雲珠桜は夏に彩る それぞれの覚悟04 笠原ユカ、年齢不詳(恐らく14) ある日雲雀宅に居候として住まう。 どこから来たのかは不明。両親共に不明。 文武両道で先生からも生徒からも親しまれてきた。 ユカがいなくなって10年。 その間に集まったユカの資料はたったこれだけだった。 これを見て沢田綱吉は呆然とした。一般人であるユカの親でさえ情報が浮かんでこないのだ。 何も言わず忽然といなくなった彼女。ボンゴレに頼み込んで捜索してもらっても見付からない。なのに居なくなった事で騒ぎだすはずのユカの両親はいない。 途方にくれ出した沢田綱吉は頭を抱えた。 今回のことは自分に関わるのか 自分と関わったからこんなことになっているのか マフィアと関わりのある自分が………… そうして自分をしばらく責めていた。自分を塞いでいた。…………なのに、殻に閉じ籠っていたはずだったのにどうしても忘れられない光景が今でも脳裏に残っている。 …………ユカが居なくなった後の雲雀恭弥だ。 あの学校大好きと周りから噂される雲雀恭弥が一週間ほど休学した。勿論回りはその事で騒ぎだす。 丁度ユカが居なくなった時期と重なったので二人が駆け落ちしたとか、いや、むしろ雲雀がユカを誘拐したとか根も葉もない噂が学校中飛び交った。それでも並盛の秩序と言うのが壊れなかったのは、風紀委員の活動のお陰である。 それでも雲雀はきちんと一週間ほどで学校を出てくるようになった。…………感情の端に影を背負って。 今でも脳裏からあの表情が取れない。 誰かは…………いや、雲雀の周りに居るものは大抵気付いていた。雲雀がユカに対して特別な感情を抱いていることを。 気付いていたがあえて触れるようなこともしなかった。これは本人達の問題だと。 そして口出しを皆でしないと決めて結果、どうこうなる前にユカが失踪。 あの日から雲雀が咬み殺す群れの数は右肩上がりとなっていった。 あれから皆は高校受験を控え、 高校生になり 高校を卒業すると同時にイタリアへとわたり、 ……いつの間にか十年の月日が経っていた。 大人になって、ボンゴレ十代目とその守護者と言われる事にも慣れた。 でも、雲雀の頭の中からユカのことが忘れられた日はない。 十代目ボンゴレボスを育て上げた家庭教師ヒットマンも、他の者に愛人くらい作れと急かす中で、雲雀だけにはそう言うことはなかった…………。 僕は地面を蹴りあげる。 一気に相手との距離は狭まってゆく。 「!き、来た…………」 「煩いね。草食動物は黙って狩られてよ」 「!?…………ぐはっ…………」 まずは一匹。 鳩尾の下に狙いを付けてトンファーで打ち込む。完全に入った訳じゃないので男は少し苦しそうに膝を地面につかせた。 勿論その時落とした拳銃を遠くに蹴ることを忘れない。 「っ…………この!」 「…………」 隣にいた男がナイフを僕の喉元に目掛けて突き出してくる。完全に急所狙い一発koを望んでいるという魂胆が丸見えだ。 …………全く。喉元を狙ったら呼吸が出来なくなるじゃないか。 「っ!(食らえっ…………)」 ナイフは完全に雲雀の喉仏を狙っていた。…………にも拘らず、目標は一瞬で視界から消える。 [*前へ][次へ#] |