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雲珠桜は夏に彩る
残された者達09








雲雀side







静まり返る廊下……。

先程まで大声ではしゃいでいた女子の集団も、悪ふざけしていた男子も、大声で説教を垂らし込んでいた先生でさえ、その廊下は口を開くのをやめる。
用がない者は即座にその廊下から立ち退き、用があってどうしても廊下を通る者は足音でさえ押し殺すかのように歩き、その廊下から逃れられるとほっと息をつく。









近付かない




騒がない





関わらない








それはこの中学校では暗黙の了解の様なものだった。



そんなに皆が恐れ、畏れ、怖れる廊下にたたずんでいる部屋……応接室からは、椅子のギイ……ギイ……の音が鳴り響く。
それが余計に生徒達の恐怖を誘うのだった。











「ハア……」



いつもは正面から姿勢よく座っている筈なのに、今日は椅子をギイ……ギイ……と音をならしながら動かしている。そんなことにまで気を回す余裕なんてない。
応接室には椅子の音以外は自分の呼吸しか聞こえず、外を見てもあまり群れている様子はない。この時間はまさに自分にとって至福の時間になるはずだった。









……手元の書類を見るまでは。





応接室にただ一人居座る存在……雲雀恭弥は再び手元の書類に目線を落とす。




「また……か」










『2-A 山本武 野球部所属 最近の行動の変化は特になし 友好関係も良好。備考、特になし』


『2-A 笹川京子 部活無所属 最近の行動の変化は特になし 友好関係も良好。備考、特になし』



そう書かれてある書類の左上には顔写真もしっかりあった。




自分が持っている書類には似たような文字の報告がずらずらと並んでいる。最近、行方不明となっている者達の調査結果だ。
このような書類が全部で七枚。ここの生徒だけではなく、並森全体で消えていったものたちのまである。なのに手がかりと言う手掛かりはなにもない。
……今後また、このような書類が増えるかもしれなかった。






ふと窓に目を向ける。
今、窓からみる一見平和に見えるこの光景。
それは自分にとって偽りの平和に等しかった。
……何も手がかりが掴めずどんどん人が消えていく。並盛の秩序が乱される。生徒達も今では次々と人が消えていくことを怖れ、生徒を中心に家から出なくなる事が多くなってきているらしい。学校へ行く事ですら渋る親がいるぐらいだ。
そして最近では町全体の活気も少しずつ落ちていっている。








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あきゅろす。
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