La persone adorata 第10章 「縁談阻止大作戦 2」 〜メルサ Sido〜 翌日、ついに縁談の日がきた。 アン「支度はできたか、行くぞ。」 「はい。」 アル「姉上、シャプールたちに会わなくてよろしいのですか?」 アルスラーンが心配そうに聞いてきた。 「いいのだ、アルスラーン、では行ってくる」 不安そうなアルスラーンを残し、ウチは城を出た。 〜・〜・〜・〜 ガナ「ははは!いやいや、あのときは鎧を着ておったが、今日のようにドレスを着ていると、その美貌にさらに美しさが足されるのぉ!」 「お褒め預かり、光栄です。」 ガナ「そうだ、アンドラゴラス王、ここの料理は・・・。」 “誰の言葉も入ってこぬ、不思議なことだ。” 結局、シャプールとはあのままだ、最後の最後まで、この気持ちがなんなのかわからなかった。 使用人「葡萄酒でございます。」 「あ、あぁ、ありがとうございます。」 考えごとをしていて、使用人に気が付かなかった。 ガナ「この葡萄酒は特別うまい!」 使用人「そうでしょう?私のオススメでございます。」 ガナ「お主は舌がよいのだな。」 使用人「酒が好物ですので、どうぞごゆっくり。」 使用人は下がった。 ガナ「今の使用人は初めて見たが、なかなか肝が据わっておった。」 「ここは別荘だと聞いておりますが。」 ガナ「あまり来ないゆえ、来る度に使用人が変わっておるのだ。」 “今の使用人、どことなく奴に似ていたな。” 大剣を振り回す、片目のあの男に。 ガナ「・・・・メルサ、今日は体の具合がよくないのか?」 「いえ、決してそんなことは。」 ガナ「前に会ったときは、そんな感じではなかった、なにか思い悩んでおるのか?」 「おやさしいのですね、ですが、なにも心配はいりませぬ。」 あまり会話をしたくないゆえ、なんとか終わらせようと試みる。 ガナ「お主はそんな目ではなかった、もっと生き生きとした目だった、この縁談、まだ納得してはおらんのか?」 「そんなことは・・・・。」 ガナ「まさか、私以外に好きな者がおるのか!?そうなのかっ!?」 ガナシャス陛下は取り乱す。 「え、ウチにあなた様以外で好意を持つ方は・・・。」 ガナ「おるのだな!?あぁ、なんたることだ!」 「陛下、落ち着いてください!」 ガナ「これが落ち着いていられるか!誰だ!誰が好きなのだ!なぜ私ではない!」 「陛下!」 ガナ「なぜ私ではないのだ!お主が私以外のものになるなど、断じて許さん!!」 ガナシャス陛下がそう叫んだそのとき。 ピーッ!ガッシャン! 笛の音と共にガラスが割れ、なにかが入ってきた。 ガナ「な、なにごとだ!なんだこの鳥は!」 「アズライール!?」 入ってきた鳥は、アズライールだった。 使用人「新しいお酒を・・・。」 ガッシャン! 使用人が酒を持ってきたと思ったら、奴はそれを見事に落とした。 使用人「すみません!今拭くものを!」 ゴチャゴチャ、ガヤガヤ! 突然のできごとで、現場は大混乱となった。 “いったい、なにがどうなっているんだ!?” ウチも混乱していたそのとき。 ヒュッ たまたま窓を見ていたら、そこを一本の矢が通った。 「今の、矢?」 “なぜ下から、なぜアズライールがここに・・・・まさか!” ウチは急いで窓に駆け寄り、下を覗いた。 「!!!・・・バカ・・・本当にバカ野郎だな・・・・ッ!」 外を見て、ウチは涙を浮かべた。 ガナ「そうだ!メルサは無事か!」 ガナシャス陛下がウチを心配する中、ウチは奴に向き直った。 「ガナシャス陛下、やはりウチはあなた様と結婚できませぬ、ウチ以外にも素敵な女性はたくさんいますゆえ、どうか、今回は縁がなかったということで、お引き取りください!」 バッ そう言って、ウチは窓から飛び降りた。 アン「な、窓から!?」 ガナ「ここから落ちれば死んでしまう!」 誰もがそう思うだろう、だが、落ちたその先には奴がいる。 ヒュー・・・ガシ! シャプールが、落ちてきたウチをしっかりと抱きとめてくれた。 「ありがとう、シャプール。」 シャ「話はあとだ、捕まっていろ。」 ダッ! シャプールは愛馬にウチを乗せて、その場から走り去った。 クバ「さて、オレたちもトンズラこくとするか。」 キ「そうしよう。」 〜・〜・〜・〜 ガナシャス陛下の別荘から、だいぶ離れたところで、ひとまず馬を止めた。 シャ「ここまで来れば、とりあえず大丈夫だろう。」 「シャプール、どうして?」 シャ「お主を止めに来たのだ、今度こそは間違っておるまい?」 シャプールは笑ってみせた。 「フ、大正解だ。」 シャプールにつられて、ウチも笑った。 シャ「それとメルサ、すごく綺麗だ・・・・/////」 「あ、ありがとう・・・/////」 シャプールが赤面しながら褒めるものだから、ウチまで顔が赤くなってしまった。 クバ「おーおー、やってるねぇ、お2人さん。」 クバードがニヤニヤしながらこちらへ来た。 シャ「どうしてお主は大事なときにいつも・・・っ!!」 クバ「気にするな、今回はオレも手伝ってやったのだから。」 キ「まぁまぁ2人とも、メルサが無事に帰って来たのだから、それでいいではないか。」 キシュワードもやって来た。 キ「それにしても、ナルサス殿が考える策はなぜこうも当たるのか不思議ですな。」 「兄様が!?」 ナルサスまで関係しているとは驚きだ。 シャ「そうだ、オレはあのあと、ナルサスに頼みに行ったのだ。」 〜シャプール Sido〜 シャ「お主に協力してほしいことがある。」 ナル「?」 シャ「メルサから縁談のことを聞いて、オレはあ奴に勧めてしまった、今さら後悔しても時は戻らん、ならばせめて、その縁談を止めさせることはできると思い、お主の頭脳を借りたいのだ。」 オレはナルサスの目をまっすぐ見つめる。 ナル「その縁談を止めさせて、私になんの得がある?メルサになんの得がある?シャプール卿。」 シャ「好きなことを申せ、それに、メルサにはなぜそんなことを言うのだと言われた、ならば、縁談がぶち壊れるようにオレが仕向けてやればいい、これがあ奴への謝罪だ。」 ナル「お主にはなんの得がある?」 ナルサスがオレを試すように見る。 シャ「オレはべつにいい、メルサの自由が手に入りさえすれば、それでよいのだ。」 するとナルサスは。 ナル「・・・・わかりました、その策、私が考えましょう。 実は。こうなるのではないかと思い、すでに策は考えてあるのです。 ですがそれにはまず、シャプール殿に王子様になってもらわなければなりません。」 シャ「王子様?」 ナル「そうです、これにはほかの人員も必要なのですが・・・。」 人員が必要ならばと思い、オレは部屋の外にいる気配に声をかけた。 シャ「クバード、キシュワード、そこにおるのだろう。」 すると、やはり2人ほど出てきた。 クバ「さすが鋭いのぉ、お主は。」 キ「あまりに気になってしまって、すみません。」 クバードとは違い、キシュワードは申し訳なさそうに入ってきた。 ナル「シャプール卿は人望もお厚いようだ、ならば問題ありません、クバード殿には縁談当日、潜入してもらいます、使用人として。」 クバ「それにはどうするのだ?」 ナル「問題ありません、私が手配しておきますよ、そしてキシュワード殿には、場を見計らって、窓から鷹を使って、現場を混乱させてほしいのです。」 シャ「して、オレは?」 ナル「シャプール殿には、外で待機してもらいます、メルサのことですから、シャプール殿を見つければすぐわかり、飛び降りる可能性も。 その場合には、全身全霊でメルサのことを受け止めてもらいます。 こんなところでしょうか。」 シャ「ナルサス、感謝する。」 ナル「妹のためですよ。」 〜メルサ Sido〜 「そんなことが・・・。」 まさか、ウチが部屋を飛び出したあと。シャプールがそんなことをしていたとは知らなかった。 クバ「メルサが飛び降りたときは本当にビックリしたぞ、よく気づいたものだ、まさか、オレのこともバレていたのか?」 「さすがにいつもの傷まで隠されていては、気がつかなかった、最初はただ単に、お前に似ているなと思っていただけだ。」 クバ「これはしてやったりだな!」 クバードは豪快に笑った。 「急にアズライールが入って来たのは驚いたぞ。」 キ「こ奴も、うまいこと攪乱させてくれたからな、ナルサスの思うツボだ。」 これですべて無事に丸く収まるかと思いたいが、ひとつ問題が残っている。 「思わず抜け出してきてしまったはいいが、このままだと、両国の未来が・・・!」 クバ「それに関して問題ないと、あ奴は言っておったぞ。」 「そうなのか?まぁ、ナルサスがそう言うのならば、任せよう。」 シャ「皆お主のことを心配しておったのだ、早く帰るぞ、」 「わかった。」 ウチらは帰りの準備をしはじめた。 キ「帰るとするか。」 クバ「はぁ、疲れた。」 そこで、ウチはしなければならないことを思い出した。 「あ、皆!」 一同「「?」」 「来てくれて、ありがとう。」 ウチは、助けに来てくれた皆に対し、素直に頭を下げた。 シャ「どういたしまして。」 クバ「来た甲斐があったわ。」 キ「無事でなにより。」 皆は笑顔だった。 「さぁ、帰ろう!」 その後、ウチは王宮に帰ってから、しばらくは兵士たちに開放されなかった、挙句の果てには泣きだす者までいた、これでしばらく安泰が続けばいいが。 ともかく、ウチは無事に帰って来れたのだ、また明日からでもピアノが弾きたい、そう思った。 [*前へ][次へ#] |