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二人の秘密は内密に







「ほぉ。つまり俺を犯罪者扱いって訳かぁ」


「スクアーロは元々そうだし。それにそこまでは言ってない。…………ただ、白髪の目付きの悪い外人が数日彷徨いてるのが不思議だから噂が流れるのが速かったみたいよ。スクアーロみたいな奴ってそういないし、居たら居たでたまんないだろうしね」


「どういう意味だ、それ」




あれからスクアーロと私は、とにかく気分を落ち着かせる為にコーヒーを用意して、テーブルに向かい合った。一口、また一口とコーヒーをいれる度に気分が落ち着いていくのがわかる。ある程度落ち着いた時点で、私はスクアーロに事の成り行きを説明した。
簡単に事を要約すれば、スクアーロの姿が近所の人に多く見られた。それだけだ。それだけだけど#、#name_1##にとって事態は思った以上に深刻。




「あんた、家に入ってくる時誰かに見られてないでしょうね」


「ハッ、誰がそんなヘマするか」


「ならいいけど」




スクアーロがこう言うのならば問題は無いだろう。何せこんなんでも暗殺部隊所属なんだから。それに登美さんの話だと、その外人が私の家に住み着いていることまでは知られていないみたいだ。私はとにかくその事にほっと安堵した。
一人暮らしの独り身の女が、彼氏でもない、しかも白髪で長髪で目付きが悪くて背の高い外人を住まわせているなんて噂が流れてみろ。私の評判はがた落ちだ。
…………それに。




「スクアーロ…………実はもうひとつ、問題があるのよね。さっき気付いたんだけど」


「あ?何だぁ」




ピンポーン…………。




「…………今日、私の担当がうちに来るの」


「!?それを早くいe「シッ!外に聞こえる!」…………もしかして、今のが」


「多分」




ハルヒは困った、と言うより呆れるようにため息をつく。




「だからとりあえず、隠れといて」


「隠れるっつってもどこに」


「…………私の部屋?」


「あ?だってそこは」


「緊急事態だからしょうがない。不本意だがスクアーロに対する米粒ばかりの信用を全部使って………………………………許す」


「嫌なんじゃねえか」




ハルヒの部屋は立ち入り禁止。それは最初からの暗黙の了解。




「荒らすな、漁るな、壊すな」


「なっ、誰が漁る…………っ!?」


「五月蝿い、カス!」




言葉と一緒にクッションを投げつけるハルヒ。スクアーロと暮らす日にちが長引くごとに、徐々にコントロールの精度が上がり、今ではタイミングよくスクアーロの口をクッションで防げるにまで成長した。




「…………お前、大分ウチのボスさんに似てきたなぁ」


「お褒めの言葉をありがとう。お陰でスクアーロと暮らせば皆、ザンザスに似ることが証明できたわ。てかそれならあのザンザスの癖、スクアーロのせいじゃん」


「む…………」


「ほら、早く!」




ピンポーン。再びさっきと同じ音が鳴る。不本意ながら、スクアーロはそのチャイム音に肩を震わせてしまった。
…………本当に情けない。




「梓川さーん、留守なんですか?」


「居るわ、ちょっと待って!」


「おお、よかった」




その言葉と一緒にスクアーロを自分の部屋へ押し込む。勿論リビングに置いていたスクアーロの剣やら服やらなんやらも一緒に。
これで一応、スクアーロのいた痕跡は一切なくなった。




「…………よし」




一人、部屋を確認したハルヒ。…………物と本人がなくなれば、彼が居たと言う跡が無くなることに一抹の寂寥を感じながらも、担当を部屋に招き入れるべく、さっき胸を過った気持ちを無視して、ハルヒは駆け足で玄関に向かった。




*****




「男、だったなぁ…………」




一人ハルヒの部屋に押し込められたスクアーロ。壁にぺたんともたれ掛かると、ハルヒの匂いに包まれながら、ゆっくり力を抜くようにその場に座り込んだ。
情けない。戦場を離れたスクアーロは、今の自分をそうとしか評価できない。
誰かがチャイムを鳴らすだけで肩がすくむ。
ハルヒの担当が男と聞くだけで不安に鳴る。
そして、醜い嫉妬の炎に駈られる。
人に恋愛感情を抱くと言うことはこういうことなのか。こんなにも自分が弱くなってしまうのか。こんな…………醜い感情を抱いてしまうのか。
今まで向こうの世界で手を染めていたときに自分が本当の恋を抱かなかった訳が今、わかった気がする。こんな感情を持ち歩いて現場に出る。それを考えただけで恐ろしい。もしかして過去にそんなことをしていたら、きっと今自分はこの場にいなかっただろう。自分が器用でないことは、とっくの昔に理解している。




「そんな生活の中で支えだったのは小説だった。小説の中では自由に生きられる。自分を自由に表現できる。ここまで来るのにかなりかかったけど…………今の担当が売れる作家にしてくれたことは、本当に感謝してんの、私」


「…………」




あのハルヒに、そこまで言わせるハルヒの担当。ハルヒがそこまで信頼をおいている男。なんだかそれがスクアーロにとって、面白くなかった。




「…………つうか作家っつーのは、女の独身でも部屋に男入れさせるのかぁ?」




…………やはり面白くない。




「なんだかなぁ…………」




スクアーロはこれ以上自分の醜い感情を見たくなくて、咄嗟に天井を見上げた。下を見てしまえば、そこに自分の醜い感情を見ているように気分が下がる。
そうだ、余計なことを考えないうちにさっさとそこら辺に転がって寝てしまおう。そうすれば、次起きた時に担当はいなくなっているはず。そう思って思い腰をゆっくりと上げた。…………その時。




「?なんだぁ…………ブッ!?」




スクアーロに、衝撃が走った。











二人の密は内密に


(…………あいつ!)

(…………ん?何か嫌な予感)

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