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雲珠桜は夏に彩る
本当の自分02






ユカは少し表情を曇らせ、頭を押さえた。





「頭痛むのか」


「ちょっとだけ………」


「いつからだ」


「昼間………あの時ぐらいから」


「………幻覚にやられたか」





ズキン…………。
頭にジワリと頭痛が響く。必死に痛みを押さえこむように唇を押さえこんでいると、その顔がよほど辛そうに見えたのか。近くにいた野猿を始め、皆が私の安否を気にしだし始めた。
クロームがγの言葉に首を横に振る。





「幻覚は…………ないと思う。どんな風に痛むの?」


「なんか………、頭が痛くなってくって言うか」





頭の中の記憶が混同してしまって混乱したような感じ。そう言えば良いだろうか。自分でもよくわからない事を言葉にするという事は大変難しい事だが、敢えて例えてみるのなら………まるで今にも容量オーバーで爆発しそうな感覚だ。だから激しい痛みと共に天地が逆になるかのように頭がクラクラと揺れる感覚に陥る。
そして、本当のきっかけとなったのと言えば。





「皆の、血を見た時から…」


「は?余程血が衝撃的だった、とかか?」


「分からないけど…………でも大丈夫です。これくらいなら、我慢できる、から」





ありがとうございます。
私はそう言って、γの手の中にあった髪ゴムに手を伸ばした。こんな事、皆の怪我に比べたら大したことではない。皆、包帯で患部をぐるぐる巻きにしてでも、それでも足を踏ん張って頑張っているのだ。自分だけ、弱音を吐く訳にも甘える訳にもいかない。
そう思った。それは例え痛みが強くなって行こうとも同じことだ。

そう思って手に髪ゴムが手に触れた時だった。





「っ!?」


「あ………?」


「う………あっ」


「ユカちゃん!?」





ゴムを手にとったはずの私の手から、ゆっくりとゴムが地面に落ちていった。ゴムを持っていた手が震え、探るように頭に持っていく。

………何だ、この痛みは。

一気に情報が流れ込んでくるようなその痛みは、先ほどの頭痛の何倍もの衝撃を私に与えてくる。何が自分に起こっているのかもよく分からない。考える事も、ろくにできない。

ズキン………ズキンッ………。

ただただ、頭が痛むだけ。





「あ、あっ………!」


「ユカちゃん!」


「ユカさん!」


「ガキは大人しくしていろ!………どうした、ユカ!」


「うぁ………っあ、頭が…」





ユカの悲痛な悲鳴に、京子とハルが駆け寄ろうとするが、γがそれを許さない。ユカに問いかけるその姿からこそ、冷静を装っているようにも見えるが、やはり額に汗を浮かべていることから、相当焦っている事が窺える。




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あきゅろす。
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