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雲珠桜は夏に彩る
非常時での日常13







「…………!そうだ、ユカさん!この隣、雲雀さんの部屋なんですよね?」


「?うん。正確には十年後の、だけど」


「覗いてみません?」


「え」


「わあ、それ面白そう!」


「!?何いってんの!」





そんなことをしたら…………ましてや知られたら、咬み殺される!

思い浮かぶのはとても不機嫌な雲雀さんの顔。確かに入るなとは言われてはいないが、勝手に入りでもすれば大目玉を食らうこと間違いなしだ。
しかも、京子ちゃん達をこちらで預かっている以上、この二人、特に京子ちゃんなんかを怪我させてみろ。了平がすっ飛んできて暴れたあげくに叫びまくるぞ。

………それを見た雲雀さんは更に暴れそう。

どう考えたって悪い方向にしか広がらない想像。それだけは阻止せねば、と必死に説得を試みるが…………虚しいかな、時すでに遅し。二人とも襖に手をかけていた。





「二人とも!」


「おお…………広いわりには物を全く置いていないんですね」


「うん。でもなんかすごいね!」


「本当です!…………って、ギャ!!」


「あ…………」


「?何やってんの、早く閉めた方が………」


「早く閉めた方が、何だって?」


「…………え」





はしゃいだ様子で覗き込んだ二人を止めようと近くに寄る私。しかしどうしたことか。二人の顔から一気に血の気が引いていった。
奥の部屋から、嫌に聞きなれた声が聞こえ私も血の気が引いていく。

…………そんなバナナ。





「ふーん。人の居ない間に盗み見かい?」


「な、な、何で…………もう行ったんじゃ」


「ちょっと忘れ物を取りに、ね」





それとも戻ってきちゃ悪かったかい?

そう言って笑う雲雀さん。滅多に浮かべないその笑みを京子ちゃん達に向ければ、二人は本能で私の後ろに物凄い勢いで隠れた。

…………何てこった。私の逃げ道が無いじゃないか。

自然と笑顔が顔に張り付く。笑って誤魔化せれるのならば世話はない。





「そこの二人は何で隠れているんだい?」


「そ、そうだよ!(これじゃあ私が危険じゃん!)」


「え…………っと。アハハ…………?(だってユカさん!ここが一番安全何です!)」


「(ハア?何で!)」


「(愛のパワーです!)」


「あ…………おじゃましてます?」


「「(京子ちゃん、そっちですか!?)」」





一斉に京子ちゃんの方を振り向く私とハル。流石にあの京子ちゃんも冷や汗を掻いている。いくら天然でも状況を分かっているのだろう。

勝手に人の部屋を覗いてはいけません。でないとこうなります!

雲雀さんに見つめられ(と言うか睨まれ?)冷や汗を掻く私達。それを見た雲雀さんはハア、と溜め息を一つ漏らした。
言っておくが雲雀さん。私はちゃんと止めたぞ。




「…………次は無いから」


「え」


「分かったら返事」


「「「はい、すいませんでした!」」」


「まあ、ユカは別だけどね」





見られて困るもの、置いてない筈だし。
そう言って雲雀さんは踵を返し、部屋を出ていった。




「い、いってらっしゃい…………」




その背中に私は、小さく呟いた。








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あきゅろす。
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