた。

ニールの瞳から、ボロリと涙が零れた。

「…ごめん……せつな…。…ごめんなさい…。」
溢れた涙が、刹那の頬に伝った。
ごめんなさい、ごめんなさいと小さな声で謝るニールを、刹那はただ見つめていた。


ごめんなさい、ごめんなさい。
子供でごめんなさい。
こうすることでしか刹那は自分の方を見てくれないと思ったから。
ごめんなさい、ごめんなさい。
浅はかでごめんなさい。
ただ刹那に、振り向いて欲しかったんだ。
俺でごめんなさい。
あのひとじゃなくてごめんなさい。


ひたすら謝り続けるニールの部屋の外では、まるでニールの心の中のように荒れた雨が降っていた。

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