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ダイヤモンドクレバス







隣に、いない。
そう改めて感じたのはいつもSMSの部屋に帰ってきてからだった。相部屋のはずだったこの部屋には俺以外の誰も、はたして存在してはいないのだ。殉職。有り得ないことではなかった。ただ言い訳をしたとすれば、アイツに限って…と頭が勝手に思っていたのだ。だから俺はアイツがいつ居なくなるかなんて考えたこともなかったし、考えたくもなかった。
SMSでも優秀だったアイツ。攻撃を外すことも、前の一件以来なかったし、なによりあの日機体に乗り込むまで、確かに俺の横に存在したのだ、ミハエル・ブランは。いつものように俺をからかって、憎たらしい笑顔を俺に見せていたはずだった。
それなのに。


なにもなくなってしまった部屋。俺の荷物のみが存在していて、二人用のこの部屋は俺には広すぎた。早乙女の家にいたころはこの部屋なんて比べものにならない一人部屋だった筈なのに。時の流れは俺を弱くさせたのか。それとも、アイツの存在がそうさせたのか。



「…ミシェル…………」
二段ベッドの上。登ってそこに体を沈めても、そこから懐かしい香りを感じることはできなかった。以前の温もりもない。いつの間にか時が経ちすぎたのか。そう考えても納得のいく理由にはならなかった。時間なんて、随分と前から止まったまま動くことをしらないのだ。





目を閉じても、ミシェルの顔は揺らいで、この間までくっきりと脳裏に刻み込まれていたものが消えつつあるのだと気付く。それがどうにも嫌で、どこかに彼の面影を探す。遺影なんてものはない。見ない。ないのだとただ言い聞かせ、探しつづけた。例えば、ボロボロになったアイツの歯ブラシでもいい。そこにミハエルを感じられたらなんでもいい。

自分はガキだった。子供じゃないやら女扱いするなやら散々言ってきたが、自分は人以上に幼稚で女々しいのだ。泣き崩れるクラン大尉を見しまい、泣けなかった。そこには確かに愛情が俺の目に見えていたから。ミハエルもクラン大尉が好きだったのかが、分からなかった。

俺は男だ。ミシェルは女たらしで有名だし、不安でなかった訳ではなかった。いくら愛してると囁かれても、アイツのことだ、口先だけなんて得意に決まってるだれう。
いつも心の内にあったモヤモヤ。そしてそれはもう二度と解決することはなくなってしまった。






「馬鹿ミシェル…………」

『誰が馬鹿だって?』





いない。いないのにいるわけがないのに。自分耳の側で優しくミハエルが囁いたように聞こえたのは、なんの薬の副作用なんだろうか。














にょーん。突発的短文。
しかしマクロスは機体名とか覚えてないので踏み込めない部分がある……!
2010/1/22


あきゅろす。
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