事後*(エース)
背中に擽ったげな感覚を感じ、イゾウはゆっくり瞑っていた目を開けた。
前後の記憶がなく、酷く怠い。
「イ〜ゾ〜ウ〜」
ふと、背中から誰かに呼ばれて顔を捻った。
そこには少々不満顔なエースがいる。
そうだ、確か自分は彼とセックスをしていて
「やっと起きた。イゾウ、寝ちまうんだもん」
気持ち良すぎて気を失ってたんだよ!とは口が裂けても言いたくない。
この若い恋人が調子に乗りかねない。
顔を戻したイゾウは煙管に手を伸ばせば
「…悪かったな」
大人の余裕たっぷり、と言った丁を結構必死に繕いうつ伏せのまま器用に煙管を噴かしてやる。
髪の乱れも気になったから、軽く手櫛で直してやった。
これはただの性分だ。
「…良く無かったか?」
「…は?」
「だって、イゾウ毎回寝ちまってるし」
そう。
実はイゾウが彼とのセックスで気を飛ばすのはこれが初めてではない。
心中はうるせェ気付けこのにぶちんが!だが、言わねば分からぬのがエースである。
「イゾウ〜」
「ぐえっ」
背中に覆い被さって、今日はいやに粘って来る。
まるででかい猫にじゃれつかれてるみたいだ。
正直、さっきまで気を飛ばしていた体にエースの重みは辛い。
「〜っ…。ったよ」
「へ?」
「良かったって言ってんだ!良すぎて気を失っちまってんだよ!」
半ばヤケクソ気味に叫べば、エースはちょっときょとんとした後にそっかそっか、て締まりなくにやついて来た。
エースの顔は見えない。
見えない、が声の調子で機嫌くらい分かる。
自分の顔が物凄く熱い。
きっと赤面してるに違いない。
これから益々この若い絶倫な恋人に振り回される事になりそうである。
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