雲珠桜は夏に彩る 恐怖と温もりと01 ディーノは、しばらくはユカを京子達に任せてみようと思った。女同士だからこそ、思い出せることがあるのかもしれない。思い出せなくとも、緊張を解すきっかけぐらいにはなるはずだ。 そう思ったとき。 ユカの横に、小さな影が写った。 「おい、ユカ」 「え?」 「ここだ、ここ」 「あ、ほんと…………って、ええ?」 「リボーンくん?」 「げ…………」 リボーンがユカに話し掛けていた。 ディーノはリボーンの考えていることが分からない上、あまり良いことを言う所の想像もつかないので物凄く焦った。 時にとんでもないことをやらかすのがこのリボーンだ。 そうなる前にと制止の手をリボーンに伸ばしたディーノだったが、彼の制止は空しく、リボーンの眼光によって妨げられた。そのまま鋭い眼光を放つリボーンの視線は、ユカの方を向いた。 「ええ?これ、赤ちゃん……じゃないよね」 「失礼だな。れっきとした赤ん坊だぞ。二歳だ」 「嘘だ!本当の二歳児ってこんなに立ったりしゃべったりできないよ!」 「俺はそこいらの餓鬼とは違うんだ」 「…………いや、だって二歳って」 ユカはそう言って頭を抱え込む。 ユカの疑問はもっともだ。確かに常識的に考えてみれば、いくらアルコバレーノが最強の赤ん坊と言って…………いや、それでは説明になっていないか。最強と言っても所詮は赤ん坊だ。こんなこと、常識的に考えればあり得ない。なんだかこのリボーンが当たり前すぎて、そんな疑問ですら忘れかけていた。 「赤ん坊って言うか…………精神が大人?まるで探偵物のアニメの主人公みたい………」 「…………」 リボーンは何も答えなかった。 「そんなことはどうでもいい。それよりユカ。お前、覚えていることはなんだ?」 「覚えていること?」 「何でもいい。言ってみろ」 「そんなこと、急に言われたって…………」 「…………じゃあ、今から俺の言うことをYesかNoで答えろ」 リボーンはズイズイと言葉で押してくる。ユカはそんなリボーンの態度に戸惑った。 ここまで強引だと、どう受け答えすればいいのか困る。 「いいな?」 「は、はい…………」 赤ちゃん(仮)にここまで押されるなんて情けない。ユカはそう小さくため息をついた。 [*前へ][次へ#] |