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子供の可愛さ無限大!02





おかしい…………なにかがおかしい。


「………おねえちゃん?どうかしたの?」
「…………え?」
「なんかな〜、かおがこうなってるぜ!」
「……マジか」

武くんは頑張って眉間にぐぐーっとシワを寄せる。武くんだから可愛いことになっているが私がやったら凄いことに…………いや、考えるのはよそう。

「あはは、ごめんね。なんか考え事しててさ」
「むずかしいこと?」
「うん…………まあそうだね」

軽くツー君に微笑む。


さっきから、ずっと考えていた。
私が過去に…………いやツナ達と会ってから、既に五分経っているんじゃないかって。
未来の十年バズーカーは効果が5分。このバズーカーも5分と決まったわけではないが…………やはり不安になる。このまま元に戻れなかったらどうなってしまうのだろう?
私の頬に一滴、冷たいものが流れた。

「あ、並盛商店街…………」
「ここ、ぼくのいえのちかくだ!」
「おれんちもちかいぜ!」

前方には、私の知っている光景とさほど変わらない並盛商店街があった。
ツー君もやっと知ってるところにこれたお陰か、さっきとのテンションが違う。

「家、ここからなら場所わかるの?」
「うん!よくね、おかあさんといっしょにくるの!」
「へえ、良いね」
「おれんちな!『竹寿司』っていうすしやなんだ!うまいんだぜ!」
「お寿司やさんかぁ。それも良いね」

二人は楽しそうに自分の家の事を話してくれる。大抵の事は知っていたが、幼い二人が話してくれる姿は心をほっとさせるものがある。
だから私はよく前を見ていなかった…………。

「ふぎゃっ!」
「うっ!?」

突如、腹部に思いにもよらない衝撃が走る。その衝撃で思わずツー君を落としそうになるが…………ツー君の「うわっ!?」って声で踏ん張った。そしてなんとか持ちこたえる。

「っと…………ツー君大丈夫?」
「う、うん」
「武くんは?」
「だいじょうぶ」
「良かった。…にしても何が…………」

ぶつかったのだろう?
視線をそのまま下げると、銀髪が見えた。丁度その頭がお腹のところにあるから間違いない。

「子供…………?」

私のお腹の近くでううっと唸る子供。そして急にガバッと顔を挙げた。

「いってーな、どこみてあるいてんだよ!」
「前」
「っ!?」

顔を挙げた子供は鼻を押さえて抗議してきた。当たってきたのはそっちだろうと癪に触れた所もあるが、子供相手に怒鳴るのもしょうがない。私は冷静に(でも大人げなく)答えた。
案の定、私の返事になんと答えればいいか分からない様子。顔を真っ赤にしてこっちを睨んできた。

…………この頃から目付き悪いんだね、獄寺。


そう。この態度の悪い子供はあの、獄寺隼人だった。何故か正装のような格好をしてる。
獄寺は後ろからさらに聞こえる声ではっと我に返った。

「坊っちゃんっ!」
「何処ですか!?」
「っ!?」

その声に身を固くする。そしてあっという間に私の後ろの物陰に器用に隠れた。
そのあとすぐにスーツを着こなしたごっついおっさんたちが駆けてくる。

「っ!?おい、女!」
「は………はい?」
「こっちにこれくらいの銀髪の少年が来なかったか!?」
「隠したら承知しねえ!」

一人の男は私のお腹ら辺に手を指し示し、もう一人はものすごい怖い勢いで寄ってくる。
後ろのツー君はもう涙目だ。武くんだって不安そうに私に身を寄せる。
多分この人たちはマフィア…………正直怖い。けど、

「お…………男の子なら、向こうの方に凄い勢いで駆けていきました」

私は必死に獄寺の隠れた方向を見ないようにして、私達が来た方向を指差した。

「…………そうか!すまなかったな」
「これ、ありがたく受け取っておけ」
「えっ?」

男達は急に私の武くんと繋いでいた手を離したかと思うと、何やら私にくしゃっと音を立てるものを握らせて、私の指し示した方向へ走り去っていった。私達三人はそれをポカーン…………と見つめる。
渡されたものを見ると…………

「一万円だ…………」

くしゃくしゃとなった一万円札が私にこんにちはと言っていた。
…………ポンと出てくるのが一万円札ですか。流石マフィア。

私はハア、とため息をつく。振り向いて物陰の獄寺に話しかけた。

「取り敢えず………出ておいで?もう行ったから」
「…………なんでかばった」

警戒心だけは一人前。

「おっさんより子供の味方の方がカッコいいでしょ」

そう言って私はニコッと笑った。
獄寺は何故か照れたような顔をして、ふいっと横を向いた。

「…………おまえ、へんなやつ」
「変な奴で結構。…………このお金本当にもらっちゃっていいの?」
「…………べつにいい。あいつらがかってにやったことだ」
「よし、じゃあこれでアイスでも食べよう!」
「!?」
「やったあ!」
「おれ、バニラがいいのな!」
「おっ、スタンダードなところをいくねー」
「…………おれも?」
「勿論。っていうかもともとあんたんちの金なんだから君もに決まってるでしょ?」

ほら、行こう?

両手が塞がっていたので手を取ることはできなかったが、私は渋っている獄寺に一緒に来るように促す。それでも何故か、一歩踏み出そうとはしない。

「あ、今更知らない人に着いていっちゃいけないとか?」
「べ、べつにそんなわけじゃ…………」
「じゃあ行こう!」
「ちょっと…………まってっ」

私が元気よく武くんの手を引いてツー君を担ぎ直す。すると直ぐに獄寺(ごっきゅんに変更)も、恐る恐る武くんとは反対側の私の隣につく。
私達の向かう先は勿論アイス。


待ってろよ、アイス達!!



****



商店街を四人、子供と女子高校生が横にならんで歩いている。皆の手にはソフトクリームが握られていた。
そこに大人の姿がないのでかなり目立つが、笑顔で歩いている姿は物凄くほほえましかった。

アイスを持っていると言うことで、ツナは頑張って私の背から降りて歩いている。

「でよ〜、おれがなんて言
いってもみんなきいてくんねえんだ…………」
「そりゃまた…………その年で苦労してるねぇ」

私はといえば、子供達の笑顔を肴にアイスを頬張りながらごっきゅんの結構真面目な相談を受けていた。
普段イタリアにいるのに並盛に来たのはピアノのリサイタルのため。そのお陰で子供に似合わぬ様な正装をし、そのせいで姉のポイズンクッキングの賜物であるクッキー地獄から逃げてきたのだとか。

「誰もそのクッキーに気づいてないの?」

ソフトクリームを一口頬張る。口のなかにソフトクリームならではの冷たさと滑らかさ。ミルクの濃厚な味が口一杯に広がった。

「………だれかにいってもしんじてくれねえし、たべさせようにも『お嬢様が折角坊っちゃんのために作られたもの。使用人ごときが貰うわけにはいきません!』とかなんとかいって…………」
「食べてくれないわけね…………」
「うん…………」

幼児期の獄寺もなかなか苦労している。
相談を聞いていて切実にそう思った。

「取り敢えず食べてくれればいいんでしょ?」
「まあ…………うん」
「じゃあ…………子供のかわいさを武器にして『皆でわけたほうが美味しいから!』って言って食べてもらえば?」
「そんな…………」
「意外といけるかもよ?」
「ひとごとだとおもって…………」

正直他人事です。はい。

横でため息をつくごっきゅん。この頃の眉間のシワは出来てないみたいだから、きっとこのあとに苦労が増えていくのだろう。そして短気に…………。

「あっ。おかあさんだぁ!」
「おっ、とうちゃんもいる!」

二人が元気よく前方に指を指す。

「げっ…………あいつらもいる…………」

そしてさらにその後ろには、かなり取り乱し服装も髪もよれよれとなったスーツの男達が。

「皆お迎え来ちゃったね」
「!おねえちゃんはここでおわかれ…………?」

親の再会に喜んでいる子とそうでない子。どっちであれ良かったね、と言う意味で皆の頭を撫でていたらツー君が不意にこちらを向いた。

「えっ…………うーん。まあそうかな」
「なあなあねえちゃん。おれんちによっていってくれよ!すしおいしいから!」
「ええ、おねえちゃんまだいっしょにいようよ!」
「…………おれ、まだかえりたくない」
「皆…………」

必死に私を引き留めてくれる皆。逃げないようにか私の手だったり服だったりと至るところを掴んでくれてる。
そんなことをしたら離れたくなくなるじゃないか。
私は三人を一気に抱き抱える。

…………皆ふにふにだ。

「…………ありがとう。とっても嬉しいけどさ、やっぱりお母さん達が心配してるよ?」
「うう…………おねえちゃん…………」
「ほら、お母さん達が手を降ってくれてるじゃない。お姉ちゃんもそろそろ帰らなきゃ行けないしさ」

私は困ったように皆に微笑む。私はいつ戻れるかわかんないけどやはりここはきっちりと帰さなければ。

「かえるって…………どこに?」
「?」

ツー君が大きな目をぱちくりしながら首をかしげた。

「おねえちゃんまほうつかいなんでしょ?どこかえるの?」
「まほうつかい…………なのか?」
「あ、おれもしりたい!」

上からツー君、ごっきゅん、武くん。皆大きな頭を精一杯傾けている。
…………魔法使いって、どこに帰るんだろう?


「あ、わかった!おかしのいえでしょ!」
「えっ?…………ああ、お菓子の家、良いねえ」
「みてみたい!」
「ほんとうにあるのか、そんないえ…………」

勝手に想像を膨らませる子供達。お菓子の家と出てくる辺り可愛いのだが、みせるとなると…………。

そもそも私、家持ってないし。

「えっとね。お姉ちゃん、返るときはいつもこう…………ドロン、て消えちゃうからな〜」
「え、きえちゃうの!?」

更に目を輝かせる少年ども。ついでに言うなた手を組んでドロンと消えるのは忍者だ。魔法使いではない。

「そうこうy『バンッ!!』…………」








「「「き、消えたああああ!!!!」」」

突如、三人の目の前で煙が広がる。場所が開けたところだったので直ぐに視界はよくなった…………が、目の前にいたはずのユカの姿はもうなかった。

「す、すごいね!ほんとうにおねえちゃんきえちゃった!」
「あいつ、ほんとうにまほうつかいだったんだ…………」
「スッゲーのな!」

そのあと子供達はしばらく興奮して、今起こったことについて話した。ここが商店街のど真ん中だろうが知ったこっちゃない。
そして…………直ぐに現れた親に怒られるまで、その興奮は覚めなかった。



****


「…………ちゃ…………」

声が聞こえる…………。
その声は必死に私の声を呼んでいて…………ってあれ、何で私呼ばれてるんだろう?

「…………ちゃん」

だんだん声が大きくなる。
そもそも何で私寝てるの?

「ユカちゃん!」
「ん…………ツー君、武くん、ごっきゅん…………?」

徐々に開けていく視界…………最初に目に入ったのは天井ではなく、あの三人だった。

「へ?」
「は?」
「ああ!?誰がごっきゅんだっ」
「………なんだごめん。何でもない」

完全に開けた視界。皆は私の回りを囲むように座っていた。
私はゆっくりと起き上がる。…………まるで夢の中にずっといた気分だ。

「よっ、ユカ。目覚めたか」
「リボーン」
「どうだった?過去は」
「えーっとね…………」

ぴょこっと私膝の上に乗るリボーン。そもそもこんな目に遭ったのは他ならぬこいつのせいなのだか…………不思議と怒りは沸いてこない。その様子だと私もすっかりこういう状況に慣れてしまった部分もあるのだろう。
私は回りにいる三人をちらっと見る。

「正直…………あの子達見たあとにこっち見るのは…………残念…………かな?特に獄寺」
「ハア?」
「昔はあんなにかわいかったのにねえ」

だってあれだよ?アイスで物凄く笑顔になって、眉間いシワも寄って無いんだよ?ちょっと生意気だけど素直なんだよ?
そう力説すると、リボーンは口角をあげてニコッと笑った。

「そうか。それは良かったな」
「うん。結構楽しかった!」
「やりたければまた、いつでもしてやるぞ?」
「いえ、もう結構です」

カチャっと音がする。この金属の刷れるおとは…………私が過去に行く前に聞いたものと同じだ。私はそれを打たせないように手で妨げる。
にしてもなにか忘れてるような…………?

「ああっ、雲雀さんの子供姿、見てない!?」
「んじゃもういっちょいっとくか」
「!?ぎゃあああ!」



バフンッ…………!



「ちょ、リボーン!?」


そして私は再び、本日二度目のタイムトラベルを経験したのであった。ちゃんちゃん。



(…………もしかして雲雀さん?)
(きみ、だれ?)
(…………!!!!)


****



おまけ



「そう言えば俺、丁度四歳ぐらいの時にさ…………」
「?」

ユカが再び過去へ誘って数分後…………。
ツナ達はユカの居なくなった部屋を見回しながら言葉を繋げた。

「一度、犬に追いかけられて一人で遠くにまで行っちゃってさ。迷子になったことがあるんだ」
「十代目がですか?」
「うん。そんでその時丁度女の人に助けてもらったことがあるんだ」
「お、そう言えば…………俺もちっちゃい頃、俺より小さい奴が一人で迷子になってるのを見つけたことがあるんだ。俺たちじゃどうしようもなくて困ってるときに女の人が助けてくれたな…………」

二人は過去を懐かしむように天井をあおぐ。

「そう言えば俺も…………」
「獄寺君も何かあるの?」
「はい。そういやガキの頃、一度用があって並盛に来たことがあったんすよ。そんとき俺が家の用事を逃げ出して追っ手から逃げて…………」
「獄寺んちってなんか凄いのな」
「う、うん…………(追っ手って;;;)」
「そうっすか?それでそんとき見ず知らずの女から助けてもらったな、と」

もう顔も覚えてないっすけどね。
そういうと獄寺はちょっと寂しそうな顔をした。

「へえ、皆そうなんだ。俺、そのあとにアイスおごってもらってさ。めっちゃくちゃ旨かったな」
「俺も!」
「俺もです!」
「あはは、結構皆同じだね」

そう言って三人は笑った。
やはり子供を釣るのはアイスなのだろうか?

「多分俺…………あれが初恋だったかも」
「今思い返せば…………そうなのな!」
「…………そうかもしれないっす」


そしてツナが何でこんなこと今思い出してるんだろう?と首をかしげた。


その横ではリボーンが、ボルサリーノをこれでもかってくらい下げた。…………隙間から見える口角が物凄く上がっていたとか居なかったとか。

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あきゅろす。
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