雲珠桜は夏に彩る
埋れていた、事実10
敵を迎え撃つ作戦は、主に守りに重点を置かれた。
「ユニの予知で敵は来る場所は大体予想できる。だから………」
「オイラも行くからな!」
「俺もだ!」
きっとこれが最後の戦いになる。少しでも戦力がこの作戦に欲しい。………結局怪我人も総動員して作戦が組まれた。
「止めねえのか、ユカ?お前なら無理にでも行かせねえと思ってたけど」
「………どうせ野猿、止めたって行くんでしょう?」
男にやらなければならぬ時がある。自分の在る物の為に、どうしても貫けばならぬ時がある。………女が止めても、無駄な時がある。
そんなことぐらいなら今の私だって、男じゃなくても理解する事が出来る。まして周りにはその考えを貫くような男ばかりなのだから。
ユカは野猿の包帯をこれでもかと言うくらい頑丈に巻きながら言った。
「だから………」
「いてっ!?」
「はい、終わり。………だから行くなとは言わないよ。周りだって大なり小なり似たようなものだし」
ここまでくれば、結局誰も止まったりしないんだよ。私は野猿のぐるぐるに巻いた包帯の上を軽く叩いて、苦笑を洩らした。
「でしょ?」
「ったりめ―だ!奴らを果たさねえと怒りが収まらねえ!」
「誰がこんな所で止まっていられるんだっつーんだ!」
「極限!!!俺達が未来を守るのだ!!」
「ランボさんも戦うんだもんね!!」
「………ほら」
「だな!」
………振っておいてなんだ、あれだが、せめてもうちょい外れていてほしい。
私が想像した通りの反応を皆が見せ、私は更に苦笑を洩らす羽目になった。
「よし、ツナ。お前エンジンをかけろ」
「え゛」
「そうっすね、お願いします十代目!!」
「極限ルールもありだからな!!お前らもちゃんと動けなくとも参加するのだぞ!!」
「………極限ルール?」
「んだ、そりゃ?」
エンジンを組むと言う話に一番食らいついたのは獄寺。その次に了平。どうやら無理にでも野猿やγ達も引きづりこむつもりらしい。「キョウドウセンセンを行うのだからな、当然の流れだ!」と本人達に向かってガッツポーズを決めていた。ヴァリア―戦で生まれたあれ。紙面で見た事を私も一緒に出来ると聞いて、ちょっと武者震いが出た。
「じゃあ………」
「よし、皆の衆!行くぞ!」
「おう!」
「絶対二人を守る!そして過去へ帰ろう!」
『オォッ!!!』
不思議な事に、場の雰囲気はそれだけで士気が高まる結果となった。エンジンの意味の分からない野猿たちも、その行為から何か感じ取ったらしい。さっきよりも気持引き締まった表情をしているように感じる。
ユカは守るという言葉に何故かむずかゆく思いながらもその気持ちをありがたくうけ、一緒にエンジンへと加わった。
今思えば、これが開戦の合図だったのかもしれない。
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