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雲珠桜は夏に彩る
黒と緑に注意報03







「…………これは」




包帯をほどく度現れる赤い痣。すべての包帯を取り終わった頃には、その痣の全容がγと野猿に晒されていた。





「手の…………痕?


「こりゃ相当強い力で付けられたな。大きさと骨格から言って男だろうが…………」





最近つけられたにしてはやけに包帯が古い。この汚れかたは何度も何度も繰り返し使い回している証拠だ。と言うことはこの痣は何日も前からついているのか?

そこまで考えて見て、思い当たることはただ一つ。白蘭の存在だ。どうやらこの娘は自分が思っていたより厄介事を抱えているのだと窺える。





「そういやこいつ、ボンゴレ側の人間だったな…………」





きっと今までユカが無事なのは、周りにいるであろう騎士(ナイト)のお陰なのだろう。本当に大切にされているようだ。

ボンゴレには自分が戦った雲雀恭弥と獄寺隼人がいる。なんの因縁なんだろうか。少し前までは命を懸けた真剣勝負をした奴等に、しかも芳しくない成績を残しておいて、そいつらが大切にしているであろう女の身柄を保護している。本来なら殺してもおかしくはないはずなのに。

そんなことを考えていると、突如雲雀恭弥との戦闘シーンが頭に過った。





「…………そういや野猿。ボンゴレの雲雀恭弥、何か女の噂がなかったか?」


「雲雀恭弥ぁ?…………ああ、兄貴が戦った奴か。確か資料に、雲雀が女の尻懲りずに追いかけ回してるって聞いたことあるぜ」


「あいつがか?」


「兄貴ちゃんと資料読んどけよな」





γは野猿の情報に耳を疑った。
あの戦闘欲の塊のような奴が、一人の女に執着するような男には、少なくとも戦いの時には見えなかった。相手が余程の美形だったのだろうか。





「あ、ほら兄貴も聞いたことあんだろ?確かボンゴレに行方がわかんねえ奴がいるって。そいつが雲雀が追いかけてる女って噂は有名だぜ?」


「ああ、あの噂…………」


「確かその女、ジャッポネーゼで黒髪黒目。背が日本人にしては高めで引っ越してきて一年も経ってなかったや…………つ」


「?どうした、野猿…………」





野猿の口が自然と閉じる。視線は隣で寄り掛かっている奴に釘付けになっていて。
…………γもそこで気づいた。




「…………まさかその女って」


「…………こいつ、か?」





この、敵陣で無邪気に寝ているユカが、雲雀の…………女?

二人はしばらく、開いた口が塞がらなかった。



…………もし、本当にユカが雲雀の女と言うのなら。


世界はなんと複雑に絡み合っているのだろう。

世界はどれだけ狭いのだろう。

γはこの偶然が自然に起こったものと信じ込むことが、なかなか出来なかった。






一体この事が何を意味するのか。








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