秋葉原にようこそ
暑い日だった。
銀朱は最近バイトだといってなかなか遊びに行くことが出来ない。
いつもは暇な時は煤竹を呼び付けるのだが、今日は何回電話してもでない。ケータイの電源が切れているらしい。
「アイツ……明日体育館裏に呼び出し決定だね」
せっかくの日曜日なので銀朱の代わりに煤竹を引っ張ってきてウロウロしようと思ってでてきたのに。
そう、今ここは外なのだ。
しかも、むさ苦しい男達が大半を占めている。
所謂「オタク」という人種。
道脇には本屋(というより漫画専門店といった方がしっくりくるかもしれない)やフィギュア専門店、あとは何かのキャラのコスチュームをきた女性が道端でチラシを配っている。
何処で道を間違えたか、前から欲しいと思っていた時計を見に行こうと思っていたのに……
「……だからひとごみは嫌いなんだ」
適当に周りの若いやつらについていけば、ショッピングモールなどがあるような退屈が凌げる場所にでるだろう。
そしたら前から気になっていたあの時計も見つかるかもしれない。
そう考えていた自分を呪う。
この世代、若い流行の格好の人たちでも好き好んでここらにくるやつがいるとは知らなかった。
たしかに所々に若いやつらも見掛ける。
今日は多分時計は見つからないだろう。
…まあかなり値がはるので、例え見つけたとしても今すぐには買えないけれど。
「あっつい………とりあえずどこか入るか…」
人酔いもすこしだけしてしまったのか、気分がすこし優れない。
どこでもいいか、と目の前にあった派手な喫茶店らしいところに入った。
「「「いらっしゃいませ、ご主人様?」」」
店内にキャピキャピした高い声が響く。
ウエイトレスたちはみんな黒いメイド服を着ていて……
「ご主人様、お一人ですかぁ?」
「……ぇ、ああ」
甘い作られたような声の女性が席を案内してきた。
「…ちゃんと店をみて決めればよかったね…」
確かに店内は涼しい。
しかし、周りにはまたもむさ苦しい男たちばかり。ポツポツと観光客らしき人もいたが、あきらかに前者の方が多い。
それに、メイド服をきた女の子たちにも興味がこれといって湧かない。
銀朱がこの格好をしていたならば絶対に欲情してしまうねぇ、とすこしふしだらなことを考えてしまった。
やれやれなにかジュースでも頼んでさっさとここからでようとメニューに目を通していたら、黒いメイド服の定員が俺の所で止まった。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょ………」
聞き慣れた声の気がした。
そう、銀朱のような比較的中性的な………
と、そのウエイトレスの声が止まった。
「……ぼ、梵天……!!」
まさか。
顔をあげた。
「…銀朱………」
そこに立っていたのは、黒いメイド服に身を包んだ、銀朱だった。
「…なんであんなとこにいたんだい」
あの後無理矢理銀朱を引っ張って帰ってきた。
ここは、俺の家。
「バイトですよ!それより貴方こそ、どうしてあの店に……」
「たまたまだよ。暇だったからウロウロしてたら疲れたからあの店にはいっただけ。そしたら君が……」
スカート丈の短い提灯袖の服をきて、頭にはお決まりのふりふり白カチューシャして笑顔をふりまいていたんだから。
「……まさか貴方がくるとは思わなかったんです」
「なんでわざわざあんな店で働く必要があるんだい!変な男が山程いたじゃないか」
「あそこは時給がいいんですよ…………もしかして、心配してくれてるんですか?それともヤキモチ?」
「…うるさいね!…とりあえず今夜はじっくりとお仕置してやるから」
「え、明日学校ですよ……!?」
学校なんて一日くらいサボったってなんの問題もないだろう。
まあ優等生の銀朱にしたら大きいことかもしれないけどねぇ。
「へぇ?学校のやつらに君がメイド喫茶で働いていることが知れてもいいんだ?」
「……分かりました泊まります」
「分かればいいんだよ」
「…もう……」
ため息をつく銀朱。
だいたい俺を放っておいてバイトに熱を注ぐ君が悪いよ。
「そこまで金を貯めてなにするつもりだったんだい?」
「……たが…………買ってあげようと……」
「え?」
ボソボソという声が聞こえにくく、もういちど聞き直す。
「…あなたが以前話していた時計を見つけたので、買ってあげようと思ったんですっ…!!」
顔を赤くする銀朱。
え、つまり、俺が欲しがってたあの時計を買うため?
俺の為なわけ?
「……ふーん」
あー、もう。
そういうところが可愛すぎるんだよ。
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メイド銀朱テラかわユスなんだろーなー
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