雲珠桜は夏に彩る 逃れる先は、黒08 「………… OK, OK(…………分かった、分かったよ)」 「POO... Mantenere, tenendo fuori cosi tanti congegni alla fine?!(ちっ…………こんだけ粘っておいて、結局人違いかよ)」 「Ah, mi ha deluso(ハッ、残念だったな)」 チッと舌打ちをうち、回れ右をしていく男達。どういうわけか諦めてくれたようだ。 男の背が見えなくなって、ユカはやっと安心した。膝が笑って自分の体重が支えられなくなり、崩れて床に座り込む。 「おい」 「…………助けて、くれたの?」 「ハア?何だよ今更!」 「だって…っていうか!何さっきの?!」 「さっきの?」 めんどくさい。そういうように野猿は首を傾げる。まさか忘れたとは言わせないぞ。 「だから…………その、いきなりあんなこと…………」 「!っあ、あれはしょうがねえだろ!証明しろって言われたら…………」 「説明?」 「お前がオイラの女ってことを証明………」 「女?!」 「あ」 しまった、と口を抑える野猿。口は災いの元とはまさにこれのことだ。聞き捨てならないその言葉に、私は抜けた腰のまま野猿に詰め寄る。勿論迫力はない。 誰が女だ。いつ、誰が誰の女になった。 「ちょっと!!」 「あーうるせえ!それが一番手っ取り早かったんだよ!」 「?!」 「いいじゃねえか、あんくらいっ」 「あ、あんく…………!?」 ユカはその言葉に絶句する。あれくらいと言われても、私にとってはあれくらいなんてもんじゃない。たださえびっくりしたというのにその上、真っ赤になった姿をあの人たちに見せつけられたのだ。正直赤い顔が収まった今でもそれを思い出すと、どこかの穴に潜ってしまいたくなる。 なのになんでこの男はこんなに平然としているのか。私がおかしいのか。それとも国柄なのか。そう思って野猿に目を向けると。 「オイラだって好きでやった訳じゃねえんだからな!勘違いすんなっ」 「…………」 なんと野猿は、頬を熟れた林檎のように真っ赤に染めて、私に顔を見られないよう顔を背けていた。その姿に私はさらに絶句。 いくらお国柄でイタリア人は手が早いって言っても、ちゃんと例外が居るんだ。 よくよく考えてみれば、こんなことをさせなければいけなくなったのは、私が野猿に助けを求めたからだ。そう思ってみるとなんとなく申し訳なくなって。 「その…………助けてくれてありがと」 「…………おう」 私が素直にお礼を言うと、野猿は更に顔を上気させた。 [*前へ][次へ#] |