Heartoys World
メシアに遣える者
その頃、人形の国を統治する政府と軍では集会が開かれていた。
そこには来未の主を連れ去った青年を除いた二人もいた。
「ちょっと何よ人を呼び付けて。あたしゃこういう心気臭くなるような所は嫌いなんだよ!」
杖を持ってはいないが、水色の髪を持ったとあるアニメの大人しそうなヒロインらしい女が言った。
しかし外見とは裏腹に口はつんけんどんで毒舌、態度もかなり傲慢そうだ。
一方パーカーのフードを深く被った男は彼女に振り回されて、横で上半身を机にだらんと伏せている。
「……何かもうだりぃ。早退しちゃ駄目ですかー?」
彼は独り言のつもりで言ったのだが、更に隣から子供の落ち着いた声が返ってきた。
「駄目に決まってんだろ。此処は学校じゃないしね」
そこにはまだ十二才くらいであろう、黒髪の少年が丈が靴底までもう少しで届きそうな黒いロングコートを着て座っている。
しかし当然座高が低いのでテーブルにひじを付いて顔を支えることが出来ず、男と同じように顔をうつ伏せにしてテーブルの上にのせている。
「大体君達って仮にも政府になる以前から『メシア』に遣えていたんでしょ?それともまだあの時の疲れが取れてないとか?」
「ケッ、ガキが偉そーな口叩いてんじゃねぇよ」
嘲るかのように訊く少年は興味深そうに、パーカーを着た男は目を細めて互いを観察する。
但し、青年の方からは殺気が感じられた。
「……セル、お前も何か言い返せ」
暫く経って遂にパーカーを着た男はセルと呼ばれた、はしたない座り方をする女に目を向けた。
しかし彼女はフンと鼻を鳴らし、彼を見ようともしない。
「知るかよ。ウニの問題はウニが片付けな」
「おまっ……だからウニって呼ぶな!」
青年の怒りの矛先が彼女に変わるのと同時に少年はへぇ、とでも言うように表情を緩め、目を丸くした。
「成程、貴方のあだ名は『ウニ』、と。じゃあ僕もそう呼んでいい?」
「……一個前の俺の台詞で『ウニって呼ぶな』つったの、聴こえなかったか?」
青年は再び少年を睨んだ。
しかし少年は怯むことなく、愛想が良さそうな笑みで面白そうに彼を見続ける。
やはり暫く沈黙が続き、ようやくセルが青年に目を向け、口を開いた。
しかし先程のように偉そうな口で言おうとはしなかった。
「ラス、もうやめときな。少年相手に大人げがなさすぎる」
ラスと名指しされた男は一度をセルを見て、結局睨むのをやめた。
そして少年もまた、特に表情は何の変わりも示さぬままそれ以上その話に触れようとはせず、別の話題を切り出す。
「で、今回の内容は異常なガラクタについての処理らしいけど……なかなか勢力が縮小しないらしいね。セルさん」
少年は姿勢を正しくして座り直す。ちなみに椅子が高すぎて彼の足が床についておらず、宙にぶら下がる形もなっていた。
なので先程まで少年は椅子の上に足も丸ごとのせて、座っていた。
「正式には反乱側、な。どうも奴等に人間の『核』の在りかを見付けられてしまったらしくてな、今回はそれについてどう対処するからしい」
彼女達は自分達の首領が座る、空っぽの席を見た。
―――キィン
「……『メシア』のおでまし、だ」
すると三人以外の誰かが呟くと同時に灯りが消され、辺りを暗闇が包んだ。
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