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雲珠桜は夏に彩る
結局運命と言うものは09






それから。

私自身には特にこれといった外傷もないし、あれだけ重かったはずの体も、流石に三日も寝続けていたせいかすっかり元通りになっていた。なので皆にはもう平気だと言い張ったのだが、それでも今日一日はしっかりと安静にしているようにと皆から言い含められてしまった。
おかげで一日ずっとベッドの上で毛布をかぶって暇を持て余すことになりそうだったが、心配をかけてしまった皆が一定の時間を空けてお見舞いに来てくれた。特にツナ達はそこそこの外傷も目立っていたのだが、日ごろの馴れか治療三日目にして思ったよりも回復しているらしい。
あれだけの戦いを繰り広げておいてそれだけで済むなんて、やはりおかしいと思うのは私だけではないはずだ。


たぶん、皆が来てくれたんだと思う。
毎回入ってくる度に私のことを気遣ってくれるようなことを言ってくれるし、本当にほっとした顔を見せてくれる。それが何より伝わってきて、うれしくて、だけどそこまで心配させてしまったことが申し訳なくて。何だか気持ちが忙しないようにも思えた。
ラルさんが来た時なんか思わず飛びついてしまってデコピンと罵声を浴びてしまったが、それはしょうがない。だって体が動いてしまったんだ。


来客もそろそろ尽きるか、と思われるような時間帯。最後にユカの所に訪れたのは、予想もしていなかったメンバーたちだった。





「ユカ、入るぞ」


「はい、ど、ぞ………!」


「ちょっと話がある」





聞こえてきたのはリボーンの声だった。リボーンまでわざわざ来てくれたんだと返事をしつつドアの方に目を向ければ………なんとそこに立っていたのは、リボーンだけではない。視線を下げれば、そこにはリボーンを筆頭にコロネロ、スカル、ヴェルデ、風、マーモンの、所謂アルコバレーノと呼ばれる赤ん坊たちが全員勢揃いしていたのだ。
私は驚愕のあまり声が出なくて中へ促すことが出来なかったが、リボーンはそんなことはお見通しなのか気にすることなく部屋の中に入ってきた。
当然だが、皆赤ん坊なので自然と視線がしたに行く。リボーンの存在で赤ん坊が普通に立って歩くことに違和感はなかったはずだが、アルコバレーノが全員が揃っていると別物のようだ。貫録を醸し出した赤ん坊が普通に歩いているなんて、違和感のほか何もない。





「思っていた以上に元気そうだな、コラ!」


「え?ああ、おかげ様ですっかり………あの、なんか珍しい?ですね?」


「俺達が一緒にいる事か?それともここにいる事か?」


「どっちも」





素直に首を縦に振ると、リボーンが素直なのはいいことだと何故か褒められてしまった。





「実はお前をこいつらに紹介しとこうと思ってな。それと話があるといったぞ」


「初めまして、風と言います。ユカさんですね、お会いできて光栄です」


「やあ、久しぶり、とでもいえばいいのかな」


「コロネロだ、宜しく!!」


「スカル様だっ!よく名前を覚えておけよ!」


「………ヴェルデだ」


「ど、どうも………」





壮大だ………何とも壮大で、奇妙な光景だ。
各々貫禄のような、圧倒的な存在感を出している六人の赤ん坊を見て、ただただそう思った。
顔見知りも何人かいるはずなのに、なぜか勢いで敬語で話し出そうとすると、リボーンは呆れた口調でいつものままでいい、こいつらに敬意なんて払う部分なんてどうせねえんだと他の皆に失礼なことを言っていた。
そしてお決まりのようにその言葉に絡むスカルがリボーンに瞬殺されるのはご愛嬌。
日本にはたとえ相手が敬意を払うような人柄でなくても年功序列というものがあるのだが………まあ堅い事は抜きということで、いつものようにタメ口に直した。
決して敬意を払わないというわけでも、払える部分がなかったというわけでもないよ、うん。スカル以外は。





「具合の方はもう良さそうだな」


「うん、それはもうすっかり。だから今日は普通に動いてもよかったんだけど………」


「それは駄目だぞ」


「………うん、皆に言われた」





リボーンも口を揃えて皆と同じことを言うものだから、思わず笑みが漏れる。
本当はただ寝ているだけなんてつまらなくてこっそり抜け出してやろうかと思ったけど、それで雲雀さん………いや、この場合は誰に見つかっても同じか。結局は説教に繋がって部屋へと連れ戻されることが簡単に予想付いたので、大人しく持ってきてもらった本を読破していた。おかげで今日は軽く5冊を読み終えることが出来たのだから相当暇だったと言える。皆がお見舞いに来てくれるといっても、私の体調を気遣ってくれすぐに退出していったのだ。





「…それで?今日はただおしゃべりをしに来たわけじゃないんでしょ?」


「よく分かったな」


「そりゃ………このメンバーが揃ってたらね」





先程来てくれた、私の膝の上に乗り腕の中にいるマーモン含め皆を見回す。平均身長の高いツナ達に比べアルコバレーノ達は赤ん坊なので見回すのが楽だ。





「まあな。お前に遠回しで聞いても意味ないからな。単刀直入に言うぞ」


「……アルコバレーノ、のこと?」


「ああ。今回はもっと正確にどこまで知っているか教えてほしい。こいつらも含めて、だ」


「うん。………皆はどこまで知ってる?」


「とりあえず、お前が俺に話したことは全部話してある」


「分かった」


「……未だ信じられないな。こんな小娘が我々の事を知っているなんて。気分のいいものではない」


「ヴェルデ」


「あはは、いいのリボーン。当たり前のことだもん」





そこから私は覚えていることを一つずつ、ゆっくりと話していった。もう大分あやふやな事が多い中で、彼らの、アルコバーレノの事ははっきりと覚えていた。それだけ印象的だったのもある。
大人としてちゃんと成長し、各々の能力を生かす形で暮らしていた彼らが何故が赤ん坊にされ、おしゃぶりをさせる。それが自ら望んだことでないということは私も知っている。だけど、彼らがその事をどんな風にとらえているのか、私は知らない。どんな風に思ってその姿で暮らしているのかとか、これからの不安だとか、見た目通りの扱いをされることに対しどんなことを思っているのかも。

どんなに考えてもわからなかったから一度、私は思わずリボーンに聞いてしまった。でもきっと、彼が本当の気持ちを私に伝えてくれたとしても私が分かってあげれることはできないんだと思う。

それはきっと分かった気になるだけなんだ。

だから、私はできるだけ主観を交えない形で私の知っていることを全て話した。





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