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鮫との出逢い











――――果報者。



私の周りにはそういう人が結構いた。




運命の出会いをした人。
宝くじでそこそこの値段が当たった人。
夢が叶った人。
一発で職の内定をとった人…………。

人生を揺るがすような果報からちょっとした果報まで…………。



つくづく私の回りの人は運が良いと思う。私は今までそんな果報出会ったことないけど。



でも、その人たちを私は羨ましいとも妬ましいとも思わない。…………何故かって?









…………きっと私はもうすぐ世界一の果報者になってしまうから!






*****







ガチャン、ガチャンと広いスーパーにレジスターの音がこだまする。
午後五時…………恐らくレジスターが最も音をたてている時間帯だろう。





「ありがとうございました〜」


「どうも」





人の多さに滲んでいる汗も拭う暇もないレジのおばさんは、私の一言を聞いているのかいないのかさっさと次に目線を移動させる。



…………別にいいけど。



邪魔にならないよう、私は片手で持てる位の重さのレジ袋をクシャッと音を鳴らして持ち上げる。手にじわりと重さが掛かってきた。

さあ、帰ろう我が家へ。




私は今晩の夕食の入った袋を手に、吹き付ける寒い風の中をゆっくりゆっくりと噛み締めるように歩いていった。




*****




「…………さむ」




容赦なく吹き付ける風。私は巻いているマフラーにもっと顔を埋めながら寒さを耐える。
今は十一月下旬。この寒さも当然と言えば当然なのかも知れないが…………人間たるもの、我慢にも限度と言うものがある。




「うう…………いい加減にしろよ、風」




大人は風の子じゃないんだぞ。



そうぼそりと呟いてみる。今度来る誕生日で22となってしまう私はけして子供とは言えない年だ。……だからといって二十歳を過ぎたものは皆大人とは言えないと思うけど。

私は商店街の中を歩いている訳なんだが、誰も私の言葉を聞いてないし聞こえもしない。





ふと、私の右前方に人だかりを見つける。主に主婦の。若い子も結構いた。




「?セールでもやってんのかな?」




…………普通、若い子も興味を持つ?




しかもよくよく観察すると、若い子は黄色い声をあげ主婦の方は頬を赤く染めていらっしゃる。…………芸能人でも来てるのか?

人だかりに興味をもった私はあの人この人と想像を巡らせ、人だかりに近づいた。普段の私なら絶対にしないはずなのに。




「上手く話のネタになってくれれば良いけど…………よっと」




くいっと足の指で体重を支える。
結構な人だかりになっているそこは、標準より背の高めの私ですら見るのにちょっと苦労させられた。それぐらい人が多いんだ。
でも見てから私は今晩の夕食の入った袋を取り落としそうになる。私は慌ててキャッチ。




…………あれは。




「ちっ…………うっせぇぞぉ…………」





まさか。






「…………すくあーろ?」






ヴァリアーの制服をかっこよく身に包んで、近くのベンチで長い足を組んで座っているスクアーロがいた。





「ねえ…………あの人かっこ良くない?」


「銀髪ロン毛でかっこいい人って初めて見るわよ、私。…………外国人よね?」





そりゃあそうでしょうよ。しかも外国人どころか二次元の人ですもん。




横から聞こえてくる女子高生のやけに甲高い言葉に私は軽く突っ込む。
いやいやいや、有り得ないでしょう。なんであなたがここにいるの。




「…………早く…………ここから離れよう」




離れよう。関わらずにいこう。私の普段滅多に沸き上がらない好奇心に従ったのがいけなかったんだ。
きっとここで私が見放しても別の親切な人があの人を助けてあげるよ。
きっとあの人のファンとかが喜んで世話をしてくれるよ。



だから私は関わらない。



私は無理にそう自分に言い聞かせて、その人だかりを離れ後ろを振り返らずに家へと走った。その間、一度も振り返りはしない。








私に出会いなんてもの、必要ないんだから。












の出逢い



(何で鮫なの?)

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あきゅろす。
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