しろの小説(長編倉庫)
家路
待たせていたタクシーに乗り万事屋からそこそこ近い場所に降りると2人は万事屋までの道のりを散歩がてら歩いていた。
「今日は…さんきゅ」
「たまには素直になることもあるんだな」
「人が素直になってる時ぐらいテメーも素直に礼の言葉受けとけよ」
めずらしく素直な銀時が新鮮で思わず茶化すと銀時は少しふてくされたように言い返す。
「あぁ、俺の方こそ今日はいい一日だったぜ」
土方は手を銀時の腰に回し、反対側の指で唇をなぞりながら言う。
「…っ、だからテメーは中二病だって言われんの。もしくはエロオヤジだな」
銀時は土方の手を払い、てくてくと歩きだす。
「銀時」
土方に呼ばれ振り返ると銀時の手を取り小さな紙袋を持たせた。紙袋の中を見ると中には携帯電話が入っていた。
「土方、コレ…」
「今回みてぇに連絡付かなかったら困るしよ。何かあったら迷わずそれで俺のとこにかけてこい」
「そうじゃなくて…コレ、どこに隠してたんだ?」
「そこかいィィィ!!」
遠慮すんなと言う土方に対して銀時はそれよりもこの紙袋を今まで一体どこに隠し持っていたかの方が気になっていた。
「いや、だってテメーこんな紙袋持ってたか?」
土方が思わずツッこむと銀時は少し怪訝そうに『誰でも疑問に思うだろコレ』と反論する。
「そこはまぁ、大人の事情というかだな…テンコー直伝の物体転移術だとでも思っとけ」
「誰だよテンコーって。んなモンで移動するのは生徒だけだろ」
「転校じゃねェェェ!…ったく、テメー分かっててわざと惚けてんだろ。まぁ、さすがにテンコーは冗談だけどよ。……本当は…指輪とかも考えたんだけどよ、テメー、そーゆーの付けそうにねーし、ネックレスに通してもその開いた胸元じゃ目立っちまうから嫌がるかと思ってな…」
土方は少し苦笑いをしながら言った。
「別に嫌じゃねーよ。テメーが俺の為に色々悩んで選んでくれたモン、喜ぶだろうとしてくれること、その気持ち全部が俺ァ嬉しいんだからよ。迷惑だなんて思わねぇよ」
銀時はそこまで言うと、うってかわって軽く冗談混じりに付け足した。
「だから来年のお祝いもよろしく頼むぜ♪ギネス記録に残るような巨大パフェとかでも銀サン大歓迎〜♪」
「勝手に言ってろ」
土方は銀時の頭をくしゃくしゃと軽く撫でると銀時を追い抜き少し前を歩いた。
「じゃあな」
そして万事屋まであと十数メートルのところまで銀時を送り届け、土方は踵を返し、屯所の方へと歩きだす。
「あっ、土方っ」
何かを思い出したかのように引き止める銀時に、土方は一体なんだろうかと足を止め振り返ると銀時は土方の額へと軽くキスをした。
「じゃーなー、おやすみー」
銀時は2階の万事屋の玄関前まで一気に駆け上がると土方に向かって手をひらひらと振る。
『これじゃあいったい誰が誰を喜ばせる為の日か分からねーな』と土方は耳まで熱くなるのを感じ、銀時は『今日は最高の一日だったぜ。ありがとうよ、土方』と幸せを噛み締めてから我が家の戸に手を掛けた。
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