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雲珠桜は夏に彩る
崩壊音と言う名の、足音09








ボイコット事件から、一日が経った。結局ツナ達の意見と京子達の意見は対立し、その日の夕食は棚にあった非常食用のカップラーメン。作る時間も体力も残ってなかった。
男たちの間ではやはり、京子達にこの戦いの事を言うことはない。そう言うことで意見はまとまっていた。が、事態は予想以上に深刻だった。修業に加え、家事を皆で負担する。それは容易ではない。

洗濯をしようと思えば、洗濯機を泡で溢れかえす。

料理をしようと思えば、火は吹き出て食材は黒炭へと化する。

それも当然、ここに集まっているのは家事どころか手伝いも包丁さえも握った事のないような奴らの集まり。しかも気持ちは、約一週間先の戦いの方に向いている。そんな状態で家事との両立など、出来るはずもなかった。





「「「「…はあ」」」」






*******






「…………本当に、これで良かったのかな」


「うう…京子ちゃん、そんなこと言わないで下さいよ…………」





ところ変わって浴場。たっぷりと張られたお湯の中に身体をゆっくりと沈めながら、ボイコットと言う行動に出た二人は、今までの行為を振り返っていた。

…………二人ももはや、ただ事じゃない事がこの未来で起きていることぐらい、分かっている。
こっち(未来)に来てから危ない目にだってあった。京子に至っては、下手してツナが見つける事が遅くなっていたりしたら…………最悪な事態になっていたかもしれない。
それからはいつもの三人は、毎日修業と言って毎日疲れ果てて怪我だらけになって。この前の事だってそうだ。

その日が過去に帰れるかどうかの大事な日。そう聞いていた。皆が真剣な面持ちになって出掛けて行くから、それ以上何も知らされなくてとても怖かった。…………皆が帰ってくるまで、安心できなかった。
そして怪我だらけの姿の皆を見て、安心するとともに恐ろしくなった。

一体何をすれば、そんな事になるのか。

きっと、私達の想像の上を行くのだろう。だから、皆教えてくれない。





「あなた達。後悔しているの?」





ビアンキが、窺うようにこちらを見る。…………ここでうんと首を縦に振ればどうなるのだろう?





「…………ハル達だって、今どんな状況か知らされていなくても、どんなに大変な事が起こっているか分からなくても、事が重要な事になっているのは分かっているつもりです」


「…………そうよね」


「ビアンキさんから言ってくれるつもりは…………無いんですよね」


「ええ。残念だけど」





ビアンキは眉尻を下げて、顔を伏せる。返事は予想通りだったのでショックはない。





「あ、良いんです」


「…………何故?あなた達、真実を知りたくてこんな事してるんでしょう?」


「はい。…………でも、それはツナさん達本人から聞きたいんです。ユカさんに、そう教えてもらいました。…………ね、京子ちゃん?」


「うん」


「!」





ユカの名を出すと、ビアンキは驚いたように目を見開かせた。
京子達も、ビアンキやフウ太が日々駆けずり回ってユカの行方を追っている事は知っている。





「ユカが?」


「ええ。私達、一回ユカちゃんに本当の事を教えてもらおうと、詰め寄った事があるんです。ユカちゃんは本当の事知っているみたいだったから」


「どうだったの?」


「どうだったも何も…………。でも、こう言われました。『私で良いのか』って」


「?」


「『自分は知ってるだけで関わっているわけじゃない。本当に関係あるのはツナ達だ。本人から聞くべきじゃないのか』って」


「あれはガ―ン!ってきたよね!」


「そうですね!まるで石をぶつけられたような衝撃でした!」


「ユカが…………そんな事を」





この出来事が終われば。あの、皆で怪我だらけになって帰って来た日。あれが終われば無事、帰れると思っていた。だから、余計な詮索はよそう。そう思っていた。





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あきゅろす。
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