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酸欠


「アス、」

口から言葉がもれた、その瞬間俺は目覚めた。すこし息が苦しくて、深呼吸した。そして見上げれば、天井。いつも通りの朝だ。いまさっきの夢を除けば。


「…………」
自分の唇を指でなぞる。確かに感触があった気がした。暖かい、血の通ったものが触れた感触が。しかし、唇は冷たかった。やはり、夢だったんだろう。


「なに、俺…欲求不満………?」

布団から体を起こした。足はまだ布団に突っ込んだままだけれど。寒い冬だ、けれど体はほてっている。違う意味で言えば、俺の半身も。

夢にしてはリアルだ。目覚めなければ良かったのに、と呟いてから笑ってしまった。ここ半年で一番幸せな夢だったかも知れない。


いつもどおり、笑いあって将棋して、たまに修行して。ご飯を食べて一緒に風呂に入って、おやすみのキスをした。
そのどれもが、久しく行っていなかったことだったから。夢の中の俺はそれはそれは嬉しそうに笑っていて、嫉妬してしまう。何時ぶりだろうか、こんなことを考えるのは。




「アスマ、」

捻り出した声は、朝の眩しい光りに融けて消えてしまった。そうだ、いくら呼んでも来てくれるはずはないのに、自分も随分と諦めが悪い。



「忘れたころに夢に出る、なんて嘘だぜ」


だって俺はこんなにもアンタのこと。






締め切っていた部屋。空気が悪い。タイマーをしていた暖房はとっくの昔に切れているのに。

ねぇ、酸素を頂戴。いつもみたいに口移しで充分だから。俺が死んでしまう前に。



(そう言ったら、来てくれるのか?)


俺はもうずっと前に一度死んでんだよ。あんたが居なくなったすぐ後に、薄い空気に堪えられなくて。



ねぇ、もう一度会いに来て。夢で待ってる。この酸素の薄い部屋の中で閉じこもって待ってるから。



















アスマ死後。アスマの夢を見て辛くなるシカマル。

2009 12 29


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