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小説
涙と一緒に流れていく想いが僕のすべて。

ずっとずっと好きだった

本当の想いを今日、伝えるよ



熱があるというのに大きな声を出してしまったからか、刹那は顔色をより一層悪くしてしまった。
ニールは刹那の肩を支えると、寝室へと運んだ。
ニールが触れたとき、刹那は少し躊躇したように見えたが、素直にニールの肩に支えられた。

「刹那、水とか、なんかほしいものある?」
「…いや、いい。」
刹那をベッドに座らせて、ニールはその側に床に座り込んだ。

シン、と静寂が訪れて、ニールは何となく気まずい気分になった。
いくら気持ちを打ち明けようと決めたとはいえ、どう切り出したらいいかがわからない。
それに一昨日した事が頭から抜けておらず、どうしても刹那の身体に目がいってしまう。
頬が思わず紅潮して、目が合わせられない。

そんな気分を和らげてくれるかのように、刹那の手がニールの髪に触れた。
よしよし、となだめるように触れてくる手は優しくて、ニールはその優しさに泣きそうになった。

「…せつな。」
「うん?」
そらしていた目線を戻し、しっかりと刹那の赤褐色の瞳を見つめた。
「話が、あって。」
伝えたいことがあるのに、うまく言葉にできない歯痒さがニールを襲った。

言いたいことはある。
しかしそれは刹那を傷つけないだろうか。
自分の想いは重たすぎて、刹那を潰してしまわないだろうか。
その少しの恐怖と勇気のない自分が、ニールは嫌いだった。
そんな自分を知る度に、前世の「自分」はどうだったのだろうと比べてしまう。


「俺は…『ニール』じゃない。刹那が好きだった『ニール』じゃない。刹那を好きなただのガキで…。」
思わず泣きそうになる。
目の奥が熱かった。
「俺は『ニール』にはなれないし…刹那が誰を好きだっていい…でも、俺は…!」
言っていることが滅茶苦茶でわけがわからなくなる。
言葉も詰まってきて、嗚咽のようなものになってしまう。

「それでも俺は刹那が好きだ!世界で一番、小さい頃からずっと刹那が好きだった!…いまだって、刹那のこと考えてる…刹那のことしか考えられない!…俺は刹那が好きだ。俺のこと好きになってくれなくていい…『ニール』の代わりだっていい…刹那の世界に俺を映してよ…!」

ニールは、想いをすべて叫んだ。
刹那の手をぎゅっと握り、涙を零しながら叫んだ。
唇はわなわなと震え、手も震えてきた。
「…すきだ…。」
最後につぶやいた言葉は言葉にならないくらい唇が震えていた。

刹那の顔がまともに見られない。
もっともっと泣きそうで見れなかった。
子供のワガママだとはわかっている。
しかし自分は刹那が好きだ。
この事実だけは歪めたくなかった。

「ニール。」

低めのテノールがニールを呼んだ。
この声に名前を呼ばれるのが好きだった。
この声が自分に向けられているのが嬉しかった。

「顔を、あげてくれないか。」
刹那に言われて、ニールは恐る恐る顔を上げた。
そこには愛しい顔があって。

「刹那…、どうして刹那が泣くんだ…?」
刹那は、赤褐色の大きな瞳からボロボロと涙を流していた。
それを拭う素振りも見せなかったので、ニールは自分の服の袖で刹那の涙を拭ってやった。

「…ばかだな、おまえは。」
涙声で刹那がぽつりと言った。
ニールは涙を拭う手を止めて、刹那の顔を覗き込んだ。
「…え?」
「…ほんと…ばかなガキだよ…。」


ニールが気付いたときには、もう刹那の顔が目の前にあった。
抵抗する暇もなく唇が触れ合って、しばらく間を置いてからチュ、と音を立てて離れた。


「…せつ…な?」
「…まだわからないのか?」
刹那の腕が延びてきて、ニールの首に巻き付いた。
そのままぎゅうと抱きつかれて、ニールの顔に刹那の髪が触れた。
少しかたくて、癖のある髪。
傷んだ毛先すらいとおしい。

「心はもう、おまえにやったのに。」

耳元でささやかれた言葉に、ニールは目を見張った。

刹那はニールから少し離れて向き合うと、今度はニールの頬に両手を這わせた。

「俺の世界におまえは、ずっと前から映ってた。あいつの代わりになんかしない。おまえはおまえなのに。」
ニールは刹那から目がそらせなかった。
見つめあっていた時間が、やけに長く思える。
「おまえをあいつに重ねてしまう俺は、おまえに嫌われると思ってた。おまえを幸せにできないと思ってた。…それでも、おまえは俺を好きと言ってくれるか…?」


刹那。


世界でいちばん好きなひと。


生きてきた17年間、ずっとずっと好きだった。


「…俺も、おまえが好きだよ…ニール。」


絶対に聞けないと思ってた言葉。

心が、ざわめく。


「…あいしてる。」


ささやかれた言葉は、ずっと聞きたかった言葉。
一生聞けないと思ってた言葉。


「…すき、だ。すきだ、好きだ…!刹那が好きだ!…ずっと、好きだった…!」
涙が溢れだして、止まらなくなる。
涙と一緒に想いも溢れだした。
すきという言葉も止まらなくなる。

「…あいしてる…!」

最後につぶやいたとき、刹那からまた口付けられた。

甘い甘い口付けに溶けそうになりながら、ニールはしっかりと刹那を抱き締めた。
もう二度と離さないように。
好きだ好きだと愛を囁きながら。


ぎゅうと腕に力を込めた。
もう二度と、離さないように。


「…俺はおまえのものだよ、ニール。」

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あきゅろす。
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