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銀の光(長編2)
分からない

『銀時…』

そう言って彼は、優しく寝ている俺の髪を撫でた。
泣きそうな声がまだ、はっきりとしない頭に響いた。
どうして、彼がそんな優しい手つきで髪をなでるのか。
どうして、そんなに泣きそうな声なのかが俺には分からなかった。

俺は、多分、高杉が嫌いだ。
外には、滅多に出せてもらえないし、機嫌を損ねれば暴力をふる。
挙句の果てに、監禁までする。
逆らうことは許されない。見えない鎖で繋がれた生活を強いらされる。
誰が、そんな奴を好きになれるだろうか。
誰しも、そんな事をする奴なんて嫌いになるに決まっている。
憎むに決まってる。

なのに、何故?
俺は高杉を嫌いになりきれない。
憎む事ができない。

お願い。そんな泣きそうな声を出さないで。
そんなに優しく撫でないで。
急に優しくしないでよ。

いつも、高杉は、とても冷徹な態度を取っているのに…
なんで、やめてよ。

前に、少しだけ、高杉がどんな顔をしているのか気になって、瞼を少しだけ開けて顔を見た事がある。
すぐ、後悔した。
顔なんて見なければよかった。

高杉は、泣いていた。
ただ、静かに涙を流していた。

なんで泣いてるの?何が哀しいの?

高杉がそんなんだから、俺はお前を嫌いになりきれないんだ。
だから、余計苦しいんだよ。

《泣かないで》

そう伝えたくて、起きようとするけど、体が言う事をきかなくて。
手を伸ばそうとしても、できなくて。
ただ、ただ。
高杉の哀しそうで儚い声と優しく撫でる手を受け入れる事しかできなかった。

分からない、分からないよ。
お前が何故そんなに哀しいのか。

ふわふわしていた意識が急に闇へと引っ張られる。
あぁ、眠い。

『 』

完全に闇へと落ちる前に、高杉が何かを言った気がした。




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あきゅろす。
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