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東京の兎と浪速の虎
第13R 「兎と虎 初デート」
〜愛癒兎 Sido 17〜

季節は4月、一歩と千堂の戦いから2ヶ月経った春、ジムの外では桜の花が満開に咲いていた。

木村「ハァハァ・・・今日も走ったぁ!」

「お疲れ、ひと休みしな。」

鷹村「おう!気が利くな!」

長いロードワークから戻ってきた鷹村たちに、ウチは冷えたスポーツドリンクを渡した。

木村「いつも悪いな。」

「これがウチの仕事だから。」

青木「愛癒兎が戻ってきて3ヶ月ぐれーか、早いなぁ。」

「なにそんなこと言ってんだ、ジジ臭いよ。」

まるで年寄りみたいなことを言う青木に、ウチは軽くツッコむ。

鷹村「おう愛癒兎、あれから千堂とはどーなんだよ、まだ続いてんのか?」

鷹村がニヤニヤしながら聞いてくる。

「続いてるって・・・ウチはべつに千堂と付き合ってるわけじゃねーし、変な言い方やめろよ。」

鷹村「照れんなよ。」

「照れてない!」

そのとき。

ピロン

タイミング悪く、ポケットからLINEの通知の音が聞こえてしまった。
“マナーモードにしたつもりだったのに!”
すると。

シュバッ

「あッ!」

鷹村に、目にも留まらぬ速さでポケットのスマホを奪われてしまった。

「返せ!ウチのスマホ!」

鷹村「LINE誰からだぁ?」

青木「お、千堂からじゃん!」

木村「なに!?」

一歩「千堂さん!?」

ウチのスマホを中心に、鷹村や一歩たちが集まる。

鷹村「なになに?“愛癒兎、来週の土曜は暇か?”だってよ。」

青木「それって、デートの誘いじゃねーか!」

「決め付けんな!それよりスマホ返せ!」

ウチはなんとか鷹村から取り返そうとする。

鷹村「よし!断っとくか!」

「やめろッ!」

鷹村が、千堂からの誘いを断ろうとするので、ウチは必死でやめさせようとする。

木村「鷹村さん!送っちまえ!」

「木村!なんで加担すんだよ!」

いつもは優しい木村、だがこういう悪ふざけには率先して加わる、特に千堂絡みのときは。

「か・え・せ!」

鷹村「ほれパス!」

木村「OK!」

鷹村から木村へと、スマホは移動する。

「木村!返して!」

木村「どーしよっかなぁ。」

普段は優しい分、悪ふざけのときには、鴨川メンバーの中でも一番腹黒なのだ。

「き・む・ら!」

木村「んじゃ、ひとつ提案。」

「な、なにさ。」

木村「返してほしかったら、ほっぺにチューしてよ、そしたら返してあげる。」

鷹村「なんだ!そのおいしい提案は!」

一歩「木村さん!やり過ぎでは・・・!」

鷹村たちがギャーギャーと騒ぎ立てる、そんな中ウチはするかしないか考えていた、すると。

ピロリン♪

LINE通話がかかってきてしまった。

木村「お、千堂からだ。」

「あー!もう!」

チュッ

ウチは背伸びして、木村の頬にキスをした。

木村「!!?/////」

木村が驚いて油断した隙に、ウチはスマホを取り返した。

「やっと取れた!」

鷹村「おい木村!取られてんじゃねーよ!」

木村「〜〜〜/////」

青木「ダメだ鷹村さん、こいつ意識飛んでる。」

木村は、まるで強烈なパンチを食らったかのように動かなくなった、その隙に、ウチはスマホの通知をONにした。

「も、もしもし?」

千堂『愛癒兎!久しぶりに声聞けたわ!』

「千堂久しぶり、どうした?」

ウチは、久しぶりに千堂の声が聞けて、内心気持ちが舞い上がっている。

千堂『実はな、来週の土曜そっちに行くねん、やから、ワイと出かけん?』

「!」

千堂からどこかに出かけないかと誘われたのは、これがはじめてだ。

「うん!行く!行こう!」

千堂『そか!わかった!また連絡するわ!練習中に休憩がてら抜け出してきてしもーたんや、はよ戻らんと柳岡はんに怒られてまうわ!』

「ハハ、早く戻んな。」

千堂『ほな。』

そして通話は終わった。
“千堂の声、耳元で聞けた・・・!”
誘われたこともうれしいが、なにより千堂の声を、電波を通してでも耳元で聞けたことがうれしかった。

鷹村「なーに、ニヤニヤしてんだよ。」

「してないよ。」

青木「口元ニヤけてんぞ。」

鷹村や青木から指摘されても気にしなかった。

一歩「千堂さんとお出かけですか?」

「来週の土曜にね、どこ行くのかは知らないけど。」

青木「2人でだろ?完全にデートじゃねーか。」

鷹村「千堂みてーな小物より、オレ様とデートした方が得だぜ?」

鷹村がそう言って、ウチの肩に手を回す。

「お前と比べんなよ、それに千堂は小物じゃねーし。」

鷹村「ま、小物とは言えねーな、あのサイズはただごとじゃなかった。」

「サイズ?」

鷹村「千堂のチ○○。」

「なに言い出すんだ!/////」

ウチは鷹村にボディーブローをかました。

鷹村「ぐはっ!」

一歩「今の、綺麗に入った・・・!」

「まったく・・・・/////」

ウチはため息をついた。

「それよりも、木村はまだ起きないの?」

青木「強烈なのもらっちまったからな、しばらく起きねーよ。」

「ったく、自分で提案してきたんじゃんか。」

少し木村に呆れながらも、ウチは残りの仕事に手をつけた。

〜・〜・〜・〜

その日の夜、ウチは千堂からの連絡を待っていた。

「・・・・まだかな。」

さっきから、ずっとスマホと睨めっこしている。
“やっぱ、ウチから連絡した方がいいのかな。”
悩んでいたそのとき。

ピロン

「きた!」

千堂からLINEがきたので、ウチは飛び込むようにスマホを掴んだ。

千堂《来週のことなんやけど、東京ドームシティで遊ばん?》

東京ドームシティと指定されていた。
“こ、これって・・・・遊園地デート!?”
驚きつつも、顔はニヤけっぱなしだ。

《いいよ、来週の土曜、後楽園ホールの前で待ってる。》

千堂《わかった、ほな来週は楽しみにしとるで。》

そして少しおいてから。

千堂《おやすみ。》

とLINEが返ってきた。

「・・・・遊園地デートかぁ。」

ウチは顔がニヤけるのを止められなかった、ニヤけるだけでは終わらず、来週どんな服装で行こうかと、今から洋服タンスを開いて、ニヤニヤしながら選びはじめた。
“千堂と、デート・・・・/////”
ウチにとって、それはたまらなくうれしいイベントだった。

「おやすみって言われたけど、これじゃ寝れないよ・・・。」

ウチはなんとか舞い上がっている気持ちを抑え、ベッドにダイブして目を閉じた。

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あきゅろす。
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