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銀の夢 
チビ桂と真選組!!後編

「はぁ、ただいま帰りやしぃたァ。」

「おぅ!総悟!帰ったか!」

「…なんですかィ?そのガキは。」

桂を散々探しまくったが最終的に見つからず、疲れた様子で帰ってきた沖田だが、局長の部屋の襖を開けると
何故か、局長の近藤と一緒に肩を並べてお茶を飲む黒髪ロングの男の子を見つけた。


「ん?この子の事か?此奴は小太郎って言ってなぁ。トシが倒れているとこを発見して保護したんだよ。」


「ふーん、こりゃァ驚いたや。まさか、土方さんにそういう趣味があったなんて。誘拐はいけませんぜ。」


「えぇ!?誘拐!?そうなの?トシぃ!」

書類を片付けていた土方がため息を吐く。

「近藤さん、総悟の嘘にいちいち騙されないでくれや。」

「あ、嘘なの?びっくりしたな、もう!」

ガハハハッと豪快に笑うゴリ…近藤。

「え、ちょ!今絶対ゴリラって言いかけたよね!?ね!?」

「落ち着け、ゴリ…近藤。」

ズズッとお茶を飲みながら子供桂が近藤に声をかける。


「今、絶対ゴリラって言おうとしてたよね!!もう、やだぁ。トシぃ。」

涙目のゴリラを、
よしよしとフォロ方が宥めた。

「こんぐらいの事で、メソメソしおって…。それでも、武士か貴様は。」

そんな、近藤を見やり、子供桂がため息を吐いた。
すると、ヒョイっと沖田に持ち上げられ、視界が上がる。

「えらァ、古臭い喋り方をするガキですねィ。」

「何をするっ!離せっ!」

興味津々で子供桂を観察する沖田。
ジタバタする子供桂を数秒見つめて、此奴、気に入りやしぃたァ。
と唇の端をあげた。

そして、

「ちょっと、このガキンチョ借りやす。」

「ガキンチョじゃない!かつ…小太郎だ!」

そういうと、襖を開け、そのままぎゃーぎゃー騒ぐ子供桂を抱えスタスタと行ってしまった。




「珍しいな。総悟が子供を相手にするなんて。」

「また、ろくでもねぇ事考えて無けりゃいいけどな。」

驚いたように言う近藤に、顔を顰めてため息を吐く土方であった。






***



「男の裸の付き合いでもしやしょう。」

と言われて連れてこられたのは勿論、風呂場。
真選組の風呂なので結構なデカさ。
脱衣所で先に脱ぎ終わった沖田は
「先に入ってぜィ。」と風呂へと消えて行った。
今のうちに逃げようかと子供桂は考えたが、辞めた。逃げたところで、今の怪我をしている自分じゃすぐ捕まるだろう。なにより、逃げたことで怪しまれるだけだろう。
成り行きで敵の懐へと来てしまったが…。体がいつ元に戻るか分からない以上、危険すぎる。
どうしたものか…と頭を悩ませながら着物を脱いでいく。
すると、コロッと懐から常に常備しているんマイ棒が落ちた。
拾おうと身をかがめると、ある文が目に入った。

【子供時代に戻れるんマイ棒!】

このんマイ棒を食べて楽しかった子供時代『7歳〜10歳』に戻ってみませんか?
んマイ棒一本で
戻るまでの期間は一週間!
注意一度に多く摂取すると定時した年齢より幼くなったり、子供になる期間が長くなったりします。
気をつけてね!


「これは…。」

この説明を見て桂はそうか。と納得した。
あの時食べたんマイ棒はこれだったのだ。
だから、味も違ったし、子供にもなった。
まぁ、このおかげである意味では救われたのかもしれない。

「一本で一週間か…。」

それまでには、ここから抜け出そうと決めた子供桂は風呂へと足を動かした。

風呂のドアをガラッと開ければ、沖田が気持ちよさそうに風呂に浸かっていた。
敵同士のため、殺気立った沖田しか見てこなかったので気づかなかったが、よく見れば子供らしい可愛い顔立ちをしている。
目を細めて笑っている子供桂を見た沖田はプクと頬を膨らませて

「何、見て笑ってるんでィ。」

となんだか不満そうに言った。

「いや、ちょっと思う所があってな。」

と笑えば、あんたは俺より年下なのに、年上の奴と話している気分になりまさァ。と沖田が話した。

風呂に入ろうと足を入れれば鈍い痛みが走る。顔を歪ませると大丈夫ですかィ?と沖田に心配された。

「大丈夫だ。」

「本当ですかィ?可哀想に痛そうでさァ」

と言う沖田。やった本人が言うか。と言いたかったが我慢した子供桂。
偉いぞ!俺!と褒め称える。しょうがないから右足だけ出して湯船に浸かった子供桂であった。









***


「ふぅー、スッキリしやしたねィ。」

「嗚呼、なかなか気持ち良い湯だったぞ!」

満足そうに笑う子供桂を見て、沖田も嬉しそうに笑った。

「 そうだ。お腹空きやしたでしょう?食堂行きやしょう。」

その言葉に子供桂はコクンと頷く。
そういえば、何も食していなかった。
沖田は子供桂の手を掴むとこっちですぜィ。と引っ張ったのだった。

食堂につくと、近藤と土方が居た。

「おぅ!なんだ総悟!風呂に入ってきたのか!」

と笑いながらゴリラが話しかけてきた。


「…トシぃ。もう、言い直してもくれないよ。ゴリラって言いきちゃったよ!!」

またもや、涙目の近藤をなぐさめるファロ方。
お疲れ様です。

「小太郎は、何が食べたいんでィ?」

「ふむ、食べれるなら何でもいいが、強いて言うなら蕎麦だな。」

と答える。分かりやした。と沖田はおばちゃーん!と声をかけた。

「ラーメン2つーー!」

「え、ちょ?話聞いてた?え、ラーメン!?」

「なんでもいいって言いやしたよねィ。ちなみに、ラーメンを選んだのは今、俺が食べたいからでさァ。」


じゃぁ、何で聞いたのだ。と子供桂は思ったが、まあいいやと湯気がたつ、ラーメンを受け取った。

適当に席に座ると、丁度、近藤と土方も同じテーブルに座った。

「総悟と小太郎君はラーメンか!」

と先程のダメージから立ちあがった近藤が箸を持ちながら言った。

「近藤さんは、また蒟蒻定食ですかィ。」

と沖田がラーメンをズズッと啜りながら返した。
そこで、子供桂は疑問に思った事を口にする。

「ところで近藤。何故、蒟蒻の中心に切れ目が入っているのだ?」

「え!?あ、えと。アレレェ本当だ!何で切れ目なんか入ってるんだろう???」

「目が泳いでいるぞ、近藤さん。
それと坊主。近藤さんを呼び捨てにするんじゃねぇ。」

「ふん。どう呼ぼうが俺の勝手であろう。」

「生意気な奴だな、おい。上の人を敬うのは当たり前の事だろうが。そんな事も出来ないなんて重症だな。病院行ってこい。」

そう言いながらホカホカの白米に、にゅるにゅるとマヨネーズをかける土方。

「重症なのは貴様だろう。何だその白いのは!」

うげっ、と口を抑える子供桂。
その会話に沖田が加わる。

「土方スペシャルとか何とか言ってやすが、狗の餌ですぜィ。ありゃぁ。」

うわっ、と顔を顰める子供桂。
ニヤニヤと笑う沖田を無視して、
なんだよ、ちくしょー。とマヨ丼をかきこむ土方であった。




***



それから6日間。子供桂はなんだかんだ言って楽しく過ごしていた。


沖田と土方いびりをしたり、昼寝をしたり。
ジミーと呼ばれる山崎とミントンやカバディをして遊んだり、寝ている土方の顔に落書きをして、気づいた土方に追い掛け回されたり。


天敵である真選組だが、なかなか気の良い奴らだった。特に、沖田とは結構仲良くなりお互いに、こたろ、総ちゃん。とまで言うようにまでなった。
フッと子供桂は笑う。
シュルシュルと右足の包帯をとれば怪我は殆ど治っていた。
動かせば、微かに痛みはあるが、走る分にはそんなに問題はない。
潮時か…と子供桂は呟いた。

「どうたんでィ。寝るぜィ、こたろ。」

隅っこの方にいた子供桂に沖田が声を掛ける。ちなみに小太郎と沖田は一緒の布団で寝ている。
ポスポスと布団を叩く沖田の元に行き、布団に潜り込んだ。

「怪我見てたんですかィ?」


「嗚呼、殆ど治っていた。」

そう言うと沖田はそりゃ、良かった。と笑った。

そして、隣にいる子供桂をギュウと抱きしめる。
その行動にびっくりする子供桂。
けれども、その抱きしめらる暖かさがとても気持ちよく感じた。
コテンッ。頭を沖田の胸に預ければ優しく頭を撫でられる。

「俺ァ、この髪が好きだな。」

サラサラしていて気持ちいいや。と沖田が目を細めた。

「ふん。急に何を言いだすかと思えば……。だが、俺も総ちゃんの髪は好きだぞ!髪色もいいし、綺麗だ。」

少し、はにかみながら言うとポカンと口を開けている沖田。


「ははっ、そりゃ嬉しいかぎりでィ。」

照れたように笑う姿はとても可愛く見えた。そして、そろそろ寝るか。とお互いおやすみ。と言うと沖田はアイマスクをつけ、子供桂は瞼を閉じたのだった。



スースーと規則正しく寝息を立てる沖田。

「寝たか……。」

そう呟きながら、瞼を開けた子供桂。スルリと沖田の腕から抜け出す。
今日で、6日目。明日にはきっと元の姿に戻るだろう。
だから、自分はここから逃げなければいけない。
サラッと寝ている沖田の髪を撫でた。


「さよなら。」

そう言い残し、屯所から抜け出すべく、部屋を出ようと襖を開けた。


「行っちまうですかィ?」

突然、聞こえた声にドキリとする。
だが、すぐ平静を保ち嘘をならべた。

「起こしてしまったか?すまぬ。少し厠へ行こうと…」

「嘘なんか、いらないでさァ。行っちまうんでしょう?俺たちは敵同士だから。ねぇ?攘夷志士の桂?」

固まる桂。

「知っていたのか…?」

やっと出た言葉。だが、声は微かに震えていた。

「途中からねィ。発言や行動を見てまさかとは思ったが、まぁ、一番の決定的に桂だと気づいたのは、これのおかげですかねィ。」

見せられたのは、あのんマイ棒。
土方さんから逃げていた時、あんたが落とした物でさァ。
と沖田は言った。

「じゃぁ、気付いていたならば何故!」

「首をとらなかったって?
まぁ、もっと早く気付いていれば
今、あんたは首だけになってやしたけどねィ。遅かったんでさァ。もう、首をとろうにも情がうつってやしたから。」

そう言いながら沖田は付けていたアイマスクを取り、桂を見つめた。
その瞳には微かに寂しさが一瞬、見てとれた。


「行くなら早く行ってくだせェ、今なら見逃してやれる。何故なら、今は《こたろ》だから。だが、次会った時は捕まえてやるさァ。その時はきっと《桂小太郎》だから。」


「あぁ、感謝する。《総ちゃん》
次会った時は敵だな。《沖田総悟》だから。」

その桂のは答えに満足そうに微笑んだ沖田はアイマスクを付け直した。

そっと、沖田に近寄った桂はチュッとおデコにキスを落とした。

「お礼だ。」

そして、静かに部屋を出て行ったのだった。


残ったのは

「こんなの、ずりぃや。」

と呟き前髪をかきあげる総ちゃんだった。






***



屯所の出口まで来た桂は、流石に見張りがいるかと身構えたが、そこには誰もいなかった。
警備が薄すぎるのではないか。と心配になったが、こちらとしては有難い。
見張りが居ない内に!と屯所から抜け出す事ができた。
このまま、アジトへと帰ればそれでいい。

最後、振り返り


「アディオス、また会おう。」

真選組屯所にそう告げ、暗闇へと身を消した。


溢れる感情に蓋をして……












「いいんですか、副長。にがしちゃって。」


「いいんだよ、今回だけだ。」



タバコを吸いながら現れたのは土方。
その後ろから顔を出したのは山崎だった。


「総悟があんな顔をしたのは、ミツバが亡くなって以来だからな。」

そう答えた土方にそうですかい。と笑って返した山崎だった。












「あ、おい。タバコきれた。山崎買ってこい。」


「えぇ!ここは俺が笑って返した所で普通おわるべきでしょう!!?」

「いいから。ニコチンきれたらヤベェんだぞ。コンビニに売ってるだろうが。」

ええ、いやですよ。と渋る山崎にあァ?と睨みを効かせる。

「是非とも、買いに行かせていただきます!」

そう叫び、半泣きでコンビニへと走る山崎であった。
アーメン。








後日



「桂ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。待ちやがれェェェェッ!!」


「ははははッ!!待てと言って待つわけがなかろうが!捕まえられるもんなら、捕まえてみろ!」

「死ねェェェェェェェェェッ!!!土方ァァァァァァァァァッ!!」


「総悟ォォッ!?お前、なにやってんのぉ!?」

「あんぱん、んマイ棒、あんぱん、んマイ棒、あんぱん、んマイ棒……。」


「あ!お妙さんじゃぁありませんか!!こんな所で会うなんて運命…グホォッ!!」

「あら、何かしら動物園からゴリラが脱走してるわ。」







「おいおい、なんだよ。ぎゃーぎゃー真昼間からよぉ、こっちは二日酔いなんだよコノヤロー。」

「本当ネ!騒がしい奴等アル。近所迷惑もいいとこネ!金要求するヨロシ。」

「でも、なんか沖田さんと桂さん。妙に楽しそうじゃないですか?」

「そうかぁ?」


桂を追いながらも爆撃される土方。
笑いながら逃げ回る桂。
こちらも、笑いながらバズーカを土方に向け打ちまくる沖田。
なぜか、あんぱんとんマイ棒を投げまくる山崎。
お妙に飛びつこうとして返り討ちにされる近藤。
ケータイ片手にゴリラを殴り、動物園に電話をかけようとするお妙。


それを、万事屋の玄関先で見下ろす万事屋三人であった。





















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