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住人が一人、いや一匹増えました





カツカツカツ…………。



私のパンプスの音とブーツの擦れる音がメロディーを奏でるように重なる。




「…………」


「ゔおい」


「……………………」


「…………てめえ、おんn「女って呼ぶな」…………ゔおい…………」




何がなんでこうなった。




競歩もいい加減疲れてきたところで私は足を止める。この人…………スクアーロが私に用があるのは明白だった。


……なんでスクアーロが付いてくるのよ?




「(ハア…………)…………なんで付いてくるんですか。あなたはストーカーなんですか」




私は言いたかったことをぶつける。




「ちげぇ。と言うかついていったのはてめえがロクに返事しねえからだろぉ」


「…………だって関わりたくないんだもの(ボソッ)」


「あ゙あ゙!?」


「イエ、ナンデモ」


「否定しても遅ぇぞぉ!」


「!!」




一メートル以上あった彼との距離が一気につまる。気づいたときには…………スクアーロは私の後ろに回り込んでひんやりと冷たいものを私の首筋に当てられていた。
視界の端には綺麗な銀髪が覗いている。




「っ!?…………何…………するんですか………」


「お゙おっと…………声なんざ出すなよ?女ごときが調子にのってんじゃねぇぞぉ」


「…………」





カス鮫の癖に…………。




心の中で悪態をつく。それをけして表には出さない。暗殺者相手に悪態をつくほど私だって馬鹿じゃない…………。






私のすぐ後ろにいるのは…………紛れもなく『家庭教師ヒットマンREBORN! 』の人気キャラクター、スペルビ・スクアーロ。しかも十年後。そう断言できるのは私が学生の頃に物凄くハマっていたから。当時は特に雲雀さんが好きだったが、基本的に皆好きだった。博愛主義ってやつだ。
勿論今はすっかり熱は覚めてしまってはいるが…………きっと家に帰って物置の奥を探せばドンと漫画が出てくるはずだ。


でも…………どんなに人気はあっての彼は暗殺者。しかもプロ。何せあのヴァリアーの幹部なのだ。例えカス鮫であっても。
そして最悪な事にここは路地裏。大声も滅多なことがない限り届くことはない…………。

私の足はガクガクと笑う。表情もひきつる。殺気なんて嫌いだコノヤロー。



「何が…………言いたいの?」



私は喉が刃に触れないように慎重に喋る。
スクアーロはその事を感じたのか声が震えていたからなのか…………少し考える素振りをして口を開いた。




「…………騒がねぇならこいつをとってやる。あと、絶対に俺の質問に答えろぉ」


「…………」




私はできる限り大きく首を縦に振った。声は…………この状態だから掠れてしまう。



すると耳の近くでカチャッと金属の擦れる音がして私の首からキラリと鈍く光るものは無くなった。それを合図に私は大きく一回深呼吸。肺に新鮮な空気が…………ゲホッ、今通った車の排気ガス吸っちゃった。くせぇ。




「(…………何やってんだ?こいつ)ゔおい!気が済んだらさっさと説明しやがれ!」


「…………デカイ」


「あ゙あ?」


「煩いの。鼓膜破れる」





排気ガス吸って涙目になった私は思わず顔をしかめる。今の行為で若干苛つき気味だ。



「ゔおい…………すまねえ」


「…………いや、別に」





あら、この鮫ちゃんと謝ってきたわ。


礼儀は一応わきまえているらしい。それがわかった私はふっと顔を緩めた。




「なら………私をストーカーしてまで聞きたいことって何?分かる限りなら答えるから」




くるっとスクアーロに向き直る。スクアーロはちょっと目を見開いてから口を開いた。




「ストーカーじゃねぇ。………まず、ここは何処だぁ?見た所ジャッポーネなんだが」


「正解。もっと言うなら〇〇って所よ」


「?じゃあ並盛はどこにある?」


「んなとこ無い」


「あ゙あ!?どういうことだぁ?!」


「だから並盛何てないってば。イタリアはあるけどヴァリアーもボンゴレもないし」


「!?お前やはり俺の事…………」


「?やはり?」





首をかしげた。
私がスクアーロのこと知っている素振りなんて見せただろうか?





「取り敢えず名前と職業は知ってるけど?」


「!?」


「あーもう、めんどくさいわね」





いい、今から話すことに文句つけたり否定したりするんじゃ無いわよ?



そうビシッと断言しておく。
スクアーロはその私の様子に驚かされたようで、目をぱちくりと開けた。





「まずあんたは…………」


「…………」




あたしの口から紡ぎ出される事実と現状。ここがスクアーロの居るべき所ではないことや、REBORN! の漫画のところ。とにかく現状を把握してもらうために私の知っていることは全て話した。



…………全く。私はこんなにお人好しの性格じゃなかったはずなのに。












「……………………まあそんなところかしらね。分かった?」



一通り話した私は渋々と手に持っていたレジ袋を道路に置く。本当は食べ物を地面に置くなんて嫌だったけど…………長い時間立ち話をしていると肩が凝る。いや、私の職業柄いつも肩は凝っているんだけど。

肩をぐるぐると回すと骨の擦れる音が響く。こりゃまた整骨院行きかな。
視線をスクアーロに向けた。


…………?





「あれ…………スクアーロ…………さん?」


「ゔむ…………」




ゔむじゃねーよ。こっち見て返事しろよ。

私はムッとする。こいつはちゃんと話を聞いてたすらも怪しい。まあ聞いてもすぐに信じられないって言うなら同情ぐらいはしないこともないけど。



「ちょっと、スクアーロ」


「…………」



完っ全無視。



…………そうか。そっちがその気ならこっちはもういいよね。知りたいこと教えてあげたわけだし、もう用無しよね?



よし、置いていこう。







私は気づかれないようそっとレジ袋に手を伸ばす。そしてさっさと帰って…………。




あれ?




「ゔおい、どうした?」


「どうしたじゃないわよ、なんであんたが私のレジ袋を持ってんのよ!」




地面においておいたはずのレジ袋は………何故かスクアーロの細くて大きい手のなかに。



「テメェの家はどっちだ?」


「彼処…………」


「そうかぁ」


「…………って、そうじゃ無くて!」




なんであんたがレジ袋を持って私ん家に向かってんの!?

流れで自宅をバラしてしまった自分の口を恨む。何故スクアーロが私の家なんかに。



「暫く厄介になるぞぉ」


「のぉーーーー!!!!」






住人が一人、いや一匹増えました





(まだ許可出してねえし!)

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あきゅろす。
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