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雲珠桜は夏に彩る
来たる、約束の日04







前が見えない………手が、縛られてる?
ユカは目隠しがされている状態で、今の強い風が吹き抜けるところに連れて来られていた。何でこんな状況になっているのかなんて自分には分からない。気付いたときには何でこんなことになっていた。
もしかしすると誘拐…………に、なるんだろうか?誘拐の定義にこれらのことが当てはまるのだとすれば、きっとそうなんだろう。




「(少し怖い…………かな)」




分からない、今の状況が。
21世紀の日本のど真ん中でこんなことになるなんて、思いもしなかった。ただ私は…………部活が終わってベットで寛いでいただけなはずなのに。外にさえいなかったはずなのに。それともこれは夢?いっそ誰か語りかけてくれないだろうか。状況だけでも分かれば全然違うのに。
そう思っていると、私の希望通りに男の人が話しかけてきた。





「お、ユカチャン目ぇ覚めた?どう、頭の調子は。順調かい?」


「え…………誰、ですか?」


「お、おっけおっけ。調子良いみたいだね」


「?」





どこか聞いたことのあるような声。声の調子からすれば多分、若い男の人なのだろう。今のところ、危害を加えてきそうな危ない感じはしない。





「あの」


「ん?どうした?頭グラングランする?」


「いや…………あの、ここどこですか?今私って…………」


「?ああ、そう言えばそうだよね。でも、今は言えないかな。何にもしないって約束するから、しばらくそのままでいてくれる?」


「え…………これって私、誘拐されて?」


「まあそうとも言うかもね」





大丈夫だから怖がらなくて良いよ。
男の人はそう言って、私の頭を撫でてきた。
何故だろう。首の辺りがやけにスースーする。かなり開放的になった感じだ。前から私はこの長さの髪だったはずなのに。長い髪をバッサリ切ってしまったときの感覚と似ている。





「白蘭様ぁ。奴らやっと来たみたいですぜ。待ちくたびれたぜ」


「ハハン。遂に、ですか。そちらの準備も万端なのでしょう?白蘭様」


「うん、そうだね。ほら、完璧に準備はできてるよ」


「………ハン、こんな少女に白蘭に最高の玩具を用意できるとは。人生皮肉なものです」


「…………?」


「にゅにゅー!こいつ弱そ〜。殺しちゃって良い?ビャクラン」


「だーめ。そっちの相手はもういるから」


「!?」





殺しちゃって?
ユカは今耳には言った言葉を疑った。
やはり私は誘拐されている?殺されてしまう?相手は…………暴力団とか?ふざけんな、私はなにもした覚えは無いぞ。
現実味の無い空間。ユカはいざ、そんな言葉を自分に向けられると、恐怖を覚えずにはいられなかった。





「…………あ。ほらー、ブルーベルのせいでユカチャン震えだしちゃった」


「に、にゅにゅ〜…………」





…………あれ、ちょっと待って。今ブルーベルって言った?

相変わらず目隠しはされたままなので俄然、私の周りの詳しいことは分からない。だが、ユカは恐怖に支配されていた思考を一旦落ち着かせた。
若い男の人は幼げの少女のことを『ブルーベル』と言った。そして複数いると思われるこの人たちは若い男の人を言い方は違えど、『びゃくらん』と呼んでいる。………あれ、私の頭が可笑しくなったのか。これではまるで、ここは某漫画の中の世界みたいだ。それともファンの集まり?
そう思っていると突如。腕を引かれる感覚が右手に走った。





「そろそろ時間だね。行こうか、ユカチャン」


「!?」





待て。大体なんでこの人たちは私の名を知っているんだ。






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あきゅろす。
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