雲珠桜は夏に彩る 残された者達04 「それでなんですけど」 「……何?」 日がほとんど傾いて、地平線の向こうに差し掛かっている様な時間帯…。太陽は日中に空高く登っていた時よりも色づいている。 生徒が結構減っている中、チャイムが虚しく鳴っているが……私はそれに聞こえないふりをして雲雀さんに話し掛けた。 「ツナ達が居なくなったのっていつ頃のことなんですか?私とヴァリアーで話した時は居たみたいだけど……」 「昨日。正確な時間は分からない。……でも、昨日の授業はきちんと出てたみたいだよ」 「昨日!?え、そんなに最近ですか!?」 「うん、そうみたいだね」 昨日か……。 「じゃあ山本も……?」 もう続いて、未来に行ってしまったのだろうか? 「山本武?今日見かけたけど」 ほら。と校門の方を指す。 「あ!」 指差す方を見てみれば成る程、山本が一人寂しそうに歩いている。いつも三人揃っているイメージが強い分、より一層その雰囲気をかきたてた。 確か原作では……バットを持って未来に行っていたはず。部活がないってことは、今からバッティングセンターにでも行くのだろう。 ……こうしちゃいられない。 「雲雀さん、私追いかけてきます」 「ハア……だろうと思ったよ」 雲雀さんは私に背を向けると、重力を感じさせない足取りで給水タンクの上を駆け上った。 ……相変わらず気儘な人だな。 「ユカ」 「はい?」 「夕飯、ハンバーグがいい。不味かったら咬み殺すから」 上からぴょこっと顔をだし、言いたいことだけ言えば、頭は引っ込む。 私は吹き出しそうなのを我慢して『はい』と答え、山本を追うべく、屋上のドアノブを捻った。 [*前へ][次へ#] |