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雲珠桜は夏に彩る
来たる、約束の日02







どう言うことだ。雲雀は転送システムから放たれる光に包まれる中、自分に問い掛けた。
自分のいない間に、一体ユカに何があった。十年後の自分が組織したという『風紀財団』。あそこならと思いユカを置いてきたんじゃないのか。…………何でこんな奴なんかの手元にユカが。





「…………っ」





…………まただ。また、自分は重要な時にその場に、ユカの傍に居てやることが出来なかった。雲雀は皆に悟られぬよう、奥の歯で歯軋りをし低い音を立てた。
あんなに心に強く、ユカが自分から離れないよう守って見せると誓ったのに。
こんなことになるのだったのならいっそ、置いていくような真似をせずに、無理矢理にでも連れていけば良かった。
こうなってしまった以上、どうしてもそう思わずにはいられなかった。





「…………すいません、雲雀さん。俺達が居たのに」


「弁解は良いよ。そんなもの聞きたくない」





そう言い放ってしまえばツナは口を開くことはできない。他の人も同様。
雲雀は自分の中にある苛つきとモヤモヤ、この気持ちと葛藤する。が、どうも晴れそうにない。だからその苛立ちの発端となっている白蘭に言葉を放った。





「君もだよ、白い頭。僕の許可なしで勝手に並盛を汚した挙げ句、ユカを連れ去るなんて許されるべきことじゃ無い。さっさと返して」


「ええ〜?ここじゃだーめ」


「…………煩い。それにそんな気味の悪くて趣味の悪い顔の機械だけ出さないで、本人が出て来れば?咬み殺してあげるよ」


「えー、ひどいなぁ」


「(雲雀さん、言ったぁ!!!?)」





気味の悪くて趣味の悪い機械。確かにこの超炎リング転送システムはそうだ。その通りだ。皆も少なからず思っていた。だが、それを突っ込むものは何故かいなかった。この機械の凄さに圧倒されたのもあるだろうが…………何故か言ったら白蘭の逆鱗に触れそうな気がして。しかしツナのそんな心配は杞憂だったようだ。白蘭は怒りの片鱗も見せずにいつものように目尻をあげて笑った。





「ま、そんなクールなところも雲雀クンの良いとこなんだろうけどね!さ。さっさとチョイスを始めようか」


「!待て、まだユカちゃんに会ってすら」


「それはこれからチョイスするところにいるから問題ないよ」


「!?」





そう言われ、出されたおびただしいカード達。まるで一枚一枚が何か意思を持っているように整然とならんでツナの周りを待っている。
白蘭はどうしても戦場の場にユカを連れていくらしい。あばよくは安全なところに避難させておこうと画策していたが、それも無駄になりそうだ。
ツナはこれから来る戦いに覚悟を決め額に炎を灯し、恐る恐る一枚、カードを引いた。




「お、フィールドのカードは『雷』だね」




引いたカードには、ランボの属性と同じ雷のマーク。…………雷のフィールドとは一体。




「じゃあ行こうか」





その言葉を聞いたが最後。皆は光の中で中に浮いた感覚を味わった。次の瞬間にはもう地面に落ちていて、宙に浮いている時間何てあっという間だった。
こんなにテレポーションとは呆気ないものかと思ったくらいだ。

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