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雲珠桜は夏に彩る
無慈悲な再会08







「終焉の時…………」


「なっ…………景色が回りだした?!」


「何が何だか分かりません!」


「天地が掴めん!!」




しかし状況は、そんなに安易な物ではなかった。





「無駄です。一度模様を見たものは目を瞑ろうとこの幻覚を破ることはできない。超直感ですら、彼を見つけることはできませんよ」


「そんな!」





髪が長くて奇抜な化粧を施した彼の言葉は、変な説得力があった。
皆が途端に足元に倒れ込み、必死に上下のバランスを取ろうとしていた。γやツナ達は宙に浮いているせいか、もっと掴みにくそうだった。だからだろうか。でもそうなると、ますますこちらに分が悪くなる。





「目が回るよ!」


「…………くっ」


「っ」





ユカと言えば、幻覚に掛かっていないとは言い難いがどうやら皆より軽度の症状らしい。景色が回ることはないし、せいぜい視界がぐにゃりと曲がるぐらい…………と言っても、ユカにとってはそれで十分だった。
どうやら、直前にブルーベルが言った「息を止める」を守った事が吉と出たらしい。もしかしたらこの幻覚は嗅覚とかも関係しているのかもしれない。
だが、どっちにしろ窮地には変わりはない。トリカブトが己から姿を眩ませていった。ユカにだってその姿は見えない。目を凝らしたって同じ事だった。

ユニが。誰もがその事を危惧した。γが傍目から見ても分かるくらいに、ユニを抱く手の力を強めた。…………そんな時だった。
少し私から離れた所で、いつもより大きく、声を張り上げている娘が居た。





「ボス!大空の娘の右側!」


「!」





ガキッ。

見ていて清々しいくらい、クロームの声に反応したツナが、γ達の右側に肘を入れ込む。クリティカルヒットをした。現れる赤い仮面に表情は勿論ないが、それでも意表をつく事が出来た事ぐらい分かる。





「何!?」


「下!ずっと下!」





ドンッ!!

トリカブトは次々と続く攻撃に、悲鳴を上げることもなく受け続ける。ツナもきっとトリカブトの姿は見えてはいないけれど、クロームの言葉を疑う事なく受け入れ攻撃を続ける。
………凄い。




「右!!」


「クロームさん!!あれは、」


「クロームの霧フクロウが形態変化したな」


「あ!!幻覚が解けていく!!」





クロームの方を見れば、彼女も私達と同じように空をみつめていた。たださっきと違うのは、目の周りに羽のついたレンズの様なものが装備されている事だろうか。きっとこのレンズなら、敵の姿が見えているに違いない。これなら心配はいらなそうだと思った。
きっとこれなら倒してくれる。流れもツナの方に来ていた。

そう思って周りをふと見渡せば、私は息を飲んだ。そこに見えたのは、先ほど私を救ってくれた野猿と言う人達が呻く姿。
そう言えばさっき、トリカブトに…………。





「!」


「ユカ!」





後ろで誰かが叫んだなんて関係が無い。私は姿を見るなり、すぐ近くに寄っていった。私達を守ってこんな怪我をしたんだ。放っておけるわけがない。







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