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雲珠桜は夏に彩る
結局運命と言うものは08







皆が一気に病室に押し寄せた事でこの病室は一気に人で埋まってしまい、雲雀さんの逆燐に触れる事となってしまった。
なので、とりあえず結果だけツナ達から報告させてもらう為、あとで二人の時間を作ってくれるということで雲雀さんには退出してもらった。

やはり雲雀さんにとってはどんな状況でも、群れるということは性に合わないというか癪に触れるというか………とにかく耐えられないようだ。それでも最初はこのボンゴレ基地ではなく私を風紀財団の方に連れて帰ろうとしたところをツナ達が何とか説得していたようなので、これでも雲雀さんは最大限の譲歩を見せているのかもしれなかった。

雲雀さんが去るときに私は感情が思わず表情に出ていたようで、リボーンに「そんなに寂しそうな顔しなくても後でちゃんと会わせてやるから、それまで我慢してろ」とニヤニヤ顔で言われたのはちょっと屈辱だった。



………結果はやはり、ツナが白蘭を倒したことで決着がついていた。ユニやγも、おしゃぶりに炎を全部注ぎ込む事で………消えてなくなったそうだ。

悔しいほどに原作通りの展開だった。私が待ち望んでいた通りの終末。なのにどうしてだろう、こんなに苦しいのは。
二人がいないという事実が、こんなにも辛いのは。





「ごめん……ユカちゃん。ユニとγは…」


「!ううん、謝らないでよツナ!止められなかったのは私もだったんだし………それに」


「それに?」


「………ごめん、ごめんね」





止めなきゃいけなかったのは。止められたのは多分私だったのだ。なのにそれをできないどころか皆にその役目を押し付けるように気を失って。謝らなきゃいけなかったのは私なのだ。

謝ったきり黙り込んでしまった私を見て皆は何を勘違いしたのだろうか、「ユカのせいじゃない」とか「ユカちゃんが責任を感じる事じゃない」とかいろいろ言ってくれたけれど、私はどうしてもその言葉に首を横に振ることしかできなかった。
こうなると分かっていて止められなかったのはやはり、私のせいだ。





「おめぇ………っ何勝手に責任感じてんだよ、ユカ!」


「…え?」


「姫様がしょうがなく犠牲になったような言い方、勝手にすんな!」


「え…野猿に太猿!?何でお前たちが………」


「そこの小娘が勝手な事を言っているのを耳に挟んだんでな」





現在すでに部屋自体の容量を超え箱詰めの状態にある部屋の中に、更に二人が入ってくる気配がした。ずかずかとその足音に、一応患者がこの部屋にいるというのに配慮はない。





「あのなぁ!姫様もγ兄貴も、二人とも自分の意志で命捧げたんだ!何でお前が暗い顔してんだよ!証拠に最後は二人とも笑ってたんだ!そりゃあいくら二人の意志だからって何もオイラ達に言わずにいったのはあれだけどよぉ………」


「おい、野猿。文句言うか泣くなどちらかにしろ」


「だってよぉ…太猿兄貴ぃ!!」


「へいへい、………つまりだ。お前らが気にすんなってこった。今度そんなこと言ってたら逆に兄貴達を侮辱したと見なしてブッ叩くぞ」


「二人とも………」





大切な人たちを同時に二人も失ったのは二人だ。一番心の中で悲しんでいるのは他の誰でもない、この二人なのだ。なのに太猿も野猿もその悲しみを表に見せようとはしていない。
勿論二人の死を乗り越えたわけではないのだろう。それには時間が早計過ぎたし、そんなに安易に乗り越えられるほど浅いものではない。
そうではなく、この二人はこの事実を受け入れようとしている。受け止めようとしている。悲しみに暮れるだけでなく、必死に前を向こうとしている。だからこその言葉なのだろう。
それは自分たちにも止めることが出来なかったから。だから、もしかしたら私のように悲しみに暮れる資格もないと思っているのかもしれない。





「それによぉ!」


「?」


「姫様は、きっと………皆の笑顔が見たくてあんな選択をしたんだ!姫様はそういう人だったからよぉ………γ兄貴だってそれを手伝いたくて姫様の所に行ったんだ!だから、皆を笑顔にするために命張ったのに………なんでユカは笑わねえんだ!笑え、無理にでも!姫様だってそう思ってるはずだかんなっ!」


「………ぷっ、野猿。その顔で言っても説得力がないよ」


「るっせえ」


「そうだよね。それなら私も、笑ってなきゃだよね」





すでにもう、野猿の顔は涙とか鼻水とか………もういろんなものでぐっしゃぐしゃになっていた。それでも自分の言ったことを体現すべく、必死に笑顔を作ろうとしている。それはどう見ても泣き顔でしかなかったのだが。
それにつられてしまいユカは笑顔を作った傍から涙を目一杯に浮かべた。





「ねえ野猿。私、ちゃんと後で笑うよ。思いっきり。だから………今だけは、泣いてもいいかな?」


「…っおう!後で笑うんならな!」


「…あり、がと…っ、う……!」


「う………そんなこと言ったら、せっかく我慢してたのにまたハルも泣いてしまいますぅ…っ」


「う……わ、わたしも…っ」


「「「「「う…っああああん!!」」」」





結局、私と野猿と京子ちゃんとハル。この四人は今までにないほど大きく声をあげて泣き出した。皆が周りにいたが関係なく、我慢なんてすることもなく、気の済むまで泣いた。
最初はその姿におどおどとしていたツナ達だったが、やはり仲間を失った悲しみというものをずっと抱えているまま気張ってきたのだろう。少し時間が経てば私と同じように涙で目に幕を張り、こぼさないように必死になっていた。他の人たちも個人差あれど、同じような感じだった。


どれほど私たちは泣いていたのだろうか。結局大合唱のようになってしまったけれど、それでも皆、思いっきり泣いたせいか、泣き止んだ後は精一杯の笑顔を浮かべていた。







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