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海賊と少女のカリブ海
第9金貨 「彼女の温もり 2」
〜キャンサー Side〜

それから数日後、ウチは無事にポート・ロイヤルの港へ戻ってくることができた。

「さて!これからはまた美味い料理を作んなきゃな!」

そう気持ちを切り替えて、コックの服装に着替えたそのとき。

メイド「キャンサー、海兵さんがあなたを呼んでるわよ。」

「ウチを?」

なんだろうと思いながら、ウチは屋敷の玄関へ向かった。

「なんでしょう?」

海兵「あなたがキャンサーさん?」

「そうだけど・・・。」

海兵「一人の海賊があなたに会いたいと騒いでおりまして・・・。」

ウチは一瞬でわかった、ウチに会いたいと騒ぐ海賊は一人しかいない。

「わかりました、すぐ行きます。」

ウチは迎えにきた海兵と共に馬車に乗り、海賊たちを収監する監獄へ向かった。

〜牢屋〜

ラゲ「・・・・キャンサー!」

ウチを見つけるなり、ラゲッティはウチの名前を呼んだ。

「やぁラゲッティ、なにかご用?」

ラゲ「捕まっちゃったから・・・オレたち、もう会えないだろ、だから・・・。」

そう言うと、ラゲッティは海兵がいないのを確認して、懐からあるものを取り出した。

「それは?」

それは真っ赤に輝くルビーのネックレスだった。

ラゲ「あの島にあったヤツ、これやるよ、船長に見つからないよう必死に隠したんだぜ?」

「でも、なんでウチに・・・。」

ラゲ「オレらはたぶん吊るし首だろうからさ、なにもなかったらアンタ忘れちゃうだろ?オレのこと。」

彼は切なげに笑った。

「・・・覚えててほしい?」

ラゲ「そりゃ・・・・。」

彼はコクンと頷いた。

「クス・・・わかった、これは受け取っておくよ、安心しな、アンタのことは絶対忘れないから。」

そう言ってウチはルビーのネックレスを受け取った。

「ラゲッティ・・・お前と一緒にいた時間、楽しかったよ(微笑)」

そして、ラゲッティの手をとり、ウチは彼の指先にキスを落として牢獄をあとにした。

〜ラゲッティ Side〜

ラゲ「・・・・・・・!」

オレは少しの間、時を忘れた、なぜなら彼女が去り際に、オレの指先にキスをしていったからだ。

ピン「おいラゲッティ!なんで告白しなかったんだ!チャンスだったじゃねーか!」

ラゲ「オレたちあとは吊るされて終わりだぜ?告白してもしOKだったとしても、すぐ別れなきゃいけなくなる、そんなのかわいそうだろ。」

ピン「・・・・お前は、それでいいのか?」

ラゲ「いいんだ、それに最後の最後でいい思い出ができたから。」

オレはキスされた指先を眺めた。

ピン「よかったな、呪いが解けたあとでよ。」

ラゲ「おう、もうこの手は洗えねェや。」

呪いが解けた最後の最後、10年ぶりに人の温もりを感じることができた、オレはそれだけでもう充分だった、これで吊るし首にされても未練はないだろう。
もし生まれ変わるなら、今度は彼女のとなりで胸を張れる男になりたい。

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